不景気でスパムメールが……
のっけから滅入る話で申し訳ないが不景気である。
出版界など昔から景気が悪すぎて、多少の不景気なら驚かないが、さすがに今回の不景気は深刻度が違う。
これだけ景気がヒドイと、意外なところにも不況の波が押し寄せる。
先日、編集部で話題になったのは『カイジ』の映画化だった。累計で1100万部を超えるヒット漫画だから映画化されても不思議はないが、雑誌連載から13年をへて到来した不景気が、読み手側のリアリティーが倍増させたことも映画化の要因に思える。
漫画の内容は、保証人となって多額の借金を抱え込んだ無職の青年カイジが、一発逆転を賭けて闇の帝王が支配するギャンブルに挑戦する物語である。ギャンブルの内容はさまざまだが、負ければ残虐な仕打ちが待つ。それでも勝負に身を投じる姿は、大ヒットを求めて本を出版する我が姿にも似る。うーん、怖い……。
もっと意外なことに、不況はスパムメールに影響をおよぼしている。
じつは私のメルアドは、異常な数のスパムメールがくる。以前、既婚女性の恋愛を取材した際に、出会い系に登録しまくった影響だ。それから10年近くたつが、スパムは衰えを知らない。たまに少なくなる時期もあるが、どこに名簿が売られるのか、ある日いきなり復活する。
それでも、いつもは賢いブラウザが迷惑メールとして仕分けてくれるので、まったく目に触れる機会がない。ところが先日、その設定を知らぬ間に自分でいじってしまった。おかげでスパムか必要なメールかを、チェックせざるを得なくなったのだ。
そのとき気が付いたのが、報奨金付きの「出会い」勧誘の多さである。
いきなり旦那が死んで遺産を相続したので、お金をあげるから付き合ってほしい。風俗で稼いだお金を貢ぐので抱いてほしい。バリエーションはさまざま。しかし軒並み数百万円から1千万円単位の「援助」が並ぶ。
サイトに登録した当初、金銭で釣るスパムはほとんどなかったように思う。ちょっと可愛い女性の写真が付き、「必ず連絡してくださいね!」などと書かれたメールが届くだけだった。それがいつの間にか、付き合うだけではなく、報酬まで約束されるようになっていたわけだ。
会ったこともない人に数百万円の資金提供を申し込んでいるのだから、リアリティーなど出しようもないが、業者も工夫はしている。お金を渡す理由を縷々書き連ね、ちょっと陰のある美人女性の写真が貼付されている。さすがに信じる人はほとんどいないだろうが、これだけ同じようなスパムが届くということは引っかかる人もいるのだろう。
金と色欲で引っかける商法は昔からあった。出張ホストの募集に応じてみると、大事な顧客を怒らせたからという理由でカネをふんだくられるなどは、かなり古典的なサギといえる。ただ、こうした“商売”と比べても、スパムのリアリティーのなさは際立っている。
業者が要求しているのは、事務費としての5000円程度。支払えば、すぐに数百万を入金するという。遊び心で支払う人もいるかもしれないが、多くの人は信じてというより望みを託して振り込んだような気がしてならない。
こんな「商売」さえ信じたくなる世相に、なんだか悲しくなってしまった。(大畑)
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