OL財布事情の近年史

2012年5月18日 (金)

OL財布事情の近年史/第78回 「全OL節約時代」の始まりか?(後編)

前回の続き。

「節約」をキーワードにした番組や貧乏ネタを売りにする芸人が出始めた、2000年初頭の女性誌を見ていた。その頃の貧乏アイドルや芸人が今何をしているのかと調べてみたら、けっこうみんなきちんと地に足をつけて仕事をしておられる。何だかキュンとしてしまった。

 いやしかし、そんなキュンキュンしていられない現実も見逃すまい。前出「極貧OL  年収250万円以下OLたちのお部屋拝見!」には「人が来るとき以外トイレの水を流さない」「髪は石けんとお酢で洗う」「小学生の頃から着ている服も」など、極貧ぶりが面白おかしく書かれているが、その当人達は実はかなり悲惨。正社員時代に一人暮らしを始めたがその後派遣社員になって給料が激減した27歳(年収200万円)、実家暮らしで給料を丸ごと小遣いにしていたがリストラ、資格を取って上京した35歳(年収204万円)、両親を海外旅行に招待するためキャッシングしたら経営悪化でボーナスを打ち切られて借金が返せない27歳(年収170万円)など、笑えない状態にあるOLが並ぶ。
 ほかにも、03年に『年収300万円時代を生き抜く経済学』で一躍人気者になった森永卓郎とビンボーOLの緊急座談会があるが、「食べてくだけで精いっぱい」「週末はチラシ配りのバイト」「キャバクラのバイトしたらお客にストーカーされた」などの話題に、終始「......」と絶句する森永氏。著書のノウハウでも対応不可のOLの実態に唖然としていた模様。「タチの悪い男と悪徳金融にだけは気をつけてください(笑)」と笑って済まそうとするのがなんかムカつくが。
 とにもかくにも、OL消費は危機に弱い。なんと教訓の多い時代のことよ。(神谷巻尾)

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2012年5月11日 (金)

OL財布事情の近年史/第77回 「全OL節約時代」の始まりか?(前編)

 こうして中身はともかく、テクニックとしての「節約主婦」への抵抗はぐっと減ったかに見える、ゼロ年代OLである。そうなると、「節約」「貧乏」はエンターテインメントになり始める。バラエティ番組「いきなり!黄金伝説」が2000年にスタート、「無人島で0円生活」「節約バトル」などの貧乏ネタが人気となった。“1ヶ月1万円で生活するアイドル”中嶋ミチヨが「㊙超節約メニューを大公開」(『女性自身』2000年6月13日号)など、女性誌でも注目されていた。1ヶ月1万円の節約バトルは現在でもたびたび放送されているが、競争の激しいゴールデンタイムで10年以上飽きられない企画とは、まったく節約の力はものすごいものである。

 雑誌の扱いも「ポジ貧のイカす知恵袋」(『女性自身』2001年11月20日号)、「極貧OL 年収250万円以下OLたちのお部屋拝見!」(『SPA!』2003年4月15日号)など、貧乏OLはもはやネタになっている。
 『an・an』2000年12月1日号「生活節約レシピ」では、「笑いと涙の超ケチケチ生活・完全ルポ」として、芸人やミュージシャンの下積み生活を紹介している。本業の収入ゼロ、アルバイト6万円、食費は弁当の余りなどでほぼゼロ、移動はすべて自転車で交通費ゼロ、風呂はコインシャワーだが「お金がない時はプラスチックの衣装ケースをバスタブ代わりにして入浴」というのはWAHAHA本舗の星川桂さん。今どうしているのか思わず検索してみたら、この当時と同じコンビで活動中、よかったねー、と思ったらなんと最近『貧乏セレブ入門』という本を出していた! 12年貧乏をあたためていれば、芸も出版にもなるのかと感慨深い。そうなると他の人たちの現在も気になります。「収入は喫茶店のアルバイトとパチンコ?」「唯一の照明が壊れて、テレビの明かりのみ」の劇団員藤田美歌子さんは、現在も劇団所属の女優のようだ。芝居のほかに声優としてもプリキュアなど大きな作品に出演している。原宿の裏通りに住みながら「部屋の中のものはほとんどが拾ったもの」「パンの耳をタダでもらう」「暖房器具は湯たんぽのみ」というミュージシャンの中川奈緒美さんは、この後本格的なゴスペルの道に進み、教会に所属して歌っているようだ。みんなきちんと地に足をつけて仕事をしておられる。なんだかキュンとしてしまったな。若いときの貧乏は資産になる、という教訓のようである。(つづく)(神谷巻尾)

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2012年4月27日 (金)

OL財布事情の近年史/第76回 OLが発する言葉として正しい?「家具は拾ってます」(後編)

 前回のつづき。ミレニアム女性誌の節約記事を見ていた。

 OL界にも節約のカリスマが登場している。『ゼロからの節約生活』の著者丸山晴美である。パチンコ好きの26歳OLが一人暮らしをしながら5年で500万円貯めマンションも購入というシンデレラストーリーに、同じOLが食いついたようだ。『SAY』2000年12月号では「節約界のカリスマ女性が明かす、5年で貯金500万円+3LDKマンションGETの秘密」と、巻頭6ページを割いて特集している。野菜を自家栽培したいから1階に住み食費が月4000円、化粧水は手作り、エアコンはつけない、家具は拾い物、服代月2500円などの工夫で月収25万円から貯蓄14万円。またオリジナルの家計簿「マネーノート」を実践し、これが受けたようでその後女性誌にもひんぱんに登場していた。
 丸山氏の節約テクは、まさに「すてきな奥さん」風。だけど自分の給料から貯金してマンションまで買うというゴールを見せられ、いきなり主婦っぽい地道なやりくりが興味の対象になってきたのではないか。

 もちろん、女性誌すべてにそんな主婦傾向があったわけではない。「給料はいくら?どんなふうに使ってるの?」(『エフ』2002年2月号)とまわりを気にしていたり、「それでも頑張る?だから手を抜く?給料が上がらない時代の働き方」(『日経ウーマン』2002年7月号)と働く意義を追求したり、「自力でバーキンを買える金持ち姉さんになりたい!」(『コスモポリタン』2001年10月号)とあくまで上昇志向を崩さなかったりと、雑誌の傾向、言い換えれば生き方の違いによって、マネーライフもドラスティックに変わってきているといえよう。
 ただ、ある程度働いてキャリアを積んだ年代がこれからどうしよう、と悩んでいたのに比べ、社会に出たばかりの若い層が、わりとすんなりと、いわゆる主婦的志向に走っていたのではと思われる。無論主婦といっても、自分たちの母親のように旦那さんの稼ぎだけで優雅な専業主婦になれる保障は全くないご時世である。かといって働く大人の女性は知らないし、ママがやっていた「家のこと」のほうがなじみがある。年収200万円でも派遣でも、節約しておうち中心の暮らしを充実させることを選ぶ、というのは、ごく自然な流れだったのではなかろうか。その先に待っているかもしれない貧困など、まるで想像できなかっただろうし。(神谷巻尾)

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2012年4月20日 (金)

OL財布事情の近年史/第75回 OLが発する言葉として正しい?「家具は拾ってます」(前編)

  ポスト団塊ジュニア、ロスジェネ、ゆとり世代、ナナロク世代などの呼称は、「OL」とはなんと遠い響きであろうか。あらかじめ満たされ、自分らしさを尊重され、男女平等に育てられたけれど社会に出たら環境が激変。オフィスのレディーとして期限付きの豊かな生活を享受するという習慣のかわりに、自力で生きていくことがデフォルトとなってしまった。OLにもキャリアウーマンにも魅力を感じられない彼女たちが選んだのが、趣味と主婦、という仮説のもと、今回は主婦について言及しよう。

 例えばナナロク、1976年生まれの女性がどんな家庭環境で生まれたかをみるとわかりやすいが、「専業主婦・家事手伝い」の割合が36.9%と戦後もっとも高かったのが1975年である(2009年は28.2%)。いわゆるM字カーブを描く年齢階級別の労働力でも、75年は25歳から29歳の労働力が42.6%と極端に落ち込んでいる(2010年は77.1%。M字の底は35歳から39歳で66.2%)。つまり「専業主婦、または子どもが生まれたら仕事を辞め家にいた」お母さんがどの世代より多かった。家にいるママ、専業主婦が自分の将来像に直結するのは当然であろう。やがて待ち受けていたのが就職氷河期であり、OLが特権階級でも憧れでもなくなっていても、実はそんなに悲観的ではなかったのではないか。だってママになり、主婦になるんだもーん。と、思っていたかはしらないが、お財布感覚は主婦のそれにシフトしていた。顕著に現れていたのが、節約である。

 節約といえば、『すてきな奥さん』(創刊1990年)『おはよう奥さん』(同95年)など、ニューカマーの主婦雑誌上で大変な盛り上がりを見せていた。読者が登場して節約テクを誌面で紹介、そこからカリスマ主婦が生まれ、それに若いママ達が追随し、部数もどんどん伸ばしていた。ただし、それはあくまで主婦のあいだだけの現象で、結婚前のOLは視界にも入っていなかったかと思われる、90年代までは。その構図が変わったのが、2000年頃。「貯める」「殖やす」がコンセプトとして打ち出されていた女性誌のマネー特集に、急速に節約がひとつの潮流となっていた。「生活節約レシピ」(『an・an』2000年12月1日号)、「少ないお金で賢く楽しく暮らそう! アンアン流チープライフのすすめ」(同2002年11月20日号)、「年収200万円台でもここまで貯まる!私の〈節約〉大自慢」(『With』2001年7月号)、(「春から始める節約道!」(同2003年4月号)、など節約やチープ自慢のテーマになってきているのだ。(つづく)(神谷巻尾)

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2012年4月13日 (金)

OL財布事情の近年史/第74回 OL意識180度転換期?!否、もはやOLではない(後編)

前回のつづき。2000年のOL財布の状況を見ていた。趣味にひたすらお金を遣う「ロスジェネ」世代の女達。

 旅行会社勤務3年目の24歳は、ふだんは月収16万円のうち10万円貯金し節約に徹底するが、3ヶ月くらいでストレスが溜まり、服やエステなどに貯蓄額がゼロになるまで使ってしまう。無趣味だったが「老後のことを考えると趣味がないといけない気がしてダイビングをしようと決意」、ダイビング機材一式を20万円で買ったが「結局一度もやっていません」(同2000年8月23日号)。趣味は強迫観念になっていた。

 このような趣味への突出したこだわりがどうもこのあたりから目立ってきた。猫も杓子も海外旅行という行動パターンのかわりに独自の趣味に没頭して、それを中心に生活を成り立たせているという女子。思い浮かべるとたくさんいたなー、Jリーグ、ジャニーズ、ミュージカル、フットサル、フラ等々、好きなもののために日本全国または海外まで行ったりする知人女性の数々が。結婚やキャリアアップをめざしたり、ファッションや海外旅行にお金を使うことより、「私の“好き”を大切に」という生き方の方が上、という風潮になってきたのがこの頃だったのでは。そのために働き、結婚しても子どもが出来ても続けたい、といった感覚が普遍化してきたように思う。
 そんな趣味生活と対をなす感覚が、「主婦」である。といっても現在さかんに言われている「専業主婦願望」というより、「主婦的なもの」に共感を覚えるというような。この頃女性誌は、主婦的なものを是とするものとそうでないものに分化しているようだった。お財布記事でいうと、主婦派は節約、もう一方は投資である。この対比も今振り返ると興味深いが、まずは主婦的節約が20代女性に浸透していった経緯を、次回から見ていこう。

(神谷巻尾)

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2012年4月 6日 (金)

OL財布事情の近年史/第73回 OL意識180度転換期?!否、もはやOLではない(前編)

 本格的なデフレ時代になっても相変わらず夢見がちで貪欲なアラサーOLがいる一方、その下の、1970年代半ば以降に生まれ、就職氷河期に直面した世代は全く別の道を歩いていた。ロストジェネレーションなどと呼ばれ、フリーター、非正規雇用、格差社会、などのワードがつきまとい、もはやOLとさえ呼ばれなくなっていたかもしれない。2000年前後に創刊した女性誌を見てみると、『GINZA』(97年)『BAIRA』(01年)『STORY』(02年)『inRed』(03年) など「いい時代を知っているOLのその後」向けに物欲を刺激する雑誌がある反面、ほんとなら現役OLボリュームゾーンの20代ターゲット誌には、『SWEET』(99年)『Soup.』(01年)『mina』(01年)など、学生でもママでもOKみたいなカジュアル路線のものが目につく。消費力も期待されなくなり、上の世代が謳歌していた、旅行にブランドに自己投資に、というOLライフへの憧れが、ここで初めて断ち切れたのかもしれない。

 それでは働く20代女性は、バカみたいな消費や自己実現をしなくなって、堅実で賢くなったのか。否、そんなに単純にはいかないのが、この現代社会である。次に彼女たちの食指を動かしたものは何か。数年分のお財布記事から見えてきたもの、それは「趣味と主婦」である。シュミとシュフ。韻を踏んでるんじゃねぇ、とか就職氷河期の不幸な若者たちをバカにするな、とかいうご指摘もあるかと思うのでサクサク記事を見ていこう。前回とりあげた『Hanako』の「給与診断」から、20代前半のロスジェネ世代をとりだしてみる。

 まずは、趣味について。25歳アルバイトの女性は、東京の短大を出て一旦郷里に帰ったが東京に住みたくて再度上京。正社員の営業職はハードワークで体を壊し退社、バイト2つ掛け持ちしたりしているが、月2万2000円の税金・保険料負担がつらいという。彼女の生活の基準は、趣味だ。ラクロスの大学OGチームに所属し毎週土日にプレイ、「東京に住んでいたいのは、ラクロスをしたいからかもしれません」。仕事に関しては「派遣社員から正社員になる道もあると聞いているのですが……でも、本当はフリースクールの講師になることが私の長年の夢」と夢は見ながら趣味のために東京で暮らし、収入16万円で、月9万円の赤字生活をしている(『Hanako』2000年8月23日号)。
 一方24歳の看護婦は月収30万円、安定した一人暮らしだが、毎月30万円きれいに使い切り、貯蓄額も30万円。彼女の消費対象は、バンド。いわゆるおっかけで、月に15回のライブハウス通いや、売上貢献のためのCDまとめ買い、ライブ用の服などで月10万円使っている。特に意味なく携帯2台持ちで割引プランもせず、食事は「ひとりで食べるのは寂しい」からすべて外食と、趣味以外無頓着である(同2001年1月31日号)。

(つづく)(神谷巻尾)

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2012年3月30日 (金)

OL財布事情の近年史/第72回 アラフォー美魔女の10年前、どんなお財布?(後編)

前回のつづき。

 不況だからお金のことが気になる、でも好きなことはやめられない、そんなゼロ年代OLに、かつて「キャリアと結婚だけじゃ、イヤ」と煽動した『Hanako』も注目していた。2000年4月19日号からスタートした、「All about Money」という連載である。一人の収支表を分析する「給与診断」、何にいくら使っているかの調査「お財布拝見」が交互に登場するが、圧倒的に面白いのが「給与診断」。『Hanako』を読み、影響され、OLライフを謳歌してきた後、どんな財布状況になっていたか。2001年6月までの全16人のマネーライフは、それはもう診断と呼ぶにふさわしく、様々な面で病んでいた。

 登場するのは年齢も仕事もさまざまなのだが、まずは前々回から言及しているアラサー世代に的を絞ってみる。連載第1回、「自分ではわからないお金のこと、診断してください」というのは、外資系会社営業事務、親と同居の34歳、貯蓄280万円。手取り24万円、住居費光熱費もちろんゼロ、被服費・交際費に毎月4万円ずつ使いつつ、資格取得の勉強に専念したいけど、今すぐ会社を辞めてやっていける?と聞いている。このお気楽さは、90年代初頭に「アホバカOL」とシンクロする。 回答する経営コンサルタント渋井真帆氏も冴えている。「手取りで月収が年齢+1万円くらいあればもっと貯蓄できるのに」に対して「上場企業の課長さんクラスの平均手取り収入額です。大胆すぎる希望ですよ」、「自己投資は惜しみません。最近ではバレエレッスンに2万円、アロマ、TOEICに2万円くらい」といえば「少しうるおいを与えすぎでは。これでは、ふやけてしまいますよ」。「これといったスキルもない場合、現在と同額の収入を得ることは難しい」「いまからお財布の紐を締める練習を」と、30代半ばにしてごく基本的なアドバイスをされなければいけない状況が蓄積されていた。
 次のケース、新卒後6年間の勤務で400万円貯めて渡米、語学と音楽の勉強をして帰国後希望の音楽出版社に就職、と夢を叶えた29歳は、一見堅実なマネーライフにも見える(2000年12月27日号)。が、食費6万円、交際費9万円、被服費3万円という派手な出費の陰にある「〈クリエイティブに関わる人間は(略)ファッションセンスがよく、グルメでなければならない〉という上司のポリシー」というのがくせもの。そんなマンガみたいな上司の言うことを鵜呑みにし「年俸制のために残業代がつかないことは、ぜんぜん気になりません」、交際費も「自分のネットワーク作りのためなので、まったく苦になりません」と夢の仕事にあまりに信奉しすぎなのはいかがなものか。とにかく自己投資!とか好きな仕事!とか、みんな何かしらに過剰である。

 その他資格を取って職場にも福利厚生にも恵まれているが、スノボに年8回行きつつ、語学留学を夢見る26歳(助産婦、月収20万円、貯蓄200万円/2001年2月21日号)、親元に住みながら月の貯蓄はゼロ、ダイビングに年間60万円使い、週2回同僚との飲み会で交際費8万2000円という30歳(旅行会社、月収24万2000円、貯蓄100万円/2001年3月14日号)など、イタい例が俎上に。前者は「緊張感の足りない〈小金持ち〉」、後者は「楽しいのはいまだけ。自分の20年後を考えて、危機感を持って」と、渋井氏にバッサリ斬られている。この渋井さんという人なかなか面白いなーと思ったのだが、その後歩んだ道を見るとあんまり面白くない。人材教育やビジネスセミナーを手がけ著書をたくさん出し、一時期はビジネスウーマンの教祖っぽい立ち位置で、起業した社名がマチュアライフ研究所。マチュア、懐かしい、なんだっけと思ったら成熟、って意味でした。成熟社会をめざしてつけられたことだろうが、2010年にエムエス研修企画って地味な社名に変更していた。時代に寄り添いすぎているところが少々辛い。おっと、彼女も1971年生まれ。当時自らも模索しながら診断もしていたわけか、どうりでなんともライブ感があるはずであった。さて、現アラフォーに言及しすぎた。次回からはこれからの主役、ゼロ年代OLを見ていこう。(神谷巻尾)

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2012年3月23日 (金)

OL財布事情の近年史/第71回 アラフォー美魔女の10年前、どんなお財布?(前編)

アラフォーとか美魔女とか、ナントカ女子と呼ばれることに違和感ない現在の四十路女性が20代後半だったのが、2000年前後の頃であった。果たして10年後の「40代女子」に至る萌芽は、当時どこかに隠れているのだろうか。と、記事を見ていくと、ひとつの文脈が目についた。それは、「ふだん〇〇してるかわりに、〇〇にはお金を惜しみません」というもの。不況期だけにお財布記事も「節約」「貯蓄」のテーマが目立つが、ふだん節約するかわり、好きなことは我慢しない貯め方がストレスフリーでハッピー、という論調だ。

「自宅からおにぎりを持参し、お茶は2リットルのペットボトルを会社の冷蔵庫にキープ(略)そのぶん友達と会うときは食べたいものを思いっきり食べる」(29歳・手取り月収25万円・親と同居/『With』2000年1月号「こんな時代でも20代で1000万円貯めてる女」)
「交通費は定期券を持っている区間以外は基本的に歩きます/こんなに頑張れるのは目標があるから。ワーキングホリデーでカナダに行く予定で、来年冬の出発までに200万円貯める」(28歳・月収25万円・家族と同居/『With』2000年12月号「今年、100万円貯められた女に学ぶ〈節約名人〉への道」)
「口紅はここ3年1本も買っていません/その代わりレジャーのときは思う存分使って遊ぶ!昨年冬のボーナスではバリ旅行と国内スキー、今年夏のボーナスでは30万円でオーストラリアへ」(26歳・月収18万円/同上)

 好きなこととは、食べ歩き、レジャー、海外旅行……20年間変わらないOL消費である。案の定、これらの記事で「貯蓄の達人」「節約名人」として登場しているのは、親と同居のオールドスタイルOLが中心。「手取り20万円のうち10万円を貯金」(26歳・月収20万円・家に1万円)、「就職して以来、貯蓄は年間100万円以上というペース」(26歳・月収18万円・家に2万円)という貯蓄術は、1、2万円で許される「家に入れるお金」マジックの効果が大きすぎる。かつてのように数年働いてお嫁に行くわけではなく、働き続け、給料が上がっても、家への入れるお金は価格据置。可処分所得が増えて余裕があるだけなのに、アドバイスする荻原博子先生さえ「家に入れるお金が少ないのも貯まった理由かな」なんてユルいこと言っているのはどうしたわけか。ちまっとした節約の成果をことさらフィーチャーすることで、問題の本質から目をそらす結果になっているとはいえまいか。100万円、1000万円貯めて、結婚せず、実家に暮らし、留学だの自己投資だのを続けていたのが、なるほど現アラフォー女子である。(つづく)(神谷巻尾)

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2012年3月16日 (金)

OL財布事情の近年史/第69回 不況が副業への夢を強める?まだまだ理想を追うミレニアムOL(後編)

 前回のつづき。『コスモポリタン』2000年3月号の特集記事から、2足のワラジ、副業を本業にと、自分の生き方を夢見ながらも模索する2000年OLの状況について見ていた。

 夢追い女子がいる一方、「会社とは年俸契約(略)労働時間で時給計算すると、一時間1000円に満たないはず(笑)」(レストラン店長兼PR担当30歳・年収440万円)、「2年前から営業成績というリアルな数字で年俸を決定されるようになった」「やるべきことが2倍になって(略)家でも仕事できるようにとパソコンを買ってしまいました。約30万円の出費(笑)」(広告代理店営業30歳・年収400万円)など、過酷な労働条件を「(笑)」で受入れてしまっているオトコオンナ・不況バージョンもいる。仕事と収入のバランスに、未だ切実さが希薄である。

 ここに登場するのは、20代後半以上、5年、10年と働いている女性が多い。つまり90年代初頭の、まだ景気のいい頃を知っている。就職したばかりなら、就職率も初任給も低く上昇志向も高望みも元からなかっただろう。だが、ベテランOLは、キャリアアップしたり三高メンズと結婚をしたりうまいことやっていたすぐ上の世代を見ていた。自分もそんな人生を送るのかと思ったのにあっさりその未来予想図は崩壊、「こんなはずじゃなかった」「生活レベルを下げるのは嫌」といった思いを抱き、働き方も生き方も迷走していたのではないか。

 と、思うのは話題を呼んだオセロ中島知子騒動を見て。彼女は現在40歳というから、2000年当時29歳である。普通のOLとは異なる環境とはいえ、仕事の成功や手に入れた暮らしへの愛着、想い描く理想像は、その年代の女性のものであっただろう。理想と自分探しと社会状況、そのバランスを保つのが大変な時代だったといえまいか。彼女と同じ、1971年生まれをちょっと調べてみると、丸川珠代、西川先生、オアシズの2人、中嶋朋子、藤原紀香、田中律子、くらたま、壇れい……金麦がこんなところに! ああ。なんだろうこのかんじ。と担当子と話していて、「何かをつかみとった人たち」ということに落ち着きました。迷走した面影も残るものの、自らの手で現実の中から何かをつかみとった結果、たくましい40歳になっている。

 この20年で、進学率も就業率も格段に上がり、女性の社会進出は進んだ。が、働く女性の背後には、実家、彼氏、マネーゲーム、おいしい福利厚生など、様々なお財布があったことを見てきた。仕事は、それらに付随する程度のものでよかった、これまでは。だが本格的な不況期に入り、もう女性にとっても仕事はおまけの存在ではなくなってきた。しかし、そこに気づく女性も、警告してくれる人も、 OL界には見当たらない。ふつうの、働く女性は、何をつかんでいったのだろうか。(神谷巻尾)

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2012年3月 9日 (金)

OL財布事情の近年史/第69回 不況が副業への夢を強める?まだまだ理想を追うミレニアムOL(前編)

 男女共同参画の追い風と、不況というアゲンスト、双方を受けて翻弄される2000年のOLである。そんな状況にあっては、風をとらえてうまく舞い上がるか、むしろ身を任せて流れていくか、あるいは強固に踏ん張って撃沈するか、その選択によって、おおげさでなく「天国と地獄」に分かれたのではないか、と思うのである。
 前回もふれた『コスモポリタン』2000年3月号、「リストラ時代の給料2218人の〈天国と地獄〉」は、平均年齢28.2歳、税込み年収平均423.3万円と収入も高めで、数字だけ見れば恵まれた生活なはずだが、不況の影響に敏感に反応している。「夏は1ヶ月出たボーナスが冬は出なかった」(31歳・出版社書籍編集)、「移動時にタクシーを使えなくなった。接待も減っている」(28歳・証券会社営業)、忘年会や新年会が「乾き物を並べてささやかにやる程度」(29歳・家電メーカー)など、会社生活のダウングレードに困惑している。ボーナスは40.1%がダウン、「出なくなった」のも8.8%と、半数近くがマイナス。しかし月給は61.9%がアップしたと答え、昇給の平均が月2.1万円と、今では夢のようなベースアップ率なのである。クレジットやボーイチ払いが定着した身には、ボーナス減は打撃が大きいのだろうか、サイドビジネスをしているのが24.8%、今本業1本でも「副業もしてみたい」のは73.6%と、別の稼ぎ口に興味津々になっている。レベルダウンが許せない、バブル経験組の焦燥感なのか。

 回答者に追加取材した「ルポ『お給料・それぞれの人間模様』」をみると、その翻弄具合が表出してくる。役者をめざして上京、アルバイトを経て派遣スタッフになり通信メーカーに勤務する28歳は、派遣の仕事終了後、キーパンチャーのアルバイトで7〜8万円の副収入。「東京で一人暮らしをエンジョイするためには副業が欠かせません」「片方ダメになっても、もう片方が残るのが二足のワラジの強み」とは、今は二足ともダメな可能性が高い働き方である。
 34歳旅行会社勤務女性は、勤続15年で年収500万円(手取り、以下同)だが、地方転勤の辞令がくだり、長年夢みて副業にしていたイラスト1本で食べていくことにした。イラストの副業は、「多いときで年に15万円ほど」にもかかわらず。コスモ誌は「厳しい転勤辞令を、むしろ自分にとってのチャンスと受け止め(略)長年の夢に向かって走り出そうとしている」とエールを送っている……場合なのか。月収1万円で夢を追えと。(つづく)(神谷巻尾)

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