鎌田慧の現代を斬る/第160回 再稼働にむかう原発を止めろ(2)
●地元の反対で再稼働延期
再稼働に対する抑止力の1つとなっているのが、地元公共団体首長たちの反対だ。危険施設原発にたいする住民の不安を、カネをばらまいて抑え込んできたのだ。三村申吾青森県知事に代表されるように、カネ稼ぎのため危ない施設をどんどん受け入れてきた自治体のトップも少ない。
しかし福島原発の事故によって、住民の命をカネと交換していいのかという意見が強まってきている。電力会社と政府の思い通りに動かない自治体もでてきた。
今回の再稼働に関しては、泉田裕彦新潟県知事と広瀬直己東京電力社長のやりとりが注目を集めた。
知事 地元に説明もなく審査を決断したのは。
社長 地元軽視と受け取られかねず、反省しないといけ
ない。
知事 端的に聞く。申請をなぜ急いだのか。
社長 もう少しやり方があったと思う。
知事 もっと聞きましょうか。年度内の黒字化を意識し
たか。
社長 絶えず意識している。3期連続の赤字は避けたい。
知事 昨年、安全と金とどちらが大切か聞いた際、「安
全」と答えて頂いたのはうそだったのか。
社長 いえいえ。
知事 東電は約束を守る会社か。
社長 そういう会社でありたいし、そう毎日やっている
つもり。
知事 安全協定は県と東電との約束。事前了解なしに申
請はしませんね。
社長 (申請と)並行してチェックしてもらうのも可能
なのでは。
知事 事前了解とみなせない。約束を破るのか。
社長 同時並行的に進めて頂くのは。
知事 信頼できない。
社長 規制委員会に審査頂くのも、安全を確保するため。
知事 事前了解をとってください。
社長 ですので。
知事 話がかみ合わないなら、どうぞお引き取り下さい。
約束を守る。これがスタートライン。
社長 今回の状況を鑑み、相談させて頂きたい。
知事 相談できる相手になってください。
(『朝日新聞』2013年7月6日)
地元の了解を得ず、強引に再稼働にむけて動いた東電側が知事に平謝りしている様子がわかる。結局、再稼働は申請することを見送ったという。
●再稼働2つの問題
再稼働の基本的な矛盾は、大きく2つあげられる。
「廃棄物の処理問題」と「労働者の被曝の問題」である。
廃棄物の処理については、どうするのか未解決のまま推移している。原発の敷地内でも8割以上が満タン状態であり、六ヶ所村も満タンまで長くはない。原発を稼働すればするほど、行き詰まっていくのが現状だ。
そうした廃棄物を再処理して無理やりもんじゅに使おうというプランを政府は捨てていないが、もんじゅの稼働は事実上不可能で破綻は見えている。
労働者の被曝については、原発が稼働する限り止めることができない。事故が起これば、さらに高い被曝での労働を求められる。労働者の健康を奪ってまで原発を維持する必要性はない。
また被曝限度を超えて労働者を働かせようとする不正も、原発では日常的に起こっている。7月には作業員の線量計を鉛のカバーで覆い、労働者の被曝量を少なくみせかけようとした経営者が略式起訴された。この社長は、「線量の高い現場だったので、警報が鳴るのを遅らせ作業員の不安を和らげるためにやった」(『朝日新聞』2013年7月3日)。数値をごまかして、労働者を働かせる。残念ながら労働者もそれに従うしかない。生活のため線量の高い場所に派遣される。
また労働者の内部被曝について、479人の被曝量が不適切に算定されていたことも、7月にあきらかになった。そのうち6人は5年で100ミリシーベルトという限度を超えていたことがわかったという。最大で48.9ミリシーベルトも超えていたというから大問題だ。内部被曝量を算定する手法が間違っていたことが原因と報道されているが、あきらかな被曝隠しだ。
被曝労働者はなかなか労災認定されない。100ミリシーベルト以下でも、ガンなどで亡くなった被曝労働者も多い。彼らの健康をどう守っていくのか。吉田福島第一原発部長のガン死は、暗示的だ。
は、非常に重要な問題だ。
9月になれば、またすべての原発が停止する。年内いっぱいは原発ゼロの状態がつづくだろう。こうした状態を継続させたくない政府と電力会社が、再稼働を焦っている。
これからの運動課題は、再稼働反対の闘争をどうやって盛り上げ、原発ゼロにたもっていくか、である。それは安倍政権の方針とまっこうから対立する。憲法改悪と原発再稼働をもくろむ安倍政権に立ち向かっていかなければ、日本の未来はない。とにかく声をあげることからはじめよう。(談)
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