元サイテイ車掌の田舎日記/ジャズが街にやって来る
日野皓正が酒田にやって来る。
昨今のジャズシーンにはとんと疎いおれだが、サックスの渡辺貞夫と並び日本を代表する国際的なトランペッターだと思う。地元庄内出身のドラマー磯見博のトリオとの共演だという。そればかりか、ニューヨーク在住の超一流ギタリスト増尾好秋がこのライブのためだけに駆けつけるというのだから、ジャズファンにはたまらない。酒田に限らず、仙台や岩手県、そして東京からもファンが続々とやって来るのだろうか。
日野皓正といえば、おれにとって忘れられない思い出がある。これまでに日野皓正を観たのはたったの一回切りだが、それが高一の時だった。とにかく日本がひっくり返るような凄まじい音を出すという噂を耳にし、ジャズには全く興味がなかったのに一度観ておかなければ気が済まなくなり、その頃は新幹線などなくて、鈍行で3時間はかかる山形まで、学校が終わってから観に行ったのだった。
ライブは広い山形市民会館の後ろの方の席で、曲もさっぱり分からず、衝撃や感動どころか何がなんだか分からないままに、時間と共に終了した。それこそ、ただそこに行っただけだった。
そんなことより、翌日は日曜日だったが、俺には重要な用があったのだ。その頃のおれは新聞配達のアルバイトをしていたのでした。こんな事情があるのに、いくら若気の至りとはいえ非常識で許されることではないが、泊めてもらった親戚に起こしてもらい、とにかく、初電で酒田に戻った。が、着いたのは8時を回っていたと思う。仕方がなく、配達は9時頃になった。
たしか、60~70軒ほどの配達だったが、幸いにも? 怒られたのは当時社会党の代議士だったS・A宅だけで、変な時間に配ったせいか外に出ていた一軒の家から声をかけられ新規講読の依頼を受けたのだった。所長の大目玉を覚悟しつつ販売所に戻ると何もいわれず、逆にその新規のお客さんのことで褒められてしまったのだった。早朝から電話での問い合わせやお叱りやらで大変だったろうに。
ちなみに、バイトをしていた理由は、好きなビートルズなどのレコードを買うためだった。ま、そんなバカげたことがあったというわけだ。
酒田のコミュニティ新聞によれば、「(ミュージシャンは)みんな自己主張が強く、絶対に無難な演奏では終わらない。前代未聞のライブになることだけは間違いない」と。また、プロデューサーは「新しいスタイルとして見せるジャズを提案する」とも。
これだと、とりようによっては、演奏は全く意気が合わず、自分勝手でメチャクチャになりそうだと受けとれる。こんなんじゃ、聴きに行く人がいなくなってしまいそうだが……。
先日、畑を貸してもらっているおじさん(80才近い)の家に行ったら、何とこのライブのチケットが置いてあるではないか。聞けば、「日野ナントカは名前しか知らないが、公演などで酒田に来る人は殆ど見に行っている」と自慢していた。ん!? 何だか訳が分からないが……。でも、いいな~。おれも行きてぇ。(斎藤典雄)
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