OL財布事情の近年史

2012年12月21日 (金)

OL財布事情の近年史/第108回 30年間総ざらい、財布の中身はどう変わった?(後編)

連載「OL財布事情の近年史」は、2013年12月に単行本『女と金~OL財布事情の近年史~』として発売されます。

各年代のOL像を、イラストを交えて解説する辛酸なめ子さんのプチ時評つき。辛酸さんには、カバーイラストも描いていただきました。

エピローグには最新の女性誌お財布事情が書き下ろされ、女性誌創刊号の画像50数点を掲載。30年ぶんの「OLの財布の中身」が一気に見える本となりました。

全国書店から注文可能。
Amazonでも予約・注文できます!

 衆院選は自民党の圧勝で、金融緩和、経済再建の公約効果が早くも発揮、株価は8カ月半ぶりに1万円台を回復、円安もぐんぐん進んでいる。こうなると、テレビに映るのも「景気回復に期待します」という新橋のサラリーマンや町工場の社長、タクシー運転手とかが多くなり、「原発反対」「増税反対」「くらしを守る政治を」と言っていた生活者の声は、やんわり棚上げといった様相である。取り戻す取り戻すって、誰に何を?と思っていたけど、つまりコンクリートと金融で好景気を作り上げた30~40年前くらいの日本を、バリバリ働き、お金を稼ぎ、家を建て、家族に尊敬される一家の大黒柱というポジションを、日本の男性に、ということですね。

 確かに、男性の大半はそこに戻りたいであろう。女性だって、夫がいい給料もらって家事育児に専念して、老後も主婦年金でばっちり、という現在初老の域にさしかかった世代は、あの頃がいいと思うかもしれない。だって、欲しいものがたくさんあって、何でも買えて、ずっとそんな生活が続くと思ってたもの……しかし、そんな時代は突然終わってしまったんだった。行き過ぎた公共投資、作りすぎた建物、実体のないマネーゲームもそこにあったことを、ちょっと株価が上がったくらいで忘れたらいけないのであった。
 
 しかし、とかく金の動きに人は弱い。プチバブルとはわかっていても、世間の高揚感は否めない。またあの前進していた頃の日本に戻りたいという空気のなか、それでは女性はどこに行くか。もうあの頃のように高卒と短大卒が主流ではなく、初婚年齢もあがって、30代独身も増えた。ITが普及して、エコとかソーシャルとかシェアとか、新しい観念も持つようになった。強い日本に戻ってイェーイ、とか単純に言っていられないのである。

 ということを、30年のお財布の歴史を振り返りながらつらつらと考えるのであった。連載も108回、煩悩の数だけ、その極みのようなお金について積み重ねてしまったところで、ちょうど年の瀬、清らかな心になって終わることといたしましょう。とはいえ30年分の煩悩は、鐘をついて消してしまうには惜しい発見も様々、整理して記録しておきたい次第。暖かくなる頃に、また別の姿でお会いできれば幸甚です。長い間のご愛読、感謝します。ごきげんよう。(神谷巻尾)

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2012年12月14日 (金)

OL財布事情の近年史/第107回 30年間総ざらい、財布の中身はどう変わった?(前編)

連載「OL財布事情の近年史」は、2013年12月に単行本『女と金~OL財布事情の近年史~』として発売されます。

各年代のOL像を、イラストを交えて解説する辛酸なめ子さんのプチ時評つき。辛酸さんには、カバーイラストも描いていただきました。

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 さて、1980年から2010年まで、30年間の女性のお財布をみてきて、はや100回以上。連載最初の頃を振り返ると、30年前のOLはみんな一般事務、実家暮らしで月給をほとんどおこづかいに使い切ってるなー、それにひきかえ今は専門職に派遣に契約、働き方も給料もバラバラで、ずいぶん様変わりしたわねー、と、その違いをおもしろがっていた。
 しかし、経済が上り調子だった80年代から始まり、バブル景気、平成不況、ITプチバブル、就職氷河期など順を追ってみていくと、働く女性の変化はなんと景気の波をもろに受けていることよ。ようやく女性も大学に行き、仕事を持つようになって、雇用機会均等法も出来たのに、あっという間にバブルが崩壊して、キャリアアップできたのは一握り。均等法、派遣法が改正になって、深夜・休日労働もあり、派遣でできる業務が広がり、激務、不安定、といった要素が増えた。
 それなのに「消費の原動力を握るのは若い女性!」とばかりに、どの時代でも女子の財布があてにされてきた。海外旅行、ファッション、ブランドバッグ、エステ、矯正下着、そして美顔器……。買って買ってー、便利なカードもリボ払いも用意しますよー。そして自分磨き、美の追求は際限なく、いくらあっても足りることはない。それに、今どき結婚がゴールなんてダサいから、キレイになる目的は彼じゃなく自分のため、歯止めもきかない。さすがに結婚年齢がどんどん上がり、2010年東京では25~29歳女性の71%が未婚、これはまずいというわけか、この頃女性誌でも「合コンでモテる」「結婚式二次会で彼ゲット」みたいな記事をよく見かけるが、世の中に翻弄されすぎた結果、時代を逆戻りしているのか。
 この30年、確かに働いて稼いで好きなことができる女性は増えたけれど、現状をみるともう少しなんとかうまいことできなかったのか、と歯がゆい思いである。と、思いながら溜まった資料を見ていたら、「〈女性の働き方〉抜きに賃金は語れない」というタイトルを見つけてどきっとした。『日経ウーマン』1988年9月号「女性の賃金」の中の、お茶の水女子大学助教授篠塚英子氏のコラムである。「均等法自体が男の働き方のシステムのワクの内の法律で、結婚も子育てもと望む大多数の女性たちは、そんな男の働き方ではやっていけないと思っている」「日本の女性は経済的な自立のための職業訓練が与えられないまま、大多数が一般事務の仕事に就く」「企業の意思決定のところに女性がいない限り、男中心の経済システムは変わらない」。うむむ。この88年の段階で、こういうことに手をつけていればよかったのだろうけど、バブル絶頂期に耳を傾ける企業も、女性も、少なかったことだろう。この篠塚氏は2009年に、女性初の人事官に就任したという。日本の行政の、意思決定のところにこの考えを持つ女性が入ったということは、せめて明るい兆しと思いたいが。(つづく)(神谷巻尾)

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2012年12月 7日 (金)

OL財布事情の近年史/第106回 恐るべし「美顔器」の罠!10年代に突入(後編)

連載「OL財布事情の近年史」は、2013年12月に単行本『女と金~OL財布事情の近年史~』として発売されます。

各年代のOL像を、イラストを交えて解説する辛酸なめ子さんのプチ時評つき。辛酸さんには、カバーイラストも描いていただきました。

エピローグには最新の女性誌お財布事情が書き下ろされ、女性誌創刊号の画像50数点を掲載。30年ぶんの「OLの財布の中身」が一気に見える本となりました。

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前回の続き。

ゼロ年代半ばの美顔器族のその後を、『Oggi』連載「私の預金通帳」に見ていこう。いや、そんな族はいませんけどね。美容にファッションに内面...自分磨きへの過剰な追求にハマったことを封印したい族、というのは少なからずいることだろう。

 2007年7月号、IT系情報会社勤務A子さん31歳、食品販売、人材派遣、IT2社を経て現職2年目。会社の急成長や上場の瞬間に立ち会い「株価が上がると自分までお金持ちの気分に」なり、高い家賃の物件に引っ越したり買い物したり熱に浮かされていたが、ライブドア事件で株価は1/3。「当時の買い物約100万円はかつての貯金から払い、株は売れずに持っている。「家賃に首を絞められている状態」だが、伊勢丹で「年間100万円使って割引率10%にさせるのが今年の目標」で、「電車賃を惜しまず伊勢丹詣でを続けている」というねじれ構造である。

 2000年代後半になってくると、登場する読者の年齢層も上がり、30代・独身が増えてくる。2009年7月号の編集プロダクション子さんは33歳。編集プロダクション2社目で手取り37万円だから悪くはなさそうだが「“一生独身の場合、60〜88歳の間に必要なお金は5,6000万円という新聞記事を読んでから、眠れないんです」と怯えている。「就職氷河期を耐えれば次が開けると思って頑張ったら」3年目から給料が上がったが、それで歯列矯正と英会話とマンション購入につぎ込んだら、「今度は世界恐慌。給与アップは止まり、支払いが重くのしかかっている」。歯は2年間の矯正で180万円。マンションは3年前に「今が底値」と聞いて衝動買いしたが、今はさらに下がっていて、月の支払いは10万強。その他、生命保険会社の年金2本に加入し、約3万8000円。そして通帳をよく見ると「自動融資」の項目で、4000円、18000円、と月に何度か入金されている。残高がゼロで引き落とせないときに、預金を担保に融資しているのだろう。そして月イチで10000円の「ご返済」、つまり元利均等払いってことか。住宅とで、二重ローン。おっかねえ!

 ビューティ消費が増えるとともに、それにまつわる職業も増えて来た。が、過剰消費につながる仕事が手堅いものであるはずもなく。2008年4月号、エステサロン勤務38歳のJ子さんは、金融、建築会社などに計7年、30歳から化粧品会社で派遣、医療事務とメイクを勉強して1年前から現職で手取り給与10~12万円、都内でひとり暮らし。プロフィールからすでに辛い。「'90年代の大手企業時代、'00年代の派遣時代、昨年からのエステ見習い時代、J子さんの給与は各時代を減るごとに減っている」。将来はサロンを開くつもりだが、貯金70万円しかないので「エステ勤務のない日にほかのバイトをしようと思っています」。減るいっぽうの通帳を見るのがつらく、1年以上記帳をしていない、という。

美への追求が女子の経済を苦しめた。ところで最近会ったお洒落メンズが、妻に誕生日プレゼント何がいいか聞いたら「美顔器」と言われて一気にテンションが下がった、と言っていた。キレイの動機は男性受けしない。だから自分で買わなきゃならない。そしてキレイになったあとに残るものは。。。という話である。(神谷巻尾)

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2012年11月30日 (金)

OL財布事情の近年史/第105回 恐るべし「美顔器」の罠!10年代に突入(前編)

連載「OL財布事情の近年史」は、2013年12月に単行本『女と金~OL財布事情の近年史~』として発売されます。

各年代のOL像を、イラストを交えて解説する辛酸なめ子さんのプチ時評つき。辛酸さんには、カバーイラストも描いていただきました。

エピローグには最新の女性誌お財布事情が書き下ろされ、女性誌創刊号の画像50数点を掲載。30年ぶんの「OLの財布の中身」が一気に見える本となりました。

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 ITバブルの頃に入社して、プチ贅沢を楽しんでいたら、20代後半で景気悪化、昇給も正社員待遇も、会社の存続すら危うくなって、首が回らなくなる女性続出、というテン年代の幕開けであった。
 ところで前回、担当子より「就職したてで美顔器って、どれだけアンチエイジングな人なんでしょう」とコメントがあったが、確かに美顔器だの化粧品フルラインだのエステだの下着だの、ビューティー関連への支出がやけに目立つ。そういえば、誰もがネイルに力を入れ始めたのも、2000年代半ば頃からでは。コスメに特化した雑誌も、1998年創刊の『Voce』に続き、2001年に『美的』、2004年に『MAQUIA』が出て、美容への興味が高まってきた時期だった。時代はアゲアゲ状態、美顔器に走る女子も誕生してしまったことだろう。
 そんな時代の変化を感じられる記事を見つけた。『Oggi』の人気連載、「私の預金通帳」である。ひとりの預金通帳のコピーを載せ、その持ち主の女性にインタビューするというお財布記事で、今回この「美顔器から5年後に破綻」の時代検証をするのにまさしく役立った。浮かれていた時代から、クライシスへの一連の流れを見ていこう。

 2004年2月号、社長秘書L子さん(27歳)、手取り給与10万円。社長とは美容機器や健康食品を扱う実業家のカレで、秘書の仕事は「カレのおうちで料理作ったり、レシート整理したり」。カレのおうち(自宅兼事務)の家賃は100万円らしい。お給料の10万円は習い事の「料理とお華と陶芸と紅茶」に使うが、洋服などはママが出してくれ、カードの支払いのためにあらかじめママが入金しておいてくれる。通帳にある分割払い引き落としはイヴ・サンローランのシャツとスカート、ラ・ペルラの下着30万円を4回払いに。すでに全額ママからもらい済みという。いやー、ほんとに実在してたのかと思うような暮らしぶりだが、美容機器バブルもいたんだろう、期間限定ではあろうが。

 まだまだ続きます。2004年10月号、家具づくり職人T子さん(25歳)、手取り20万円。大学卒業後のフリーター時代にカードローンで総額50万円。「大きな買い物は美顔器くらいで、あとは欲しいCDや服を買った程度なのに、いつの間にか...」。フリーターでも買ってた美顔器。しかも「使い方がややこしく、10回試して押し入れ行き」。さらにこの人「今話題!沖縄コスメ」の新聞広告で化粧品を衝動買いしてる。「母に怒られて、カードを没収されました」。よかったね。
 2005年6月号、飲食業勤務B子さん(26歳)、短大卒業後派遣3年→販売職→現職、手取り21〜25万円。「『生まれ変わる』とか『自分を変える』ものには、財布のひもが緩むんです」と冒頭からヤバいが案の定、ゴスペルのレッスンから始まり「ツボ治療カラーパンクチャーで、15万円。最近はスチーム美顔器に7万円」。なのに「美顔器の効果が出る前に花粉症で肌の調子は最悪」って、もうやめてー。「手に職を付けて一生困らない自分に変わりたい」「体質改善食品や自然はコスメ・洗剤など、どれほどお金をつぎ込めばいいのか」。今現在のB子さんが大変気になるところである。
美顔器の罠は、しかし意外と女性の財布問題の核になっていた。発見である。(つづく)(神谷巻尾)

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2012年11月23日 (金)

OL財布事情の近年史/第104回 「女子」は何故ここまで支持された?アラサー女子の笑い飛ばせない現実(後編)

連載「OL財布事情の近年史」は、2013年12月に単行本『女と金~OL財布事情の近年史~』として発売されます。

各年代のOL像を、イラストを交えて解説する辛酸なめ子さんのプチ時評つき。辛酸さんには、カバーイラストも描いていただきました。

エピローグには最新の女性誌お財布事情が書き下ろされ、女性誌創刊号の画像50数点を掲載。30年ぶんの「OLの財布の中身」が一気に見える本となりました。

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前回のつづき。『an・an』2010年7月28日号「アラサー女子の切実なお金危機!」の転落事例、どれも熟読してしまう人生模様である。
25歳・製造業事務・手取り16万円で、実家に3万円、食費3万円、携帯代等1万5000円、被服費化粧品3万5000円、外食費交際費で5万円...実家暮らしで給料を使い切る昔ながらのOLである。20年前なら、このまま相手を見つけて結婚して主婦、でゴールだっただろうが、今の世の中でこれをしているとどうなるか。服を買うのが大好きで、「学生時代に作ったリボ払い専用のカードで」買い物を続け、15万円の給料ではやっていけなくなり実家へ戻ったが、そこで気が緩み、かえって浪費に拍車がかかり、ついにリボ払いの金額が10万円弱、借金総額130万円となった。誌面では、ファイナンシャルプランナーで『年収200万円からの貯金生活宣言』著者の横山光昭氏が、弁護士などに頼んで借金を整理する「任意整理」を勧めている。かつてのOLの、一般的な消費行動が、いまやクライシスなのである。

 そんなこと言われたって、特別なことしてないしー、みんなやってたしー、という声が聞こえてきそうなほど、他の女子たちも無意識にOL消費をしている。「1度は海外で暮らしたいと1年間のアメリカ留学」(32歳・派遣)、「就職してすぐ、美顔器30万円、ダイヤのネックレス40万円、カラーコーディネイター資格取得に30万円」(27歳・メーカー)、「新しい化粧品が出るたびにフルラインで」(31歳・イベント会社)「写真の道に進みたくてカメラマンに弟子入り」(25歳・写真スタジオ)など、もはや懐かしくさえある消費行動様式。その結果、留学女子は貯金ゼロになり転職で実家を出ることになり生活費も不安、美顔器女子はカード分が払えなくなりキャッシングも始めて借金総額120万円、化粧品フルラインはカード2枚のローンが120万円、カメラマンアシは体を壊したうえにヤケ酒代がかさみ貯金ゼロ、など、数年でなんと色あせていったことか。
それにしても、2010年といえば、リーマンショックもサブプライムローン破綻も経て、円高も進み、相当ヤバイところまで来たという実感ではなかったか。年収300万円時代と言われていたのが、前出横山氏の著書のとおり200万円になってるし。世のお父さんたちや家計を預かる主婦、すでにワーキングプア状態にいる層は十分に節約モードだったと思うが、OL的なポジションにいるとその風は吹いてこないのか。

 よく見ると、登場している女性は20代後半から30代で、入社したのは2005年前後であろう。この頃はというと...おおっ、エビちゃん現象・ITバブル真っ最中ではないですか。エビかわ服来て合コンして、ブログ書いてmixiして、という華やかな時代が社会人デビューだった世代である。そしてこの時期に言及した記事に、なんと美顔器が登場していた(88回)。「お取り寄せスイーツや美顔器など、買ったものについての率直な感想をライター気分でブログに書く」アフィリエイトでそんなもの買ってしまうから、まんまとクライシスですよ。女は計画性がないな、やっぱりアホバカOLだな、という声が聞こえてきそうではあるが、世間様があえてF1層とか言っちゃって、不況のなかでも最も消費意欲が旺盛だ、トレンドに敏感だ、と持ち上げてきたのではあるまいか。いい迷惑である。(神谷巻尾)

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2012年11月16日 (金)

OL財布事情の近年史/第103回 「女子」は何故ここまで支持された?アラサー女子の笑い飛ばせない現実(前編)

連載「OL財布事情の近年史」は、2013年12月に単行本『女と金~OL財布事情の近年史~』として発売されます。

各年代のOL像を、イラストを交えて解説する辛酸なめ子さんのプチ時評つき。辛酸さんには、カバーイラストも描いていただきました。

エピローグには最新の女性誌お財布事情が書き下ろされ、女性誌創刊号の画像50数点を掲載。30年ぶんの「OLの財布の中身」が一気に見える本となりました。

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「女子」には、学校時代の、自由でニュートラルな記憶がある。勉強すれば評価されるし、クラスや部活でもがんばればトップになれた。それなのに社会に出てみれば、就活は厳しく、契約・派遣採用が増えて正社員になることすら難しく、結婚しようにも男子の給料は安いし、かといって仕事を続けても出産育児の壁は高い。ああ、なんて大変なの、「女子」のままでいれたらなんていいだろう。という心の叫びが、「女子」の多用化を促進している、と仮定してみたわけである。

ナントカ女子と称することで、置かれている状況を自嘲気味に言い表したり、「女子コスプレ」に楽しみを見出して、なんとなくヨシとする、ある種の世渡り術なのかもしれない。しかしながら、便利な女子づかいは、大きな問題の前で目を曇らす要素もあるのではないかい。『an・an』2010年7月28日号の特集「アラサー女子を困らせる7つのモンダイ。」を見ると、軽いタイトルとは裏腹の、働く独身女性たちのかなりヤバイ現実が見えてくる。

この特集の7つのモンダイとは、おひとり様、お金、仕事、女の友情、妊娠出産、親との関係、もやっと不安(仕事も彼もいるが、なんだか心が晴れない状態)、である。「気づけば、おひとり様歴?年。いつまで続くの...!?」なども切実ではあるが、彼氏ができないパターンの分析とか、まあ自虐ネタ的な扱いである。しかし、お金問題は、大変なことになっていた。「貯金ゼロ、実は借金も...。アラサー女子の切実なお金危機!」と題されたこの記事、危機に陥った女性の事例は、ネタで笑い飛ばせないような転落エピソードであった。

25歳商社勤務の女性は、手取り20万円、家賃と光熱費で10万円、通信費と食費で7万円、自転車なので交通費なし、というごく普通の生活に見える。が、23歳で憧れていたアパレルメーカーのプレスに転職したが、社会保険がなく、社販で服を購入するのが半ば義務。身体を壊して休職するも有給制度がなく治療費も全額自己負担。一緒に住む彼も収入ダウン、お金を貸しているうちに100万円になった。体調が戻らず前職を辞めたあと、社内販売で予約した服、ボーナス一括払い30万円の請求が来たが、現職ではまだボーナスは出ない。ブラック企業、病気、だめんず。これほんとに『an・an』?と思うが、普通の女性が崖っぷちにいるのか、『an・an』の懐が深くなったのか。両方だろう。(つづく)(神谷巻尾)

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2012年11月 9日 (金)

OL財布事情の近年史/第102回 「女性」でも「女」でもなく「女子」じゃなきゃダメな理由って?(後編)

連載「OL財布事情の近年史」は、2013年12月に単行本『女と金~OL財布事情の近年史~』として発売されます。

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前回のつづき。

日経ウーマン2009年10月号、30ページ以上にわたる「“脱オス化”宣言!「女子力」は、こう磨く!」を見ていた。働くことを称揚する(?)はずのこの雑誌で、女らしさの推奨がバンバンなされている。

特集コンテンツも、「“かわいげ力”“切り替え力”…今、必要な「女子力」はコレ!」「オフィスで好かれる女子力VS嫌われる女子力」「秘書、営業、広報…デキる女子のお仕事術を拝見!」「女子が心がけたいビジネスコミュニケーションのポイント」などなど、オフィス、ビジネス、仕事術など、本来ならば「女子」が縁遠そうな場面にバンバン登用されている。

なんだよ、不況になって仕事なくなると急に女を売りにするのかよ、とムカつく場面である。はずなのだが、ちょっと様子が違う。これだけ露骨に、かわいくしろー、女らしくしろー、とムカつくほど唱えている特集なのだが、この手の記事で必ずセットになっている「結婚」とか「男性」の陰が見えないのである。女らしさは、結婚相手探しのためじゃなく、自分の価値をあげるため、ということか。

そう考えると、「女性」でも「女」でもなく、「女子」がしっくりくるのもわかる気がする。

一般的に、「女子」と呼ばれるのは、小中高、大学生くらいまでの、児童や生徒や学生の頃である。女子校文化、女子特有の対人関係、などの思い出もあるかもしれないが、基本的に女子と男子は対等の世界に生きていた。もっとも1980年代頃までは、男子は技術、女子は家庭科と分かれていて、家庭科が中学で男女共修になったのが1993年、わりと最近のことである。このときに中学生になったのは、今30代前半だから、それより下くらいの世代であれば、学校では男女同じ教育を受けていたわけだ。

つまり「女子」という呼び名にあるのは、平等で、ジェンダーフリーだった記憶。「女の子」とか「少女」、あるいは「女性」「女」などバイアスのかかった性を意識させないことばなのでは。だから「女子」と呼ばれることに抵抗はなく、むしろ生き生きして、積極的に口にしたくなるのではないか。どうでしょう、家庭科別共修世代の女子のみなさん。(神谷巻尾)

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2012年11月 2日 (金)

OL財布事情の近年史/第101回 「女性」でも「女」でもなく「女子」じゃなきゃダメな理由って?(前編)

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みんな大好き、「女子」。仕事への不満も、貧困への恐怖も、おひとりさまの老後のへ不安も、とりあえず「女子」と言っとくことで、霞がかかったように薄らぼやけたように見えなくなる気がするのはなぜか。なぜそれが「女性」や「ワーキングウーマン」ではなく、「女子」なのか。

日経ウーマン2009年10月号、30ページ以上にわたる「“脱オス化”宣言!「女子力」は、こう磨く!」を見ながら考えてみた。

同誌の読者調査によると「私って『“オス化”しているかも…』と思う瞬間がある」人は7割以上、「ONタイムのノーメイクOK」と判断する人が約15%。「メイクもファッションもラクさや効率生重視」(33歳・メーカー・営業企画)といった声が紹介され、そのあたりから「オス化」が進んでいる、とみなされている。
この背景として、均等法施行から20年が経ち女性が働くことが一般化したけど「男性並みのハードさが求められ、その結果、女性性を押し殺してしまう」と、人材活性化コンサルタント前川孝雄氏が分析する。識者の意見を見ると「女性ならではのちょっとした気配りがあるだけで、職場の雰囲気が一気に和らぐ」(アナリスト・中川三紀さん)、「女性の“すごい〜”“かわいい〜”といった感性や、感じたことを男性以上に素直に表情や言葉にする表現は、ビジネス現場を盛り上げ明るくします」(『デキる女には「ウラ」がある』著者柏木理佳さん)、「女子にとって仕事モードへのまたとないリセット法がお化粧」(PRコンサルタント飯野晴子さん)など、日経ウーマンとは思えない、女らしさの推奨である。(つづく)(神谷巻尾)

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2012年10月26日 (金)

OL財布事情の近年史/第100回 「OL」を完全に捨て「女子」をまとうオンナたち!分岐点の09年(後編)

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前回のつづき。最近急速に広まっている「女子」という言葉の出どころを探っていた。

ワーキングウーマンを標榜し続けた『日経ウーマン』の変化も見逃せない。以前、OLという呼び名は女性の75%が嫌い、というデータを紹介したが(82回)、OLをなんと呼ぶか問題に、日経ウーマンが取り組んでいた。2009年4月号「働く女性の「呼び名」“OL”そろそろ変えてみませんか?」で、読者と各界識者が提案している。読者の応募で一番多かったのは「ワーキング・ウーマン」。他には「ビジネスパーソン」「ワーキングパーソン」など男女の区別をつけないもの、キャリアをアレンジした「キャリ女」「キャリーヌ」などが目立ったとか。識者の意見では、「有職女性」(上野千鶴子)、「ワーキング・レディ」(藤巻幸夫)「ビジネスパーソン」(香山リカ)など、まあ普通というか、目新しさはない。そのなかで、唯一「女子」の文字があったのが、町山広美の「おつとめ女子」。おつとめ、がご奉公みたいに見えたのか、その後広まった気配はないが、この手があったか、という新鮮さである。

このおつとめ女子に、誰か引っかかりを覚えたのかどうなのか、その2ヶ月後、おそらく初めて大特集に「女子」が登場した。2009年6月号「年収300万円全国アラサー女子のリアルライフ」である。キャリアアップをめざし、貯蓄して自立する、いわば大都市圏の働く女性視点に思われた日経ウーマンが、その対象を全国に広げたときに出てきたのが「女子」であり、年収300万円という低めかつリアルな数字を出した、というのは大きなターニングポイントといえる。20代後半女性の8割くらいが働いているんだから、何も都会でスーツを着て通勤している人ばかりじゃない。当たり前なのだが、そんなことを働く女性誌が打ち出したワードが、女子。やがて日経ウーマンではいつのまにか「働き女子」なる呼称が、浸透していく。OLもワーキングウーマンもビジネスパーソンも、どうにもしっくりこなかった呼び名が、どうやら女子に収れんしていった模様だ。働く女性も、自分たちのことを女子と呼ぶのに抵抗はなさそうだ。なぜなのか。つづく。(神谷巻尾)

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2012年10月19日 (金)

OL財布事情の近年史/第99回 「OL」を完全に捨て「女子」をまとうオンナたち!分岐点の09年(前編)

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気づいたら女性誌ににわかに増殖した「女子」。
それ以前に「男子」は、2005~6年頃のメガネ男子、草食男子に始まりすっかり世間に浸透していた。しかし、草食男子の対となる肉食女子は、どちらかというと「肉食」部分のアピール度が強く、単語としての「女子」にはさほど注目されなかったように感じる。同じ頃の文化系女子、森ガール、山ガールなどに見るように、「女子」「ガール」はオタク、非モテ、ガーリー系志向の女性の呼称として使われていたのではないか。
そのマイノリティワードが一気に全女性に広まったのは、いつからなのか。どうにも気になって、女性誌数誌の目次を括ってみた。どうやら転換期はゼロ年代末、2009年のようだ。

前回取り上げた『With』は、2007年9月号「恋も仕事も人生も 25歳は女の分岐点」のような、前向きで上昇志向なイメージの「女」「美女」の表記が主流だが、やがて「好感コーデ30連発」(08年5月号)、「おしゃれハッピー¥9999以下」(09年1月号)のような、チープシックな表現が目立ってくる。そして09年には本格的に、「女子力UP5つの法則 お仕事ガールの愛されマナー練習帖」(09年4月号)、「働くWithガールの新ルール」(09年5月号)、「働くニッポン女子の真夏の流行実況スナップ」(09年10月号)と、女子・ガールが完全定着。働く女性は「おシゴトガール」、美女は「キレイな女子」といった表記が現在も使われている。

女子化がもっと激しいのが、『an・an』。2008年11月19日号「結婚、仕事、家族...女子の未来計画」を皮切りに、5月27日号「日本女子のたしなみ?」、7月15日号「女子的トーク術レベルアップ!」、8月19日号「モテる大人女子の条件とは?」、9月2日号「女子心を満たす最新カメラ術」など、10年1月20日号「女子のための最新「萌え」入門」と、女子・女子の大放出である。でもこう見ると、確かに使い勝手のいい単語だ。女性とか女に差替えて、「女性の未来計画」とか「女心を満たす」としてみると、何かニュアンスが違う。どうしても男性の姿がチラホラするというか。この背景にあるものについてはまたあらためて述べよう。
(つづく)(神谷巻尾)

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