日曜ミニコミ誌!

2013年3月31日 (日)

馬語手帖

「ミニコミ誌」じゃないけど、

おしゃれな手作り感溢れる

うまれたての出版社が作った本を

ご紹介します。

『馬語手帖』(カディブックス)

Umago

カディブックスは、与那国島の小さな出版社。

「持続可能なほどの小さい規模で、細く長く続ける」

そんなモットーを持っている、とのこと。

最近、「リトルプレス」などと呼ばれる出版形態が

簡単に操作できるデザイン系ソフトや

初心者でも安心して頼める安価な印刷所の登場によって

広まってきました。

与那国島で出版ができるなんて、夢みたいな話です。

でも、小さな規模ならそれが可能。

それを示してくれています。

肝心の、本の内容。

ウマと話せるようになる、ウマと遊べるようになる。

ウマに気に入られるための本です。

ウマはとっても臆病で、用心深い性格の持ち主。

うっかり後ろに立てば蹴られるし、正面きって顔など覗けば威嚇される。

「自分は敵じゃないよ、仲良くなりたいよ」

人間側のそんな気持ちをちゃんと伝えるための、ウマとの付き合い方が書かれています。

豊富で可愛らしいイラストによって

ウマをあまり見たことがない人にも

「へえ、耳がそっちの方向を向くと

そんな風に思っているんだ!」

「かわいい目をしているときは、

本当に甘えたいのね!」

と、ウマの気持ちが実感できます。

弊社刊『農業6次化がフクシマを変える』の著者・大畑太郎氏が

畜産業者のもとへ行ったとき、とてもためになった本。

(『馬語手帖』河田桟、Kadi books、1260円)

取り扱い店一覧↓

http://kadibooks.com/home/fellow/

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年12月16日 (日)

日曜ミニコミ誌!/『季刊レポ』 祝!第1回「笑う本棚大賞」は『醤油鯛』

 ミニコミ誌、と呼ぶには躊躇してしまう豪華な執筆陣。北尾トロ氏が編集長をつとめる季刊誌で、タイトルそのまま様々な場所を「レポ」して歩く。なるほど、この『記録』と同じテンションだと、おそれながらも思いたい。

 つい最近出たばかりの10号の特集は、「ラジオはナマ臭い」。TBSラジオの編成部で働く村沢青子さんが生放送の生々しい現場をえがく「私は生放送族」ほか、放送作家やラジオDJが生き生きと自分の仕事をレポートしている。普段何気なく耳にしているラジオの細かな言い回しや後ろの笑い声の秘密が詳細に語られ、生であるからこそ一瞬一秒のひらめきや気配り、小さな発見が番組の展開を左右していくのだと思い知らされる。明日からラジオの時間がもっともっと楽しくなりそうだ。深みのある特集である。
 ほか、「美学直送!三浦半島に息づくデコトラ」(檀原照和)「東京の洞窟にコウモリを探しに行きました。」(日高トモキチ)「北千住大喜利ハウス」(めるし)など、日常生活から半径ウンメートルの範囲内に眠る愉快なことをただひたすらレポートする文章や漫画が連なっている。こういうのは筆力が勝負なのだが、どれもこれも面白く読めてしまうのが見事である。

 そして今号では『季刊レポ』が創設した、「オモロおかしいノンフィクション」に与える「笑う本棚大賞」第1回受賞作のお知らせが。
 それがなんと、弊社刊の『醤油鯛』!
 選考委員の新保信長・えのきどいちろう・北尾トロ各氏に激賞をいただき、編集部はただただ感激。何よりもこの本に対する編集部の愛情をおおいに感じとってくださったことが選評から分かり、ていねいな読み手に本が届いたことにも感動している。アストラ始まって以来、賞をいただいたのははじめて。
北尾トロ編集長からは、帯に寄せる推薦文までいただいてしまいました!

Securedownload  

 本当に、ありがとうございます!
 これからも、いろいろと邁進したいです!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年10月14日 (日)

日曜ミニコミ誌!/活きた島情報満載「季刊リトケイ」

Ritokei_no3_1_1 日本には約430もの有人島があるらしい。

島といえば小笠原諸島か沖縄方面のことしか思い浮かばなくても、

海に面した県の出身者なら、一つは故郷に近い島に思い至ることができるのではないだろうか。

新潟県人なら佐渡を、山形県人なら飛島を、愛知県人なら佐久島を。

「季刊リトケイ」は、探しにくい各島々の情報を集めるウェブサイト「離島経済新聞社」から生まれた紙媒体の季刊誌。編集者やデザイナーさん方が集まって作ったこともあり、デザインセンスの良さや記事クオリティーの高さは噂に聞いていた。最近、03号(2012夏号)を買ってみた。

本当にものすごいハイクオリティー!

そのことは一番最後のページにある「私、島人です。」という連載の文章で思い知った。

この号の「私、島人です。」では「琉人マブヤーさん」を紹介している。沖縄のご当地ヒーローだ。「スーパー・メーゴーサー(げんこつ)!」という琉球風味たっぷりの必殺技をはじめ、沖縄の言葉をちりばめた紹介文が、なぜかものすごく読みやすいのだ。マブヤーさんの出身地から仕事をする上での流儀、みんなにどんな良い子になってほしいか、これからの目標。ファンタジーの住民である「マブヤーさん」が、そのキャラクターは崩さずに、でもとても親しみやすい書き方で紹介されている。その筆力、ほしい。

誌面は特集の他に「訪れる」「知る」「語らう」「暮らす」など、「島に人がどうアクションするか」になぞらえて構成されている。観光用の情報だけではなく、島暮らしを支える法律の情報などリアルに島に関わっている、または関わりたい人達のための記事も。

日本は島国。であれば、離島はミニマムな日本の姿。過疎と高齢化に悩む島々は、まさに日本を鏡のように映していると言える。ということは、住みよく活性化に成功している島は日本がこれから何をすべきか、そのヒントを持っているのでは。モデルは約430。一つ一つに訪れ、その空気を感じてみれば学ぶことはきっといくらでもある。でもそんなに沢山の島をたずねることは不可能だ。だからこういう雑誌が必要なんだなあ。季刊タブロイドの「リトケイ」も、ウェブサイトの「離島経済新聞」も、どちらも時間のあるときにじっくり読んで生きるヒントを見つけたい。

■「季刊リトケイ」取扱店一覧

http://ritokei.com/contents/kikanritokei/%e3%81%8a%e5%8f%96%e6%89%b1%e3%81%84%e5%ba%97%e4%b8%80%e8%a6%a7/

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年11月20日 (日)

日曜ミニコミ誌!/静かな街に住みたい『AMENITY』

1_2  近所の金属買い取り専門店の「金、プラチナ、買い取りま~す」というエンドレスな売り文句が、控えめに言ってうるさい、ということはよく感じていた。お店がマンションの一階にあり、二階の人は始終こんな声が聞こえて気の毒だな、とも思っていた。日曜日の朝10時、廃品回収車がゆっくりと自宅の周りを回りながら「ご不要になった、テレビ、パソコン、エアコン…」とスピーカーで放送するのも、気にはなるが寝起きの悪い自分が悪いのだと思っていた。

 どこまでが生活音で、どこからが騒音なのか。感じ方は人によって様々だ。私は隣のビルが工事をしていてもお互い様と思い全く気にならないが、同僚は苛々している。逆に、夕方6時頃になると隣家の主婦が「ハルー、ハルー、ごはんだよ」と猫の名を呼ぶのが何だか気に障るのだが、そんなことに文句を言う社員はいない。

 「我慢しなきゃ、なのかな?」「わたしだけ、なのかな?」そんな遠慮がちな思いを、徹底的な「ノン!」で打ち砕くのが「静かな街を考える会」が発行する機関誌『AMENITY』である。最新29号の特集は「防災無線」。本ブログで「池田大作より他に神はなし」を連載する塩山芳明氏も寄稿している。タイトルは「新・富岡『騒音』日記」。3年以上前に中止されたはずの、夜9時の防災無線が突如復活したことについてのルポ。議事録や市役所職員とのやりとりから得られた復活までの顛末が、子細に渡って報告されている。
 ラジオ体操、選挙カー、時報やチャイム放送、列車発車時のアナウンス。気になりはじめてしまったら止まらないから、気にしないようにしている、ような気がする。もうちょっと自分の感覚に素直になったら、こんな騒音王国にいるのは耐えられない、と思うのかも?(■A5判、1000円、発行:静かな街を考える会)(奥山)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年10月30日 (日)

日曜ミニコミ誌!/ヨロンのびのびミニコミ「かなしゃ」

22  休暇を利用して与論島に行ってきた。地図でいえば沖縄の鼻先、しかし住所は「鹿児島県大島郡与論町」。本州最南端、直径22キロという小さな島だ。
 島だから当たり前といえば当たり前だが、四方八方が海。その大部分が遠浅で、エメラルドグリーンの海岸がどこまでも続く美しさは圧巻だ。
 海はさておき、旅行に行くと何よりも楽しみにしているのが「その土地いちばんの書店に行くこと」。いちばん、かどうか分からないが、繁華街のど真ん中にある香文堂書店へ入り、よそ者の無遠慮さで隅から隅まで棚をじろじろ見て回った。郷土出版の棚、「与論カルタ」や鹿児島・奄美の本を多数出版している南方新社の本が並ぶ中、ありました! ヨロンにも、郷土のミニコミ誌が。雑誌名は『かなしゃ』、よろんよろん発行。「かなしゃ」は、人を慈しむなどの意味を持つ奄美地方の方言だそうで、調べてもなかなかイコールの日本語が見あたらない。得てして方言とはそういうもので、例えば山形出身の記者も、「やばつい」を説明するのに4語では収まらない(袖の中に水が伝って冷たく気持ち悪い状況をあらわす言葉です)。でも『かなしゃ』の巻頭言を読めば、語句の雰囲気は誰でも分かるはず。
 1号、2号と発刊されていて、1号で大きく取り上げられているのは「島のまさい」。「まさい」は「ごはん」のことらしく、さまざまな料理とそのレシピが掲載されている。写真がプロ級の仕上がりで、ページづくりのセンスも良くびっくり。クレジットを見ればイラストレーター・もとくにこさんの写真で、料理や文章も本人の作品。そしてイラストは文庫本のカバーなどで有名な八木美穂子さんのもの。これは豪華!
 料理の腕の件を棚に上げて、おいしそう、作りたい!と期待を膨らませてレシピを見ると、「シビ300グラム」「いも貝100グラム」「ドゥックイ1本」などなど、手に入りにくいものばかり…ヨロンにいる間に、珍しいもの全て制覇したかったが5日間では無理だった。ぜったいに近いうちにもう一回行く! そんな誓いをたてるに十分な魅力満載の「島のまさい」。
 ほかにも島にまつわる読み物がたくさん詰まっているが、特に読み応えがあるのは「人」についてのルポやエッセイ。島に集まる人々の背景には、沢山のドラマがある。人まみれの関東に暮らしていると顧みることのない「全く知らない他人」の物語を、とっくりと見つめる気になるのは島のマジックか。(■『かなしゃ』1号、2号 各500円)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年5月 1日 (日)

日曜ミニコミ誌!/香山さんの新作ミニコミ?とおもったらちがった!「Cooler」

Cooler  『ランチパックの本』の著者、香山哲さんが薄い冊子を出していたので、「新刊か?」と思ったら、ちがった。
 香山さんがつくった「Cooler」というゲームを応援するためのパンフレットだ。
 「Cooler」は、原子力発電所のえらい人の気持ちになれるゲーム。プレイヤーは、原子炉とデモ隊両方の熱を下げていかなければならない。だから「Cooler」。ゲームをすすめていくと、原子炉の状態レベルが日に日に悪くなっていくし、それに伴ってデモ隊の数は増えていくしで、広報・調査予算をバンバン使わなければならない。散財に散財を重ねながらも、なかなか具体策は見つからず・・・いや、ゲームなのだからなにかコツがあるに違いない。ファミコン世代のくせにやったことのあるゲームといえば「桃鉄」くらいしかない奥山がどんなに力業で挑んでも無駄なのだろう。
 よく説明を見ると、デモ隊の人たちにはそれぞれキャラクターがあって、キャラに合わせた情報などを提供すれば効果的らしい。例えば「近くの人」という赤いキャラは、最も被害を受けやすい人たちなので安全性を証明する会見を行うと安心してくれる、「ルポライター」という灰色のキャラは、科学技術にかんするデータを出せば納得してくれる、など。
 うーん、だんだん原子力発電所のえらい人の気持ちになれてきたぞ! でもなんだか、みんなの気持ちを鎮めることしか考えられない! 根本的な解決って、どうすればいいんだろう?
 奥山のレベルはまだ2。もっともっとレベルを上げていけばなにかヒントがえられるかもしれない。だからこれからやってみる。みんなもやってみよう!

「Cooler」ダウンロードはこちら↓
http://www.kayamatetsu.com/

「Cooler」小冊子通販はこちら↓
http://www.mosakusha.com/newitems/2011/04/cooler.html

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年1月30日 (日)

日曜ミニコミ誌!/『本と酒と俺』

 すごくいい雑誌だと思うのだ。まず、タイトルがいい。破格にいい。
 というわけでタイトル買いをした。これを読みながら酒を飲みたい。そう思わせる、いい雑誌だ。

 家に帰り、2缶298円の缶チューハイ(ストロングゼロ)を手にページをめくる。
 編集人をはじめ、連載陣の文章玄人ぶりにまずはびっくりした。洗練されたエッセイが500円で15本も読めるなんて、お得にもほどがある。唯一の難点は、酒を飲まない人にとってはさっぱり面白くないだろうところだ。他に欠点は微塵も見あたらない。
「カナダで 本と酒と俺たち」(江川伸子)の、異国情緒あふれる酒事情。
 家賃の倍相当を酒代にしていたという記述に侠気を感じる(記者は女性だが)。
「酒からだけの視点で1Q84を読んでみました。」(田中都麦)の、酒に対する真摯さ。
 ビールを半分だけ飲んで流しに捨てる主人公に憤慨する姿勢には、大いに賛同できる。出された酒はフラフラになっても一滴残さず飲むことを信条にしている酒好きから見れば、阿鼻叫喚にも匹敵する図だ。
「ここはあんまんについて語るのに適した場所ではありません」(加藤徹)の、昔語りの面白さ。 酒に関係する内容は前半だけだが、全く関係ない後半の方が1000倍も面白いというのはどうしたことか。

 そして「26人に聞く「本と酒と俺」!!」では、「本を読みながら酒を飲むことがありますか?」「おすすめの酒本は?」といった質問に26人の「本まわりの達人たち(そして酒好き)」が答えていく。
 意外と皆、本を読みながら酒を飲む、ということはしないようで、お行儀が良くて立派である。
 酒に本はつきものだし、本に酒はつきものと日頃思っているだけに、う~ん、とうならされた。

 私事で恐縮だが、「本と酒」を遣り出したのは大学生の時。小難しい課題本を読んでいて、酒でも飲んでなければやってられないとウィスキーをストレートで用意したのが運の尽きだった。酔うに従って頭の中の引き出しがひっくり返り、誰かが出鱈目に整理整頓を始める。「これはこっち、あれはあっち」と理不尽にたたんでしまわれていった結果、まともな頭では考えつかなかった思考のコーディネートがぴたりと嵌り、「あ、そういうことなのね」と目ウロコに出会ったりするのだ。そしてレポートを書く、がんがん書く。私って天才かも、と気分はいかにも爽快である。
 唯一の難点といえば、次の日まともな頭で目覚めると全く理解不能な解釈がワード上に乱立しており、全削除を余儀なくされると言うことだ。
 それさえ気にならなければ酒と本という組み合わせはひとり遊びに最適なパートナーである。

 個人的には「どんな酒がどんな本に合うか」も意識して選んでいる。
 先日、恩師から八木雄二の『天使はなぜ堕落するのか』(「天ダラ」と略すそうである)を勧められたが、読み通す自信がまったくない。どんな強い酒と合わせようかと悩んでいるところだが、いかんせん、本自体がとても高価なので買うこと自体を迷いはじめた。しかし強い酒は飲みたいので、ぜひ買うことにする。
(■『本と酒と俺』2010年1号 500円86PA5判)http://d.hatena.ne.jp/yumyuri/

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年8月29日 (日)

日曜ミニコミ誌!/フリー&フレンドリー「Inside Out」

 久々にみじんこさん(ヒト/女性)のほっこりした笑顔に会いたい、と思い立ち、高円寺南口の線路沿いをひたひたと歩いた。1分も経たないうちに「のっぽのサリー」を通り過ぎ、次の角を右に曲がれば「まんまみじんこ洞」がある。どんぶりものが何と280円から食べられる、さりげなく牛丼屋に対抗するお食事処&バーだが、店主がミニコミをつくっており、さらに集め手でもあり、行けば珍しい個人出版物ばかりを読むことができるというのがこのお店の一番すごいところ。この日も、素晴らしい出会いがあった。

 「この雑誌、知ってます?」と言ってみじんこさんが差し出してくれたのは、水玉模様が夏らしい「InsideOut」という雑誌。パラパラめくってみると文芸誌のようだ。ふうん、と読み始めようとして「これね、タダなんですよ」という、次のセリフに恐れ入った!
 この厚さでこの内容なら600円くらいかな、と心の中で思っていたから。次の瞬間、強烈に「会ってみたい!」と思い、早速取材を申し込んだ。

 取材に応じてくださったのは、代表の川端さん、イベントを主に担当している本多さん、最近制作に関わり始めた三井さんの3人。社会人の疲れた体をおして来てくれた川端さんにまず聞いたのは、この雑誌を作ったきっかけ。

川端さん(以下川):振り返れば、学生時代に僕が友達と作りかけて、でも途中
で立ち消えになってしまった文芸誌がもとになっています。企画だけが宙に浮いたまま、1人でやろうとしていた頃に本多くんと知り合ったんです。それから1号が出るまで1年くらいかかって、創刊してからは3~4年になるでしょうか。
 雑誌のコンセプトは、1号の「『InsideOut』創刊にあたって」という文章に全部詰まっています。誌名は「Syrup16g」というロックバンドの曲からとりました。内面を外にめくって裏返しにするといった意味の英語らしく、これは表現のことをあらわしているのかなと考えて。とても印象に残っていたので誌名にしました。

 創刊宣言には「いつでも描き手になり得る。誰でも読み手になり得る。」「誰でも参加できる場を提供したい」とある。さらに「私たちはジャンルという作られた垣根を取り払いたい」とも。大変フレンドリーだ。

川:この雑誌には、1号ごとにテーマがあるわけではありません。売りはジャンルなし、テーマなし、無料。本当の意味でのフリーな雑誌を目指したかったんです。テーマを決めた方が良い、と言ってくれる人もいるんですが、決めることによってそがれてしまうものがあるんじゃないかなと、なんとなく感覚的に思って。

 そんなフリー、かつフレンドリーな姿勢は創作の現場にも表れている。誌面にも登場する「InsideExplorer」というイベントがある。その中で参加者は共に話し合い、創作についてのインスピレーションをふくらまし、表現の「種」として持ち帰ったり、その場で表現したりするのだ。

本多さん(以下本):イベントでは、喫茶店や合宿所などの会場に10人程度が集まってまず素材についてのおしゃべりをします。1時間半くらいしゃべったあとで、それぞれテーマに沿った創作を始めます。創作自体のスタイルは自由で、小説、絵、漫画なんでも可です。制限字数もなしで、その場で作品を完成させることが大事ではなく、同じところに集まって新しい知識や考え方を知ることが大事と考えています。創作の種を見出すというか。
 方法は毎回変わりますが、例えば直近でやったことで言うと、机の上に模造紙を広げて、最初と最後の設定だけを与えておく。で、文章やエピソードを書いた付箋をペタペタはりながら物語を作っていくんです。終わったら、そのうちのワンシーンを広げて物語を書く。基本的に自由な創作の場なので、他に書きたいものがある場合は勿論、そちらを優先してもらいます。
 合宿では、2人組で物語を作るなど、文学の場の共同性みたいなものを生かして書いていきます。その即興性がすごく面白いんですよ。1人で書いているときとは違うものが書けるし、イマジネーションも膨らみます。

川:次の7号では、このイベントと誌面とのつながりを、もっと強めていこうという話をしています。具体的には、イベントで生まれた作品の種の中で僕らが気になったものを、その種を生んだ本人も書きたいという気持ちがあるのであれば、良い作品になるよう手助けをしながら育てていこうという試みです。要するに編集作業をしっかりするということです。さらに育てた作品を本誌で発表して、またイベントでそのフィードバックを行おうと思っています。

本:書き手と読み手のリンクって何だろうと考えたときに、フィードバックがいっぱい返ってくるのが一番うれしいと思うんです。さらに「書いたことはないけれど、書いてみたい」という人が書き手になるということも、大切なことだと感じます。でも、どちらもまだまだ今の段階ではできていません。今までの投稿型とは少し違う形になるかもしれないけれど、今から1年くらいかけてじっくり7号を作っていこうと計画しています。

三井さん:次回からはコンセプトの刷新ということを考えています。ロゴや誌面のデザインも、コンセプトに合わせた形で新たに作らせてもらうことになっています。「自らの内面を形にする」「表現の連鎖」という2つのコンセプトを1つにまとめあげて、それを表面的にも、内面的にも表現していきたいですね。

 今の表紙は6号ともにドット柄をパターン化した、かわいらしいつくり。新しいコンセプトを得て、見た目がどう変わるか。とても楽しみだ。最後に、これからの課題や理想とするものを自由に語っていただいた。

川:活動を続けるにあたって皆によく言われるのは、「本を読め!」ということ。ぼく自身が文学にまだまだ精通していないので、彼らからしてみれば本当の評価の軸に沿ってないと感じるのでしょう。次号から試みる、イベントと誌面のつながりをもっと強める試みのためにももっと編集力が必要ですし。小説に使われている技法などにもっと詳しくなって、批評力をつけることが今後の課題です。エンタテイメントとアートなど、相反するベクトルが一番高いところで交わったところが究極の表現になるのではないかと思っているんですが、それに繋がる面白さというのも、感想だけではなくきちんと説明できるようにならなければと感じています。

本:音楽ってジャズのスタンダードナンバーは、誰の作品かというのはあまり意識されないじゃないですか。ああいった風潮は文芸の世界にはないな、と感じていて。よく「場の文学」という言葉を使うんですが、誰かのパーソナリティーを吸い上げた作品というよりは、人の集まりが場として立ち上がってきて、そこから引き出される作品というものの面白さを伝えていきたい、と思っています。

1号につき1000部を発行している「InsideOut」。フリーとはいえ何かお金に繋がらないと、ということで広告だけは入れているとのこと。もっともっと刷りたい、万は刷らないと、と川端さんが意気込んだ。配るのは主に文学フリマなどの即売イベント。みじんこ洞などのお店で配る事も。たくさん配るには、ビジュアルアップがやはりポイントの一つとなる。7号が、今から楽しみだ。(奥山)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年7月25日 (日)

日曜ミニコミ誌!/報告・圧迫・出会い系 『むだにびっくり』

Muda  アミューズメントパークでつまらなそうな顔をしているのは、迷惑だ。それは不愉快な気分が周囲に感染していくからで、みんなは一瞬にして「本当はとくに可愛いとも思っていないキャラクターとピースサインで笑って写真を撮っている自分」とか、「怖いだけの絶叫マシンに嬉々として乗りこむ自分」とか、「普段は絶対に通り過ぎるピエロのパフォーマンスにウケてる自分」に気づいてしまうのである。一生懸命魔法にかかっているのに、たった一人が素に戻っただけで全てがぶち壊しになってしまう。それは悪ですらある。

 ミニコミ誌『むだにびっくり』は、この意味で「悪いこと」ばかりする。その潔さがとてもよい。
 著者は女性漫画家。男性向けアダルト雑誌に過激スポット等の潜入ルポ漫画を書いた際「男性が喜ぶようなこと」しか書けなかった悔しさから、このミニコミを思いついたのだという。男性向けの雑誌では「エッチな所に行って、ムラムラしちゃいました☆」(著者ブログより)と書かなければならないことも、女性目線の本音では「ありえねー」「真面目にスゲー」「なんでこんなことやってるのか」「気は確かか」と思わざるを得ないことが多い。そんな、男性誌では踏み込めない女性の本音がたくさん詰まっているのが『むだにびっくり』。

 風俗、出会い喫茶、ストリップ劇場などに行って、ときには驚き、ときには冷静に突っ込みを入れといった性的興奮の介入する余地が全くないレポートを作り上げている。そんな男の幻想を打ち破るようなミニコミなのだが、私の周りでは女性・男性問わず人気が高い、ということは、男性自身もやっぱりその辺は分かっているんだろう。私たちはアダルト男性誌とその読者たちに対してしかめ面をする必要は全くないのだ。だってそれはオトコの遊園地にすぎないのだから。

 そんな『むだにびっくり』の最新号・第3弾は、「圧迫感のある人たち!!」篇。

 たまに1ミリも面白くないアミューズメントパークを無理やり押し付けてくる人って存在するけれど、この号はまさにそんな人々について冷静に語っている。多くの人が伏し目になって語るのを避ける、やたらテンションの高い「アッパクちゃん」をスパスパ斬っていて爽快だ。「喫茶店バイトのほかに5億を稼ぐ」と吹聴する男、「イケメンすぎる男」など身近な例から、類は芸能人にまで及ぶ。自らの内に棲む「圧迫」にまで言及しており、著者の人間・自己観察には脱帽せざるを得ない。(奥山)

(■「むだにびっくり 第3弾」120P600円(税別)/A5判/タコシェ、模索舎などで発売中)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年6月20日 (日)

『小金井駅は宇都宮線だもん』10回目

以前このコーナーで紹介した

『小金井駅は宇都宮線だもん』

「第10回目」が出版されました!

2080

今回のテーマは「酒とともに」。

「刀持ってない、給料安いくせに酒ばっかり飲む、もてない、もててもネガティブだからすぐふられてしまう、成長期をとっくに過ぎてるのに大飯喰らい。しかも酒も飲むから燃費悪い」がモットーの「サムりゃい」精神が息づく本誌にとって、ストレートすぎるテーマです!

酒におぼれたうちの一人ということで、私も寄稿させて頂いております(宣伝)。

そのほか連載もいつものようにもりもり。

ワールドカップ間近に書かれた記事ということで、スポーツ関連が大いに盛り上がっています。

個人的にツボだったのは「河田式文化コーナー」。

同年代が持つささやかな連帯感を、笑いが実証してくれる。

孤独ではないことを教えてくれるような記事です。(奥山)

(■「小金井は宇都宮線だもん 10回目」64P 300円/A5判/タコシェ、模索舎、イレギュラー リズム アサイラム、ガケ書房にて発売中)

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

より以前の記事一覧