編集部合作! ワールドワイド・トイレ事情
●インド編
インド・カルカッタのサダルストリートは安宿が集まる地域として世界中のバックパッカーに有名である。その中でも名が知れた安宿のうちのひとつ、パラゴンに私は泊まっていた。
近くには『深夜特急』で沢木耕太郎が投宿していた安宿・サルベーションアーミーがあった。
私が5年前にインドに旅行したときはこの宿に滞在していた期間がいちばん長かったから、いまでもパラゴンのトイレのことはよく覚えている。インドの他のトイレと比べて特に変わった点はない。つまり、インドにおけるスタンダードなトイレだ。
私が泊まっていたのはドミトリー(何人かとの相部屋)だった。他には日本人ばかりが集まってるドミトリーがあったが、インドにまできて日本人とつるむ心境がまったく分からなかったので、欧米系の人が集まってるドミトリーを選んだ。
水にあたったのか体調を崩している太った女がいて、夜中に何度もトイレに駆け込んでいた。
トイレは水洗ではなく、蛇口をひねって出した水を手桶にため、排したものを流す。トイレットペーパーはもちろん持ち込み。灯りがあったのがラッキーだ。
トイレの広さは日本のものとは特に変わらないが、インドのどのトイレにも共通していたのは、妙な簡潔さのようなものだった。
洋式の便座があるわけでもなく、水をためるタンクもない。ただ中央に和式とほぼ同じ便器と水道、便器の横に手桶があるだけだ。今でもこの国の人たちはトイレットペーパーを持ち歩くわけでもなく手で尻を拭くのだろう。ふと思ったことがあるのは、それはトイレの進化系ではないのかということだ。
いつか資源が枯渇したとき、手で拭く方式がグローバル・スタンダードになる可能性は誰にも否定できない。(宮崎)
●中国編
忘れられないトイレといえば15年前の中国だ。よく知られている中国のトイレといえば、水の流れている溝をまたいで「大」をするもの。「川上」からは当然のように他人のものが流れてくる。
この形態がキツイという人もいるが、僕はそれほど違和感を感じなかった。ボットン便所ほど大量の「大」を見るわけでもないし、前にケツがあるとはいえ、それは銭湯でも同じこと。
ちょっと面白いのは銭湯と同じく「裸のつきあい」がうまれることだろうか。日本からトイレットペーパーを抱えて行ったこともあり、「川下」の人から背中を叩かれ「ペーパーくれない」と頼まれたことがたびたびあった。
これはこれでけっこう楽しい。
むしろ衝撃的だったのは北京にあった水洗便所だった。
中国では珍しくキレイな水洗の洋式便所に大喜びで便器に座った。そのとき一瞬目の入ったのが壁を伝う配水管だった。変わっているのは新聞紙が挟んであること。さして気にもとめずスッキリ出して自分で持ち込んだトイレットペーパーで拭いた。
そのとき不思議なことに気がついた。
ペーパーホルダーがない!?
みんなどうやってケツを拭いているの?? そのとき、やっとシナプスがつながった。配管に挟まれた新聞紙はトイレットペーパー代わりではないか。
グロイものほど見たくなるのが人情。僕はそっと顔を新聞紙に近づけた。随分と長く放って置かれたのだろう黄ばんだ新聞紙に付けられた黒い筋。中にはシミのように一部が黒くなっている紙も。
間違いありません。使った後の新聞紙でした。
それが地面から天井近くまでズラリ。壮観ッス!
便所が詰まるから流せない。でもゴミ箱は置いてない。仕方なく使い終えた新聞紙を折って配管に挟んでいったに違いない。この便所の光景だけは今でも忘れることができない。万里の長城の景色なんかは、けっこう曖昧になっているのに……。(大畑)
●香港編
SARS以来、香港のトイレは清潔を保つように指導されているのか、それとも自主的に行っているのかけっこうキレイらしい。
らしいというのは、SARS以前に行ったことがなく、どんだけだったかがわからないので言明を避けただけである。
さて、香港に住み始めてすぐにあるデパートのトイレへ行った。旧正月前で大混雑する店内とトイレ。日系デパートのトイレだからキレイだろうと思っていったら、入り口をはいってすぐのところで入る人みなトイレットペーパーを少しずつちぎっている。どういうことだろうと思いながら真似してちぎって個室へ入ったらあらびっくり。便座が空いている。そしてそこには黒い靴のあとと、床には液体(たぶん水じゃないと思う)。便座をおろすとなぜか表面がぬれている。一体どういうことだ……。さらにペーパーもないし、すぐ近くにあるゴミ箱には使用済み生理用品やら紙やらが捨ててある。とにかく汚かった。 以前一度だけ、黒い靴のあとに好奇心を抱き、洋式便器の上に乗り、和式スタイルで用をたしてみたのだが、はっきりってしずらい。
それが初めてのトイレ体験in香港であった。
それからいろいろなトイレへ行ったが、明らかに汚いトイレはその頃に比べて減っていったようにも思える。ここでも思えるって書いたのは、トイレ自体が少なくあまり行く機会がなく比較できなかったからである。ホントね、少ないんだよ、香港のトイレ。
香港のトイレで興味深いのは、掃除のおばちゃんが必ず1人は在駐していることと、場所によって鍵がないと使用できないということ。
おばちゃんはセカセカ掃除したり、話したり、掃除したりしている。ガイドブックによると、このおばちゃんにティッシュをもらったらチップ払うとかなんとかって書いてあったのだが、今まで払った経験はない。特に請求もされないし、そもそもカモられたこともない。場所の敷居によって掃除のされ具合が違う(それともおばちゃんの熱心度?)ような気もするのだが、たいがい高級なところはキレイ。
次の鍵がないと使えないというのは、主にレストランのフロアーしかないところや、オフィスビルに多い。場所によっては、曜日によって鍵が必要なところ、不必要なところもある。急に催したときなんかは特に困る。トイレへ走るも空かない。個室どころか、トイレという空間にすら足を踏み入れることができない。
さらにこの鍵が厄介で、だいたい一つの店に一個しかないことが多い。かち合ったら先に行った人が戻るまで待つか、ドアの前で出てくる人を待つかのどちらかしかない。トイレの数が少ない上に、輪をかけ鍵問題。多少の我慢ならできる大人ならまだしも、子供にはあまり優しくないが香港のトイレ事情ということだろうか。(奥津)
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