ダイエット・美容や健康に役立つような商品を雑誌などで広告する過程で何があるのかを編集の内側から紹介しよう。
1)編集部ではなく広告担当のシマ
まず広告スペースは編集部ではなく広告担当が編集プロダクションに下請けして作らせたり広告代理店が作ったものをはめ込むだけという場合が多い。編集部が進行管理に使用する台割り表には「AD」という指定が入っているだけである。
客観性を帯びている(はずの)記事と見分けるためには本来「PRのページ」「広告」と入れるのが常識だが明示しない雑誌も結構多い。また医師と歯科医師は医療法69条の定めによって限られた広告しかできないために美容整形外科の広告は記者が取材した形式で「名医」などと紹介して法をすり抜けている。実際は記者にほめまくられている医院や診療所はカネを出している例が多い。
もっともこれらはまだ広告と何となくわかるからいい。問題は実際には「広告企画」つまり広告主がカネを出した企画であるにも関わらず記事の体裁で掲載される場合だ。いかにも編集部が見つけてきた素晴らしいダイエット方法や名医、名インストラクター、サプリメントのように紹介しながら実は広告主丸抱えという記事である。これだけで経営が成り立っているといっていい雑誌さえある。
2)薬事法に触れてはダメ
ダイエットに効くサプリメントなどは大半が食品であって薬品ではない。だから薬のような効果があるとうたうと薬事法に違反する。この点ばかりは編集者も気にしていて広告であろうと少なくとも編集長はチェックするかチェックを指示する。でないと逮捕されちゃうからだ。
大原則として「治る」はダメ。それを強く暗示する表現もダメである。また特定の病名を挙げるのも危険な行為である。医薬品と間違えかねない表記や「学会で発表」なども下手するとお縄になる。
みのもんたは昼間に薬事法違反スレスレの番組をやっている。あれが文字通りスレスレの表現の教科書だ。毎日毎日スレスレの表現で切り抜けるみのという人物は天才である。
「学会で発表」も事実としてそうであり薬効と直接の因果関係がなければスレスレでセーフの様子である(本当はダメなはずだが)。そもそも「学会」など誰でも作れる。また権威ある学会でも発表レベルでは何かを証明したことにはならない。学会発表後もコホート研究などの結果が認められなければ食品の効果としても疑わしい。薬となれば3段階ほどの治験をくぐり抜けなければならない。
この辺を逆手にとった作戦もある。まず適切な使用量などをもっともらしく示して「用法・用量」を明示しなければならない薬と似通わせたり。最近では「食品だからこそ誰でもいつでも手に入るんですよね」などと医薬品にするレベルにありながらあえて顧客のために食品にしていると暗示させる表記もある。
3)モデルのタレントは商品を知らない
とくに実際には「広告企画」でありながら記事風になっているもののなかで問題なのがタレントの存在だ。「○○さんもお勧め」などと紹介されている。大半が旬を過ぎたタレントである。実際にはそのタレントのカット写真を何枚か持ってきて「このカットに合う記事を作りましょう」となる。タレント自身は何の記事に載るかさえ知らない場合が多い。
旬を過ぎたタレントにとってはこんな方法でも露出につながるのでそれなりの意味がある。場合によっては露出を期待して格安ないしは無料でタレント事務所が提案してきたり代理店が持ち込んだりもする。記事内容がダイエット・美容または健康ならば美しいイメージが得られるとの特典もある。旬を年齢ととらえれば「若々しい」というイメージを間接的に表現できる。
もういいや!とばかりに本人も知らない「食品」を「○○さんもお勧め」と書くのはさすがにはばかられるという場合には「○○さん」の写真下のキャプション(写真説明)に商品とつながりがありそうで独立して読めばそうでもないという表現を記す。「健康にいいのが何よりですよね」とか「ダイエットは簡単な方法が一番」などの類である。
タレントが実際の商品を知らなかったり使わないまま宣伝するのは違法ではないにせよ一種の不法行為ではないかという議論はあるにはある。だが実際には野放し状態だ
最近のコメント