日曜ミニコミ誌!

2009年12月13日 (日)

日曜ミニコミ誌!/第9回文学フリマに行ってきた

 去る12月6日、蒲田の大田区産業プラザPiOで第9回文学フリマが行われた。参加サークルは400弱。交通・広報の面から利便性の高かった秋葉原より蒲田に会場を移して2回目だ。先回も今回も、出展者として参加したので朝から晩まで会場を眺めることができたが、入場者数は前回とほぼ変わらない印象を受けた。売れ方もほぼ同じだ。11時から16時までの5時間勝負だが、前半は常連さんからの品定めの視線に耐え、中盤は一度まわってきて目星をつけた人が買ってくれ(これが一番嬉しい)、後半では売り子の方々が自らの店を離れて遠征してくる。初心者とおぼしき、うろうろしているだけの方も後半に多く、売り子らしく雑誌の説明を何度もすることとなった。

 うろうろするのも仕方がない。だって400サークルもあるのだから。どこからどうまわっていいか分からないだろう。案の定、壁際にはお客様方がズラッと並び、サークル一覧をパラパラめくっては興味のありそうなところを見つけようと必死になっていた。

 我らノンフィクションのブースはテーマが分かりやすくって気楽である。数も少ないし、サークル一覧の案内文を見ればどんな本か一目瞭然、興味がなければ行かなきゃよい。興味を持ってくれた人は、たいてい買ってくれる。しかし文芸誌は案内文を読んだだけでは雰囲気くらいしか分からない。行って読んでみるしかない。しかも出展者の8割を占める…。

 そこで差をつけようと…したのかどうかは分からないけれど、今回の文芸誌は巻頭に著名人のインタビューを冠したものも多かった。それってミニコミとしてはどうなの? と年寄り臭く説教しそうになったが、そのサークル自体はミニコミを目指しているわけじゃないのかもしれないし、単純に好みの問題なのでやめた。自分の頭が固いことはよく分かっている。だから未だに出版をやりたいとしがみついているのだ。

 著名人インタビューにせよ、全体のデザインにせよ、レベルの高い文芸誌が本当に多くて、プロなのかアマチュアなのか本気で悩むところだった。よく見るとプロの小説家や批評家とされる人がゲストとして書いていたりするし。だとしたらもう、一般書店で売られている雑誌との違いは、少部数流通か取次流通かだけだ。大きな出版社が短期間で作る広告にまみれた雑誌と、文学好きの人達が時間をかけて採算度外視で作る雑誌、取り上げる内容が同じであれば、どちらが面白いかは考えなくても分かるだろう。それは大変喜ばしいことだ、喜ばしいことなんだけど、何か……つまらない気もする。それはひとえに、やはり頭が固いから、なんだろう。マスコミと同じ土俵に上がろうとする姿勢が見える雑誌も多々あって、何だか残念な気がしたのだ。私達はマスコミの一段下にいるわけじゃなくて、むしろ違うフィールドにいる、だからまともに競争しなくていいのに。

 プロの方がミニコミに書く文章は、いつも読む氏の文章より熱のこもったものに思えた。それが手作り感や少部数という魔法にかかってこそのもの、ではないと信じたい。そこに希望が見える気がするから。(奥山)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年11月24日 (火)

火曜なのに日曜ミニコミ誌!/新潟発信『まちの日々180』

 学生時代に散々歩いた街、新潟に行ってきた。
 田舎者だからか、新潟は文化的な街だと勝手に思っている。県道沿いを車で行けば、金太郎アメのような大型全国チェーン店舗が続々と続くのは他県と比して差はないけれど、アーケード街でふらっと入る小径、立ち寄る古本屋、若者好きするカフェバー、何となく手づくりの匂いがする美容室等々に、静かな文化の息づかいを感じるのだ。その要素は、スタイリッシュな店内だったり、ざくざくと置いてあるフリーペーパーだったり、店主のまっすぐな姿勢だったりと様々だ。
 どうしてそう思うのが田舎者かというと、新潟しか知らないからだ。きっとそんな小径や古本屋や美容室は、他県にごまんとあるのだろう。

 さて、火曜なのに急遽ミニコミ誌の記事を書きたいと思ったのは、新潟でたいへんキュートなミニコミ誌に出会ってしまったからだ。『まちの日々180』vol.1。まさにそんな小径や古本屋や美容室を、大事に切りとって、見開きにおさめる。老舗喫茶店のオーナーにインタビューする。「近所」についての、静かに熱い語らいがある33ページだ。

 こんな少ないページの中で、4人の執筆者が白紙を彩っている。どの文章も美文で、テーマは違えど文章のテンションが揃っているのが素晴らしい。こんなに統一感のある執筆陣は、どんな雑誌でも見たことがない。新潟という1つの土地がつくるテンションなのだろうか。どのページを開いても、冬の晴天のようなすがすがしさと上品さが漂ってくるようなのだ。

 後記によると、この雑誌は『みなとまちにいがた・月刊まちの日々』というフリーペーパーの別冊であるらしい。WEBサイトもこまめに更新されていて、街への愛が伝わってくるような丁寧な仕上がりに好感が持てる。協力団体としてあがっている「みなとまち新潟倶楽部」のWEBサイトも同様だ。新潟に行くときには、ぜひガイドとして役立てたいサイトである。

 一見気ままに書いているようで、ピシリと整った無駄のない文章は、心まで漂白するよう。最近復興を頑張っている、かみふるまちの古本屋、「ワタミチ」にて購入。500円(税込)。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年8月23日 (日)

日曜ミニコミ誌!/コーヒーのおともに『はなうた』1号

Hanauta  初めて見たとき、企業の宣伝チラシかと思ってしまった。思い浮かんだのはフェリシモのカタログと資生堂の「花椿」。デザインの美しさに興味をそそられ、カタログと理解しつつも誌面に惹きつけられてしまう、そんな力がどちらにもある。『はなうた』は素人離れしたつくりと、ミニコミとしての魅力を持ち合わせた雑誌だ。

 画像を見ていただくとわかるが、販売時にはこのように冊子が紐で縛られている。紐をとくと、その先端が冊子にくくりつけられており、栞として機能することが分かる。この時点で「ニクイ」という言葉が出てしまう。そして表紙にくるりとあいた円形の穴から覗くのは、靴。表紙をめくると、お行儀よく並べられた革靴がそこにある。

 一号のテーマは「深緑」だ。深緑色とリンクした衣・食・住の世界を紹介しているだけではなく、レビュー対象の映画パッケージ、本の装丁、CDジャケットまで全て緑色と徹底している。しかししつこくない。女性らしさを感じさせる繊細なデザインが、こだわりの強さをゆるりとカバーしているのだ。こんなに美しく、きびしく、雑誌というものを追及しているのに、あくまで個人で楽しんでいるという姿勢が素晴らしい。全力で楽しんで、全力でつくっていく、そんな豊かさを確かに伝えてくれる『はなうた』。2号まで出ている。(奥山)(■1号、B5判32P 定価630円)

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2009年7月19日 (日)

日曜ミニコミ誌!/『界遊』

 5月10 日。文学フリマに参加した際、人だかりの出来ているブースを見つけた。雑誌はあっという間に完売になり、それでもなお行き交う人は絶えず、コミュニティ・ゾーンとして機能していた。ブース名は『界遊』。同名の雑誌を発行するサークルだ。この活気はただ事ではないと、代表の武田俊さんにお話を伺った。

ーーまずはこちらの『界遊』という名前なんですが、どういった意味が込められているのでしょう。ホームページを拝見すると「世界と遊ぶ文芸誌」というキャッチがつけられてますね。

武田さん(以下T):ジャンルの境界を越えて遊ぼうという意味です。僕らのキーワードの1つとして「対話」があって。それは『001 創刊号』で大きく取り上げた高橋源一郎の「小説のことは小説家にしかわからない」(『文藝』06 年冬号、保坂和志氏との対談にて)という発言に大きく影響されています。このような発言を小説家自身がしてしまうという問題を考えたいと思いました。小説は、本来は読者のために書くものでしょう。物書きと読者との有機的な関係を「対話」として記録できればという目的があります。小説、詩、漫画など表現には様々あるけれど、ジャンルごとの行き来がないという事態に不健全さを感じて、じゃあ僕らは一歩外に場所を設けて色んなものを取り入れていこうというのがコンセプトです。

ーーネット優勢の中、雑誌という形態を選んだのは何故ですか?

T:「対話」がキーワードならば、SNS やチャットなどがその機能を果たすのでは、という考え方はあります。ただ、無償で受け取るものは情報でしかないと思うんです。僕らは受け手に情報としてではなく作品として受け取って欲しい。そして、これは当たり前過ぎて気後れしてしまうのですが、やはり本という形態に愛着を持っているから、という部分もあります。なので、紙の上で記録したいという思いは強かったですね。
ただ、雑誌といっても「ミニコミ誌」を作りたかったというわけではないです。『界遊』を作りたかったんです。好きなモノばかりではなく様々なモノを取り上げる雑誌は、ミニコミ誌としては作りづらい。開かれた視点でみんなに届けようという姿勢があるので、商業誌に対してのミニコミ誌という態度では限界があります。「世界と遊ぶ」ためにも、形態に拘らず多くの人に届けたいと思っています。
『001 創刊号』の時は何もかもが初めてで大変でした。とくにDTP のソフトが使いこなせなくて、デザインの基礎も分からないままにガンガン詰め込んでしまいました。

ーーでも『001 創刊号』(08 年10 月)に比べて『002』(09 年3月)は格段にレイアウトの腕が上がっているように感じます。中身も、まさにジャンルを越境して豪華ですね。古川日出男さんのインタビュー記事のあとにアニメの特集、さらに漫画家の岩岡ヒサエさんまで登場してます。

T:『001 創刊号』を完成させた後、すぐに『002』の制作に取り掛かったんです。「もっと開かなきゃダメでしょ、世界と遊んでないじゃない」と感じる部分もあったので。先に言った高橋源一郎の発言について言及する記事が多すぎて、これでは小説に関心のある人にしか届かないんじゃないかと。このままではいけないと。『002』の制作は急務でした。そして文芸の枠も越えて漫画やアニメの特集を組みました。読み手はそのうちの何かに興味があれば、その記事を読んだついでにと、今まで自分には興味のなかったジャンルの記事も読むでしょう。そうやって読者の興味が広がっていく環境として機能していたら嬉しいですね。そのためにも、購買意欲が沸くようなアートワークとしての格好良さももっと追求していきたいと考えています。

ーーこれからの構想は。

T:『003』を7月末に発売予定です。興味を持ってくれたデザイナーさんが表紙まわりをデザインしてくださることになったので、ぐっとリニューアルしてお届けできると思います。
今回は人物ではなく、「奇書」というワンテーマで特集を組んでみました。やっぱり人は不思議なものに対して、好奇心を持つ生き物だと思うんです。そこで古今東西の「奇書」の書物としての魅力を伝えられたらと考えました。また今回は、批評家の田中和生さんをはじめ、宇野常寛さん、速水健朗さん、辛酸なめ子さん、青野春秋さんなどから寄稿を頂いています。

お笑いの企画を組んでいて、コントも言語表現ですのでその分析などをやっています。表現全体で考えれば広い世界なので、色んな企画が出来ますよね。これからは他のジャンル、例えば美術などとも関わりを持っていきたい。人と人をつないで世界で遊べるシステムを作ることができればと思っています。
ほかには、この『界遊』は私が大学3年時に立ち上げたのですが、現在ではメンバーの半数が社会人です。なので、学生の作っている雑誌というのではなく、界遊、という雑誌名だけで手に取っていただくことが目標で、そのためには雑誌だけではなく、対談イベントなど外での活動も積極的にやっていきたいと考えています。

『002』にある古川日出男氏のインタビュー記事は、他の文芸誌に全く負けない逸品。プロの小説家としての古川氏の気概が、これでもかとばかりにあふれている。…かと思うと特集の最後、古川氏に様々な犬の顔へのコメントをもらっていたりと、やはり通常の文芸誌とはひと味違ったチャレンジ精神がかいま見える。もちろん八人の編集者が織りなす小説や俳句、ごま油のレビュー(!)などもユニークで読み応えのある逸品。

(■B5判、800 円。取り扱い店舗はこちら→http://kai-you.net/)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年6月21日 (日)

日曜ミニコミ誌!/小金井は宇都宮線だもん 9回目

 『小金井駅は宇都宮線だもん』。呟くような主張だが、これがミニコミ誌の名前だ。東小金井、武蔵小金井など「小金井市」のイメージが強い小金井だが、ズバリ「小金井駅」があるのは宇都宮線。たしかにそう。

 B級グルメやサッカーについてなど日常的な記事が多いのに、そこはかとなくハードボイルドな香りが漂う本誌。どんな思いをこめて作っているのだろう。編集人の河田ソム夫さんにお話を伺った。

ーーこの雑誌を作ろうと思ったのは、何がきっかけなんですか?

河田さん(以下K):ミニコミ自体は6年前からやってて、転職をきっかけに辞めてしまったんです。でもまた余裕が出てきたら、書きたい欲求が高まってきて。普通に仕事をしてるのつまらない、お給料も低い。何かライフワーク的なこともしたかった、と。
あとは普段、労働組合で活動をやっていて、機関誌の編集として硬い文章ばかり書かされているので、その鬱屈をミニコミにぶつけているという面もあるかと。エアポケットが欲しかったんですね。

ーーテーマが毎号変わりますよね?

K:テーマを入れるようになったのは7回目(7号)からです。発行元を「サムりゃい製作所」としていますが、「俺達は現代のサムリャイ(=侍)なんだ」という主張から始まってるんです。現代版侍というのは、ようは収入も人に誇れる何かもなく屈折しているマイノリティのこと。正式にいえば浪人とかでしょうけど……いや、浪人ですらないですね、腐っても武士なんだから。するとただの町人ですね、仕事もしないで昼間っから飲んだくれてるような。
 そのコンセプトを作ったのが7号で。刀持ってない、給料安いくせに酒ばっかり飲む、もてない、もててもネガティブだからすぐふられてしまう、成長期をとっくに過ぎてるのに大飯喰らい。しかも酒も飲むから燃費悪い。それが「サムりゃい」。

それから8号の「旅」を経て、新しく出た9回目(9号)のテーマは「子ども時代」です。僕の他に3人の方が自分の子ども時代について語ってくれました。一人だとどんどん視界が狭くなってくるから、他の人に書いてもらうのは楽しいですね。この雑誌は趣味もあってサッカーに関しての記事が多いですが、今回は「フットボールファン柴犬戦線」という連載に「格差社会の直中で」というテーマを入れてみました。スポーツ選手の年俸が何十億、という事実をどう思いますか。市民生活から全くかけ離れてるでしょう。スポンサーをみれば大手の会社が出資してるわけで、でも不況だといってその会社がバンバン雇用をきったりしている。リストラされた人がテレビ見て応援しているスポーツ選手をバカ高い年棒で支えてるのが、その人がもといた会社だったりするわけです。これだけセーフティネットの整備されてない日本で、我々がどう位置づけられているかが、特にこういった状況を見てるとはっきり思い知らされるわけですよね。
 あとは、「水曜どうでしょうごっこIN坂戸の街」という記事があるんですが、これは徹夜で飲み明かしたあとに埼玉県の坂戸駅に行って立ち食いそばを食べよう、という企画です。埼玉って地方のグローバルに流されてしまっている土地で、個人の店舗がチェーン店にどんどん押されてます。そんな激戦区に小さい立ち食いそば屋がある。個人経営の店舗を見てみたい、あとは何もなくて寂れた街だけどね、というのを書きたかったんです。

ーー60ページのボリュームで300円というのがかなりの衝撃なのですが。

K:原価割れしています。おおざっぱに考えると原価は400円位なので、定価を500円にすれば元は取れるんですが、敢えて300円にするところに自信のなさが現れています。趣味でやっているので、売上重視ではありませんしね。読んでくれてる昔からの知り合いも、お金のない人が多くってあんまり高くはできないという事情もあります。先号が200円だったんですが、それすらも出せないと。いたたまれなくて、結局差しあげちゃうことも多いです。

 ハードボイルドの匂いがしたのは、身近なところに社会的な問題を見つけて切り込んでいく河田さんの、ブレない姿勢があったからだと確信。こうなると、次回も楽しみだ。次回のテーマは「酒」とのこと。今秋に発行予定。

(■「小金井は宇都宮線だもん 9回目」60P 300円/A5判/模索舎・タコシェ・浦野商店・イレギュラー リズム アサイラムにて発売中)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年4月26日 (日)

日曜ミニコミ誌!/パンクなスパイスを日常に 『Kathy zine』

 最近、模索舎様にお邪魔したときに「売れてるよ!」とすすめられた『Kathy zine』2号。鮮やかな緑色に外国産のネコの写真をあしらった表紙が印象的で、輸入物のファンジン(好きなアーティストについて綴るミニコミ誌)を彷彿させる雰囲気。ページを開くと、一瞬にして北欧の少女の部屋にトリップしたような気持ちにさせられた。繊細にして強い意志の感じられる文章。この雑誌を作ったのはどんな人達だろう? すぐにコンタクトをとって、メール形式での取材をお願いした。

Kathy_zine 写真は2号(2008年10月発行)。
創刊は2007年3月。
1、2号ともに500部ほどの発行部数。
作っているのは、チームキャシーの3人(ミャーザキさん、ダーティさん、バニーさん)。
このたびは、ダーティさんが応じてくださった。

-まずは、このzineのコンセプトを教えてください。

 北米のパンク・カルチャー(特に90年代初頭のライオット・ガールとクィア・パンク)のファンジン。とにかくファンなので楽しくやっています。 雰囲気としては、口に出すだけで笑みがこぼれてしまうようなバンド名を考える気持ちで。例えば、これは実在するバンドの名前ですが、“ポンポン・メルトダウン”(「ポンポンがシュワーと溶けていく」っていう意味)みたいな。

-このzineを作ろうと思ったきっかけは、なんですか?

 ひとつには自分たちの思うパンク・ジンを作ろうと思ったから。たとえばアーロン・コメットバスという人が作るジン『コメットバス (Cometbus)』はあこがれのジンのひとつです。このジンは80年代初めにカリフォルニアのハードコアパンク・シーンを紹介するファンジンとして始まったのだけど、年が経つに連れて次第にレコード・レビューやインタビューなどが無くなっていき、広くパンク・シーンに住む人たちのライフスタイルについてを日記のような形式で語るようになっていった。つまり何が言いたいかというと、音楽のジャンルとしてだけではない、もっと広い意味でのパンクを考えたかった。ジンはもっともわかりやすい形でそういった日常的な題材が扱えると思っています。日本にもその名も「Expansion of Life」というジンがあって、その内容にもまさにこのような姿勢がはっきりと表れています。なんていいタイトル!

 もうひとつには、自分たちが興味を持っていることを同じように好きな人と知り合いたい、もっと友だちが欲しい、と思ったため。そして、「これを見た人たちが〈何だこれなら私でもできる〉と思ってくれてそして実際に始めるため」(これはザ・パンクスというバンドの言葉)。実際に、Kathy zineは発行部数の少なさの割には(皆さん、まずは見つけてくれて本当にありがとう)、たくさんのリアクションをもらっている幸せなジンです。手紙やメール、手作りの物を送ってくれたり、感想をジンにしてくれたり、「私もジンを作ってみたい」と言ってくれたり、そしてとうとう(私たちのなんかより全然すごい)ジンを本当に作っちゃったり。そんなの信じられる? 

-私の手元には2号があるのですが、海の向こうの人についての特集が半分、私的ネタ半分というスタイルがたいへん面白いと思っています。構成はどのように決めるのですか?

 3人の日常生活のおしゃべりの中から何となく特集が決まる。そのあと、1人がいばって仕切ろうとするが実際には誰も言うことを聞かず、それぞれが好きなことをやる。だから出来上がってみるまで自分以外の2人が何をしているのかほとんど知りません。構成されているように見えるとすれば、それはすごい奇跡、嬉しい!

-とくに2号後半のzine特集は、いままで日本では見たことのない分類と紹介の試みだと感じています。どなたが企画され、どのように資料を集めて、書かれたのでしょうか? 

 2号では、1970年代以降のパンク・カルチャーから生まれたジンの歴史を年表風にたどっています。この号で特集したミシェル・ティーという作家は、いわゆる文学シーンから出てきたのではなく、ジンの歴史から生まれてきたような人。内容にもスタイルにもそれが反映されていて、彼女のバックグランドを知ったほうがより作品を楽しめると思って作りました。ティーは前述したコメットバスのような、生活全般に拡張されたパンクをまさに体現している作家なので。あと、このページはチーム・キャシーのミャーザキ君が単独で作ったページです。

-日本人離れしたレイアウト感覚が素晴らしいと感じます。どなたのレイアウトなのですか?

 私たち3人の中には、特にDTPを勉強したり得意としている者はいません。Kathy zineの2号については、自分の執筆したページのレイアウトを各自が担当しています。他の2人は苦手なコンピューターを使って悪戦苦闘しているようですが、私(ダーティ)はそれはあきらめ、いつもはさみとのりを使って手で作っています。もともとポートランド(ジンン・カルチャーが盛ん)でよく作られているような切り貼りのジンが大好きだということもあるし、私たちのようにコピー機で刷る場合には切り貼りレイアウトのほうが断然いい感じになると思っています。

-最後に、次号のPRなどありましたら、お願いいたします。

 Kathy zineの3号についてはまだおぼろげな形しか見えていません。それぞれが他のジンを作ったり、友人のなみちゃんの作る超絶下品ロマンティック・ジン「Romangetic Island」なども発行していますので、ウェブサイトをチェックしてみてください。(http://www.popdrome.com/)  また、Sweet Dreamsという日本のインディ雑誌にも書かせていただいているのですが、チーム・キャシーのページがいちばん退屈なんじゃないかなーと思ってしまうほどすごく魅力的でユニークな雑誌なので、ぜひ! あと、全然自分たちが関わっているわけではありませんが、『てくてくBoo zine』という日記風ジンは本当にすばらしいです。これを作っている石川彩矢さんは、まさに日本のアーロン・コメットバス! 皆さんぜひ!

(■1号 A5判、88頁、300円。2号 A5判、92頁、500円。Lilmag store、irregular rhythm asylum、模索舎、ガケ書房などで入手可能。「常に置いてもらっているわけではありませんので、在庫についてはお直接問い合わせください」とのこと。連絡先は→info@popdrome.com
(奥山)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月22日 (日)

日曜ミニコミ誌!/たぶん日本初、葬式ミニコミ『葬』

Sou1  「葬儀についての、わくわくするようなミニコミを作ってみたかった」というのがこの雑誌のはじまりだ。なぜそう言いきれるかというと、自分が関わっているから。発刊の辞に書いてあるからという説もある。たぶん日本で初めての、葬式系ミニコミだ。
 昨年誕生したばかりの同誌、まだ1号しか出ていない。1号の見出しは「巻頭白黒 お葬式DIY やってみようよ区民葬」「超簡単!プチ祭壇づくり」「喪服のキホンと着ヤセ塾」「葬式オンシネマ」「ビジュアル系ばちあたり歎異抄」「わたしのまちのお葬式」など。葬式の段取りを自分でやってみよう、そうすればあんなムダもこんなムダも省けますよという実用記事が半分で、あとの半分は寄稿コラム・小説、漫画、ルポで構成されている。

 ふざけた表紙だが(南陀楼綾繁氏曰く「ショックを受けた」らしい…又聞き)中身はいたってマジメで、印象に残るように絵をふんだんにあしらっている。「印象に残るように」というのは、「その時、ふと思い浮かぶように」という意味だ。いざというときに動ける喪主というのは少ないはずだ。何かしなければならないことを知ってはいても、片付けなければならないことから順番にやっつけていくとまったく全体像が見えなくなっている。気づくと莫大な金を支払っていて、「葬式は高い、とにかく高い」というイメージしかなくなってしまうのではないか。
 そんな認識がまかり通っているから、「葬式をやる金がない」といって親の遺体を棄てたりするのである。葬祭扶助をもらおう! という頭すらない。それは、チラっとでもそういう情報に触れる機会がなかったからなのではないか。触れないのは、必要ないと思うからだ。必要ないと思うのは、親が明日死ぬとは思ってないからだ。もちろん誰も思いたくはないだろうが、いつかのためにそういった知識を仕入れておくのは、悪いことではないのでは?

 でも、巷に溢れている葬儀関連の本は、作法や手続きに重点を置いた実用書ばかり。「いざ葬式に向かう」人に便利ではあろうが、若い人がパラパラめくるには面白みのない作りだ。かといって軽く仕上げようとすると、儀式系、グロ系の雑学ばかりが勝って、実践書としては参考にならない。

 そんなわけで、めくるのは興味本位でいい、でもいざという時ふっと頭に浮かぶような読み物的実用書を目指したのが『葬』だ。リスペクト『ゼクシィ』×『暮らしの手帖』。
■40ページ440円。取り扱い店舗はこちら(fire foxをお使いの方、表示をunicodeに設定していただくか、Explorerをお使い下さい。)
(奥山、小松)

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2009年2月22日 (日)

日曜ミニコミ誌!/情熱と実験の果てに『つみほろぼし』

 「自由と進歩」の建学精神をもとに、「自立型人材」の育成を教育理念に掲げている法政大学。同学のサークル「嗚呼!! 情熱実験つみつくり」には、まさに自由・自立の精神が溢れている。白衣に身を包んで興味あるテーマの実験を行い、検証をしてレポートにまとめ、冊子『つみほろぼし』にして学内に配布するのが、彼らの活動だ。このたび『つみほろぼし』を読む機会を得、内容をより詳しく知りたいと感じ、サークルから会長・前代会長・会員3名・OB1名に参加していただき、お話を伺った。

奥山(以下O):「嗚呼!! 情熱実験つみつくり」というのは、全体がサークル名なんですか?

前代会長(以下Z):そうです。サークルの創設者が、辞書を引いて好き勝手に決めたサークル名です。ただ、「嗚呼」はあらかじめ決まっていました。「ああ」だと、50音順サークル一覧で一番はじめに配置されるでしょう。創設メンバーは3人、結成から10年。OBと現役メンバーをあわせると25名ほどの所帯になっています。

O:企画と実験理念を立て、そのための実験方法を作って皆で実験するというのが活動ですよね。例えばHPに「人は見た目が9割実験」がありますが…

OB:『人は見た目が9割』(新潮社新書、竹内一郎)という本が売れた頃の企画です。大学の規制が厳しくなり「不審者に気をつけよう」と言われることが多くなったので、大学が言う不審者とは? どういうことをすれば、不審者として認定されるのか? という企画のもとでの実験でした。各自ヘンな格好をして大学界隈を歩きました。スキンヘッドでサングラスとスーツで素振りしてるとか。

Z:これは「危ないから」と通報され注意を受けたので、今度はバントでそっと素振りをしてみました。そうしたら怒られなかったので、バントは「安全だからセーフ」という検証が出来たと。

会長(以下K):大学当局の放送って他にも面白くて、「歩き方に気をつけよう」とか。

会員M(以下M):横に並んでじゃまにならないように」とか「食器をきちんと片付けましょう」とか、「ボランティアをしましょう」とか。

Z:本来なら自発的にやるはずのボランティア行動を強制されているような気がしてならない。そんな疑問から「ボランティアをやる気のないものがすると、どのような結果を生み出すか」という企画を実験したこともあります(「アンパンマン的、あまりにアンパンマン的実験」:『2008年自主法政祭号』)。「実験主義」「権威打破」「情熱をカタチに」という三大理念があって、笑える企画を行う上でその3つを満たさなければならないんですが、抽象的な常識や権威を皮肉ろうというのが権威打破。これが3つの中で一番大きいんですね。プラスもう一つの要素が入って、「結局ショボい」というのも大事です。最新科学に基づいたアプローチではなく、自分たちで出来る範囲でやると。毎年やっている「年末恒例ママチャリレース」も、車ではなくママチャリを使うことで拝金主義的な世の中に問いかける。徹底的に現地集合・現地解散というのもポイントです。旅行サークルなどでは現地に行くまでの行程も含めて楽しむのが目的といえますが、我々は実験を目的とするサークルなので、あくまで現地で集まる。

O:夕張や宮崎など、かなり幅広い範囲で実験をされていますね。

Z:実験は出来る場所を限定したくないんです。火星でも実験できるのが、本来は理想的です。

M:情熱主義の一環です。情熱があればどこでだってやれるんだぞ、と。夕張集合の時は集合まで3日くらいかかっちゃいました。その間一人で野宿して。お金がないから特急とか乗れないし。

O:特に印象的な実験は?

K:太平洋戦争中にとられたジンギスカン作戦を現代風にアレンジした実験がありました(「2007年自主法政祭号」)。実際の作戦のルートであるミャンマー~インドに掛けて、富士から出発して家畜を連れて歩き、腹が減ったら捌いて食べながらインド大使館を目指すというものです。生きた羊が手に入らないので、鶏を2羽ペットショップで買いまして。それを捌いて食べて、その時のトリ鍋以外は、ゴハンなしと。でも、雌鳥って食用じゃないんですね。全然旨くなくて。ダシも鶏冠も美味しかったけど…。結局はリタイア者を出しながらも無事たどり着きましたが。

M:最近では大晦日のママチャリレースですね。25日に法政大学を出発して、他の参加者のタイヤの空気を抜いたりガムテープ巻いたりして妨害しながら、今年のゴールである広島まで走りました。この人(会員H)はちっちゃい自転車に薄着でベスト着て、原宿にでも行くような格好して参加したんですよ。

O:その格好は企画のために?

H:いや、普通にナメてて…。寒かったですね。

会員T:私はいつの間にかバイパスに乗り上げてしまって、トラックとトンネルの壁とに挟まれながら自転車をこぐという怖い経験をしました。どこまで行っても下道が見つからないので結局警察を呼んで助けてもらったんですが、保護のためUターンされてしまって。「せっかく走ったのに…急いでるのに!!」と、悔しい気持ちで一杯でした。あとは野宿してる間に財布を盗まれたり、携帯電話が使えなくなってしまったり。1日2回連絡をしなきゃいけないんですけど、できなくて「Tは死んだ」という噂が流れたりして…。

M:私は二人乗りで行こうと思って、美容学校生がよく持っているような首だけのマネキンを白衣を付けた銀マットの上に載せて、それを荷台にのっけて走りました。

O:年末年始に誰も里帰りしないでそれをやると…。

 体力的にかなりキツそうな実験ばかりだが、今回参加してくれたMさん、Tさんは華奢な女性。とても広島までチャリで走っていくようには見えないが、実験に対する情熱の強さが彼女らを駆り立てるのだろうか。会長は春休みも意欲的に実験を行っていくと宣言してくれた。内容は次号のお楽しみだ。

■権威をうっかりちょっぴり本当に打破してしまって冊子に掲載できなくなった実験もあるとのこと。実験レポート集『つみほろぼし』は、学内無料配布の形態をとる。最新号は「2008年自主法政祭号」、1000部が出ている。バックナンバーの一部を新宿模索舎にて販売、一部200円。交流のある京都大学吉田寮にも少々配布している。お問い合わせはつみつくりホームページにて。(奥山)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年1月25日 (日)

日曜ミニコミ誌!/言葉巧みなアノ人達の秘密『ファッション販売』

10000976_05_0902  『月刊総務』は書店でアルバイトをしていたときによく見た。専門分野が漠然としがちな「総務」の雑誌。こんな切り口があるのかと、そして全国に流通するほどのニーズがあるのだなあと、印象強かったのを覚えている。
 しかし今回紹介する雑誌はもっと狭い。『ファッション販売』は、「いらっしゃいませ」を高らかに連呼するあのお姉さんたちのための雑誌だ。アパレル店売における接客のイロハ、今期のトレンド、買いあわせおすすめのヒントなどが満載。もちろん一般書店に置いてあるので広義のミニコミ誌のくくりには当てはまらないが、購買層の限定という面ではかなりミニコミ誌に近いので、とりあげてみた。

 特に今号(09年2月号)は「店長力検定」と「トレンドアイテム売り込みポイント&トーク重点講座」に注目したい。

 「店長力検定」は設問160項目で「店長としての強みと弱みを知る」とあり、設問はさらに20項目ずつにグループ分けされている。「売り場のコンディションづくり力検定20」「リーダーシップ力検定20」「売場の算数力検定20」などの合計で店長力を判断するというものだ。それぞれのグループごとの点数をグラフ化すると、自分がどんなタイプの店長かが分析され、タイプごとにアドバイスがある。キャラキャラと姦しい売場よろしく、アドバイスにもオトメな事が書いてあると思いきや
「今やコミュニケーション力はテクノロジー!(生産性を上げる手段です)」
「無謀な意欲論の排除!」

など、ぱっと見は意味がつかみづらい文句ではあるが、なかなかに激しい。「ノミュニケーションをとる」など、まるで管理職(店長だから管理職なのだが…)のおじさん向け並にシブい。結構シビアな業界がかいま見られるようだ。10代向けのポップなお店であれば、30代の店長に任せるわけにも行かないから店長以下みんな10代から20代前半だろう。「お疲れ様でした、店長!」「お疲れ様。…ちょっと一杯、どう? たまには」「いいっすねえ、店長と飲めるなんて嬉しいです!」などの会話が繰り広げられているのだろうか、なんだか健気なような…ん、普通か? バイトの馴れ合いの延長か?

 「トレンドアイテム売り込みポイント&トーク重点講座」においては、この春の売れ筋商品について、どんなトークで購買力をかき立てるかが紹介されている。コレを読めば、あのお姉さんたちの奇々怪々なすすめ文句も理解できるかも?! 以下、「売り込みトーク例」本誌より。

 「今期はシフォンやオーガンジーなどの透け感のある素材が人気です。毎シーズン登場するスポーティな印象のパーカのプルオーバーも透け感のある素材だと新鮮ですし、優しい印象になりますね」

 なるほど、よくわからないカナ文字が一つ二つあるけれど、言われただけでちょっと心浮き立つ言葉ではある(本当か? と疑う人は、一度声に出して言ってみてほしい)。

ちなみに、私自身が良く聞くフレーズは次の3つ。

●これ、すごく売れてるんですよ/最後の一点なんですよ
売れているから何なのか、と突っ込んだ友人もいたが、これは「お客様、さすがトレンドに通じてらっしゃる。自然と人気のものを手に取るなんて、お目が高い!」の略。他人と違うものが欲しい人には逆効果かと思うが、不思議と言われて悪い気はしない。

●これ、今日入ってきたばかりなんですよ
「さすがお客様、新しいものに敏感ですね」の言い換え。「まだ着ている人はいませんよ、差をつけられますよ」との意も。そうか、と思いつつも、考えてみると全く同じものを着ている人に会ったことは未だかつてない。他人に興味がないから見えてないだけか。

●私も持ってるんですよ
「すっごい着やすいですよ」「肌触りがいいですよ」「何年着ても飽きません」が続く。自分の体験談を使って商品がよいことをPRすること自体は好感が持てる。でも、もしかして買わされたのでは…? と思ってしまうと、一気に悲しくなる。結果、買ってあげてしまうかも知れない。

 以上は耳ダコで聞かされたのだが、もしかして何年か前の本誌に載ってたのだろうか。2001年の創刊のようだが、いや、もっと前からこの言い回しは使われていたはず。出所を知りたい。調査を進めることにする。

 なお、私が一気にぐらっと来てしまったセールストークがある。それは5年前に地元で友人の披露宴に着ていく服を選んでいたときのこと。その店員さんは紫の服全体に宝石のプリントがちりばめられたワンピースを指してこう言った。
「コレを着れば、アクセサリーを付ける必要はないですよ」

 即購入。セールストークには、オリジナリティが必要不可欠だと思います。(奥山)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年11月16日 (日)

日曜ミニコミ誌!/第7回文学フリマに行ってきた

 本来ならば今日は月に一度の「冠婚葬祭ビジネスへの視線」の日である。しかし「日曜ミニコミ誌!」としてこのイベントの報告を載せないわけにはいかず、さらに連載名じたいが日曜日のアップを強制しているため、小松さんにすごい勢いで平謝りし、この日を譲っていただいた。

 「文学フリマ」とは文学限定の同人誌即売会で、2002年に始まった。今年で7回目になる。文学フリマホームページの「理念」に「既成の文壇や文芸誌の枠にとらわれず〈文学〉を発表できる「場」を提供すること、作り手や読者が直接コミュニケートできる「場」をつくることを目的としたイベントです」とあるが、アマプロ問わず同じ幅のブースを与えられ、同じ立場で売り手になっている光景を目の当たりにすると、「文学ってまだまだ元気になれるのかも?」と感動すら覚えた。
 ブースは売り子が二人座れる程度のスペースが与えられ、役150団体が参加していた。10時半から開場を待つ人の列に加わったが、既に50人程度が並んでおり、最初から熱気を感じさせた。11時に開場すると、100人程度になった列がゆっくりと動き始め、30分後には超満員に。コミケの身動き取れなさには負けるが、「文学」と名のつくイベントでこれだけの大盛況振りを見たことがないだけに、驚きが絶えなかった。男女比は作り手が男性6割の女性4割、お客が男性9割の女性1割といったところ。いつも思うのだがこの手のイベントはどうして女性が少ないのだろうか。筆者自身、書き仕事をしているとよく男性に間違われることとあわせて疑問である。

 会場では講談社の主宰する「東浩紀のゼロアカ道場」の関門としての同人誌販売も行われていた。若き批評家たちが冊子の販売数を競うのだ(詳しくはこちらのHP参照)。ざっと立ち読みしたあとに投票的に一冊買ったのが、『ケフィア』(project1980)。関門としてもトップで通過したようだ。フォントの小ささにまで熱意がこもっているこの雑誌、とくに「ゼロ年代的広告論」が出色の出来ではと感じた。個人的に興味がひかれたのは「擬似同期化するファッションの世界」。いつもは話題の外にある批評家たちのファッションについて、内輪的に語っているのが面白い。同人誌にしかやれないことだろう。

 筆者の狙いは、2階でも独特の空気を放っていた一列。名づけるなら「オンリーワン」な一群だ。コンセプト、企画ともに「文芸」「批評」「コラム」などに分類できない、いわば世界に一つ(多分)の専門誌を作る人々のブースである。
 本連載で紹介させていただいた方々の出品から見ると、ミニコミ界では有名な『野宿野郎』が新作『風呂なし野郎』を販売。文字通り「住んでるところに風呂がついてない」人々が送る風呂私生活の数々は、不思議と悲壮感を出しておらず、むしろそれを楽しんでいるかのように見える。コンセプトとしての「野宿」とのつながりが垣間見えた。フリーペーパー『愛情通信』も新作(vol.20)が出来立てで、いつもながら生活に根付いたレポートが面白い。「計画生活」という記事中では、帰宅してからのスケジュールに「ゴミ拾う(20こ)」という記述があり人目もはばからず笑ってしまった。さらに同じ「愛情通信」のブースでは『スケベなのは悪いことじゃない』というフリーペーパーを配る女性がいて、新たな「オンリーワン」の可能性を感じた。そして『どくろく』(武蔵野ヘルスセンター)は中央線の車窓から発見した小さな変化などを紹介するフリーペーパーをまとめた『週刊車窓』を販売。中央線利用者なら誰でも心当たりのある(しかし他人との会話には絶対にのぼることのない)話題満載だ。そして他にも様々な表現者たちと知り合えた。順に本連載で紹介をさせていただければと思う。

 今年の流行語大賞にもノミネートされた誌名を持つ『ロスジェネ』ブースでは、作り手たちがかわるがわるに店番をし、活発なオーラを漂わせていた。秋葉原での事件を扱った論評が主題の増刊号は、作り手も買い手も20代後半~30代が多い(見渡した限り)文学フリマでこそ、販売する価値があろう。同年代性を大事にした誌面づくりも「オンリーワン」だ。

年々参加者の数を増しているという文学フリマ、次回は来年5月に開催される。「私(俺)だからこそ作れる同人誌」が、もっともっと増えていくだろうことが嬉しく、楽しみだ。(奥山)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

より以前の記事一覧