新・初老男のデモ趣味(中編の2)
小権力を握った際の日本人の浅ましさは、裏金ゴロツキ機動隊の醜悪さに良くフィット、晴れた日の富士山のふもとの月見草さえ連想させ、鉄柵に占拠された歩道に思いきりゲロを吐き散らしたくなる。
全国民注視の大ムーブメントと化した、毎週金曜日の首相官邸前の反原発デモ。初参加したのは6月22日。旧知の在日韓国人女性で、筆者編集のエロ漫画誌に、「体験的在日韓国人損得論」なる、圧倒的不人気コラムを長年連載している、Yからの観誘ファクスが契機。同業者だが、男・酒・空手・山歩きにしか興味を示さないエロおばさん。意表を突く社会的目覚めにはビックリ!(山の死の灰汚染への怒り?)。デモマニアとしては当然1度はと考えていた。だが、高円寺や渋谷、新宿などの繁華街と違い、官庁街でデモ&絶叫しても面白み不足との先入感が。自称右翼の街宣車による妨害が頻繁と伝えられた、経産省前の反原発テント見物には是非1度と考えてたが…。ともあれ一見をと、おばさんを含む編集仲間計3人と、現地集合での待ち合わせを。
●6月22日●
“電波送り付け悪徳商法”のNHK(職員平均年収1300万)や朝日“御用”新聞以下(年収はNHK水準)が、まだ意識的にシカトを決め込んでた時期。地下鉄丸の内線構内には、エラソーな機動隊の姿も見られず、逆にデモ参加者が券売機付近でビラまき。心なごむムードだ。国会議事堂反対側の歩道には、既に参加者が延々と(歩道の3分の2の幅を占拠)。4番、ないし2番出口を出たら左折、より首相官邸に近い国会記者会館方向に向かわかねば、リレー演説は聞けない。ただ参加者の集中を恐れた機動隊・主催者の整理係が、右折した外務省・財務省方向へと意識的に導く。初回で素人だったため唯々諾々と従い、かけ離れた場所で退屈な一時を(首相官邸など全然見えない。「再稼動反対!」の叫びにも力が入らない)。お陰で待ち合わせた連中には全員に会えた(翌週からでは考えられない事態)。議事堂側の歩道にはまだデモ参加者の姿はほとんどなく、納税者を不遜にも家畜扱いする、車道との間の鉄柵もまだ登場していない。
官邸に近い方へ移動しようと、4人で歩き出す。歩道は大混雑するので自然と車道に。その時だ。「車道を歩かないで下さい!」凄い剣幕の真っ黄色な声。うるせえドブス婦人警官がと振り返ると、スレンダーでファッションセンスも抜群な20歳前後の美形姉チャン。女の公安なんて珍しいと良く見れば、主催者側の整理係(黄色の腕章)。ただミニパトの婦警並に融通の効かないアマで、俺様のジャケットの袖を掴んで放さない。車の影も形もないのに。過剰警備の一言。多分中学校時代は風紀委員だったのだ。「その綺麗な手を放せ!この上着はブックオフ前橋リリカ店で5000円もしたんだ。破いたらぶっ飛ばすぞ!!」こう一喝をとも思ったが、大人気ないので車道を断固前進。けど小権力を持った際の日本人て、思想信条に関わらず醜い。
4人は離れ離れになりながらも、国会記者会館前付近で無事合流。ただ余りの人の多さに、付近一帯はしっちゃかめっちゃか。「もうどっかに飲みに行こうぜ」との声もメンバーから。せっかく来たんだし、一応はデモ集団(立ってるだけの参加者をこう呼ぶのも妙だが)の先頭まで行ってみようと、官邸方向へ歩き始める。歩道が左折する角にやたら機動隊が張り付いてる。無表情な連中の顔を盛んに携帯で撮影する、空手エロおばさん(実はデモは初参加と)。他の3人は通り抜けられたのに、俺だけ制服警官と私服コンビに阻まれる。「何しやがんだ!」「ここは通れません」「他の連中は通ってるじゃんか!」「………」角の方向から怪訝な顔で俺を見る他の3人。が、彼等の後方を固める機動隊員の、そのまた後ろを見てなるほどと。10人前後の連中が日の丸を掲げて力なく罵声を挙げている。在特会、ないし類したデモ隊が細々と抗議活動を。俺だけプラカードを持ってたので(カット参照)、衝突を警戒しての阻止らしい。在特会に反原発デモ隊を襲わせ、デモ隊をパクるのを得意技とする日本裏金警察。だが今回は、事前に打ち合わせる時間がなかったのだろう。先の中年の私服に言う。「理由を言った方がいいよ。闇雲に通らせないよりか」「い…いやあ」と卑屈な照れ笑い。俺は即逃げるから、絶対に衝突なんかしないのに。
7時前に引き上げ、一番若いM君と「シネヴェ-ラ渋谷」での、『海燕ジョーの奇跡』へ向かう。地下鉄内での会話。「3~4万は集まってるって話だけど」「それはちょっとオーバーでしょう。1万以上は居たかも知れませんが」「俺たちみたいに途中から抜けちゃう奴もいるし、6時から8時の参加者を合計するとひょっとして……」「ああそうかあ」2度もひどい目に遭った割には、悪い印象は抱かなかった。指導者面した奴がいなかったせいだろう。
●6月29日●
この日から1人で参加。筆者は九段下駅から半蔵門線に乗り、永田町で丸の内線に乗り換え、国会議事堂前(現場)で降りる。丸の内線に乗るなり、被り物やプラカードを片手の参加者が車内の方々に。こりゃ前回より増えるだろうと予想。地上に出ると国会側の歩道までデモ隊でビッシリ。左折は困難な感じ。仕方なく右折、へんぴな場所でシュプレヒコールを挙げてると雨が(傘を持参せず)。今夜も「シネマヴェ-ラ渋谷」の『博徒外人部隊』に行く予定。6時40分頃に、やっとこさ4番出口まで移動。階段を降りようとすると、今からデモに参加しようとする人々が、ビッシリと階段の向かって左側部分を埋めている。女子供は勿論、主婦やお爺さんお婆さんまで多種多様。いかに人々が死の灰に恐怖を抱いてるかが、良~く分かる景色だ。列の中にTBSの腕章を巻き、撮影機材を抱いた青年が一人。下っ端にも仁義を切るのが下々の礼儀だ。「オメ-、報道もしねえのに取材してどうすんだよ、ええ!?」うつろな微笑みを浮かべて、じっとうつむく場末の電波女郎。
●7月6日●
この週から裏金機動隊の、更に常軌を逸した過剰警備が始まる。国会議事堂前駅構内を全面制圧、4番出口からしか参加者(乗客)を外へ出さない。どういう法的根拠があっての暴挙? 数もやたらに増えて、方々で口調こそ丁寧だがデモ参加者にまとわりつき、ゴロツキ・地回りも真っ青なしつこい嫌がらせ。トラメで無用な指図を乱発、意図的なシュプレヒコール妨害も。だがデモ隊の数に陰りは見られない。盗人官憲の小姑じみた嫌がらせが、逆に不馴れなデモ参加者に気合いを入れている。方々で参加者をぶつ切りにして(街頭デモでの悪辣手法を応用)、忠犬振りをアピール。あのプ-チンのロシアでさえ、デモ隊は常に路上一杯に広がってるぞ。鉄柵が登場したのは翌週と言われている。が、小規模かも知れないが、要所要所で見掛けた記憶もうっすらと。
連中、ホラも吹き放題。後で考えれば有り得ないが、議事堂前駅は閉鎖されてると大声で。首相官邸前方向に、人を流れさせたくない思惑。主催者側の整理係も、過日のサドっぽい姉チャンこそいなかったが(好きです…)、参加者を遠くへ遠くへと導き、「何よこんなトコに連れて来て!」と、おばちゃんらの反発を買っていた。理由が。中心地を1度離れると、機動隊員共がユーターンを妨害する。悪意はなかったかも知れないが、整理係を官憲の忠実な下部と感じた参加者も多数いたろう。
面倒になり(裏金機動隊の思惑通り!)、『博徒外人部隊』の開映は迫るはで、財務省脇を通って隣の霞ヶ関駅に向かう。付近もデモ隊でビッシリ。ロープで片側に閉じ込めてる様がむかつく。参加者も無視して自由に広がればいいのに、皆さん言うがまま。小権力を握った際の振る舞いと言い、いい面もたくさんある日本人の、最も情けない一面だ(ニッポジンワッカリマセーン!)。周囲では各種団体がビラまき。日頃は違法な妨害に乗り出す機動隊も、とても手が回らない。何でももらう主義なのでたちまち両手が一杯。後で見たら、池田名誉会長に牙を剥く、富士大石寺顕正会のモノまで。慌てて両手を念入りに滅菌消毒した。
結果的に新東京名物、経産省前の反原発テント見物が出来た(地下鉄丸の内・千代田両線の、霞ヶ関駅のすぐ上)。居住も可能そうな立派なテントに驚く。これなら原発ゼロの日まで持ち応えられるよ。無論、カンパはせず。地下鉄入口では、50人前後のカルト教団が集会を……と思ったが演説・反応の口調から、旧来の左翼系セクトと推測(間違いなら御免なさいよ)。官邸周辺のデモに参加した後だと、北朝鮮や創価学会のマスゲームを見物してるような錯覚を。いかなる理想に燃えてようが、人々が一致団結した姿は気持ち悪い。ただこうなると、来週も来ない訳にはいかない。(塩山芳明)
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