書店の風格

2009年11月16日 (月)

書店の風格/第39回 ブックスルーエ

 エキナカのワンフロアとか、バイパス沿いのどでかい敷地内じゃなくて、地元の商店街にしっかりした本屋さんがあったらとても嬉しい。なんだか、住んでてすごく得した気持ちになってしまう。

 そんな希望をさらりと叶えてくれるのが、吉祥寺はサンロード内にあるブックスルーエだ。田舎から東京に遊びに来た10代の頃、ここを「紀伊國屋書店吉祥寺店」だと思っていたものだ(山奥の人間にとっては、都会の大きな書店は皆「紀伊國屋書店」である。私だけか?)。

 ブックスルーエは、ただの地元密着型書店とは違う。おそば屋さん、喫茶店を経て平成3年に今の本屋が出来上がった。「ルーエ」という書店にしてはお洒落な名前は、喫茶店時代からのものを受け継いだという。しかし当時としても規模の大きなおそば屋さん、喫茶店だったであろう。それを書店にした三代目の敏腕に感激した。吉祥寺には、特にサンロードには飲み歩きしても何ヶ月かはかかるほどカフェが散在している。チェーン店から最近できた手作り風のものまで様々だ。それよりは、意外に大規模なお店が付近にない書店の方が住民としてもありがたい。クリエイターが集まる街・吉祥寺ならなおさらだ。

 お店は地下1階から3階までの4階構成。地下1階が専門書、1階が雑誌・話題書、2階が文庫や新書、3階がゲームやコミック。階を追うにつれ自分が若々しくなっていくような錯覚を覚える(逆に3階から散策して地下1階に下ると、なんとなく落ち着いてくる)。立地性が多分に発揮されているのは特に3階のコミック売場で、お店に贈られた作家直筆のサイン色紙が溢れんばかりに貼ってある。地元・吉祥寺を愛する作家からのプレゼントが多いのだ。お客は勿論のこと、クリエイターからも支えられ愛されて成り立っていることがわかる。もちろん品揃えも豊富で、規模に対して驚くほどのコミック量を誇っている。

 このお店のもうひとつの魅力は地下1階、品揃えの独自性と網羅性にある。一見矛盾するように思えるこの二つだが、巧みなディスプレイによって両立をかなえているのだ。
 専門書フロアに派手さはない。フェアや新商品をあからさまに押し出すようなことはなく、ゆかしく並べているように見えるが、もちろん工夫が盛り込まれており、見る人が見れば「なるほど」とうなされるつくりだ。
 平台に置く商品の一冊一冊が、面で陳列している一冊一冊が、今の世情をなにか1つは反映していて、全体的に見ると一枚の風刺画の如くになっている。かといって選書が偏っているかといえばそうではなく、話題の本は取りそろえてあるし、基本書も棚に挿してある。まさに網羅的、そして独自性のある棚作り。専門書の棚としては超一流であろう。

 ほかには、地元作家であるキン・シオタニさんのイラストが施されたブックカバーも有名。どこまでも、その土地に住む人達を大切にし、活かそうとする書店だ。このようなお店は、当然地元民も裏切らない。(奥山)

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2009年10月19日 (月)

書店の風格/第39回 啓文堂吉祥寺店

 京王関連線沿線ぞいにあるのが、啓文堂書店だ。
 だから、もしかしたら車をよく使う人には縁のない本屋さんかもしれない。さらに駅直結、たいていはインショップ系だから、奥ゆかしい印象を受ける。しかし、そんな啓文堂のなかでも群を抜いて目立つ店舗がある。吉祥寺店だ。

 駅隣のビルの地下に配置されながらも、圧倒的な存在感を誇る吉祥寺店。郊外のバイパス沿いにあるワンフロア店舗を思い出させるような広さが魅力的だ。駅側からアクセスすると文芸書コーナーに出るのだが、このスペースだけでも都内であれば一つの書店と見間違えてしまうだろう。実は奥にビジネス書や専門書のフロア、さらに奥には実用書や児童書のフロアがあり、こちらはビル母体であるユザワヤ側から一番近い。対象客の銅線を捉えた、美しいフロア展開である。

 この書店、中でも出色は児童書からはじまってヤングアダルト系の品揃えである。今はライトノベルに完全に置き換わった気もするヤングアダルトだが、外国文学の爽やかさを喜ぶ人々は今も健在だ。文芸書のコーナーに並ぶ重厚な上製本は、古きよき時代を匂わせる。新書ブームも実用書ブームも糞食らえの、書店精神が一心に叶えられているのだ。その棚の前に立つと、エキチカであることの騒々しさなど忘れてしまう。おっとりとページをめくりたくなるような、そんな空間が出来上がっていて、ついつい長々と立ち読みしてしまうのだ。

 良書を求めて、重厚なつくりの、丁寧な印象の本屋にだけ行っているとしたら、それはちょっと先入観が勝ちすぎる。一見、急いでいる人だらけのシンプルな駅中書店も、工夫は変わらない。京王線を使うときは、ぜひ立ち寄っていただきたい。(奥山)

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2009年8月17日 (月)

書店の風格/第38回 ヴィレッジバンガードマルイカレン店

 マルイヤング館がリニューアルして誕生した「マルイカレン」。その中に入った本屋さんは「ヴィレッジバンガード」。このビルのコンセプトを知らない人は、きっと意外に思うだろう。比較的小ぎれいなファッションビルである「マルイ」と、「遊べる本屋」を標榜するヴィレッジバンガードとでは、イメージが結びつかないからだ。
 「マルイカレン」のコンセプトは「ファストファッション」。ユニクロ、ローリーズファーム、ジャイロなど若者向けファッションの中でも比較的安価なブランドばかりを取りそろえているのだ。キッチュなお買い物を楽しめる空間に、ヴィレッジバンガードはしっくりとハマる。

 8階を陣取るヴィレッジバンガードは、お店の真ん中にエスカレーターが配置された個性的なつくりをしている。個性的なのはもちろんつくりだけではなく、商品の配置も面白い。ヴィレッジバンガードは本と雑貨のお店である。雑貨の中に本が混じっていても、またその逆があっても、基本的には本の棚と雑貨の棚が分かれているところが多い。しかしこのお店は徹底的に本と雑貨を混ぜ込み、あくまでテーマで商品配置を決めているのだ。
 エコグッズの棚にエコの本、お弁当箱や食器のそばに料理本があるのは当然だが、タバコや灰皿のコーナーに禁煙本があると多少「おっ」と思うだろう。ゴシックな洋服やウィッグのそばに夢野久作や澁澤龍彦、嶽本野ばらが置いてあると、その遊び心にうーんと唸ってしまう。極めつけはバスグッズの真ん中に一冊だけ置いてある『アンダーカレント』(豊田 徹也、講談社)だ。どうしてだろう? と一瞬首をかしげるが、そういえばアレは銭湯が舞台だった……なんて細かい!

 本だけを扱う棚ももちろんあるのだが、そこで目立つのは読書家のための本だ。まさに「本のための本による本棚」に徹しているのだ。若者向けには欠かせないコミック棚も工夫されてある。幅が狭くて使いにくい、エスカレーターの脇を有効活用しているのだ。通路になりがちな空間の壁一面に棚を設置して、コミックを並べてある。かなり通り抜けづらいので、もしかしたら立ち読み対策なのかもしれない。

 雑貨に紛れてそこかしこに散らばる本、本、本。「本は本棚に置いて売る」という概念が良い意味で崩壊している。これだったらお客も「本」ではなく「商品」あるいは「雑貨」を買う感覚で、手にとってくれるのではないだろうか。これこそ、本当の意味での「文脈棚」だ。もしかしたら今、日本で一番「本を売る気のある本屋」なのかもしれない、と思いながら店を出た。「姉さんも三十路っすね」「彼氏募集中!」と落書きされたバースディTシャツ(商品)にシンパシーを覚えつつ。(奥山)

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2009年7月20日 (月)

書店の風格/第37回 火星の庭

 去る6月26日、仙台の「Book! Book! Sendai 2009」に参加してきた。「Book! Book! Sendai」は、詩人の武田こうじさんが代表を務める「杜の都を本の都にする会」で催すイベント名。仙台で、「人生にとってかけがえのない本との出会いを伝え、考えていこう」と発足した会だ。なぜこの素敵なコンセプトをもつ会に接触できたかというと、アストラ刊『出版奈落の断末魔 エロ漫画の黄金時代』の著者、塩山芳明氏と、本の帯絵を描いてくださった漫画家、いがらしみきおさんのトークイベントがあったからだ。司会はベテラン・南陀楼綾繁さん。

 トークイベントではいがらしさんがユーモア溢れるトークを炸裂させたり、塩山氏が地元を撮影したビデオを流したり(自作ナレーション入り!)、最後にはじゃんけん大会の優勝者にいがらしさんのオリジナルTシャツをプレゼントしたりと、賑やかな内容。それについては「Book! Book! Sendai」の公式ホームページに詳しいので、読んでみてほしい。→http://bookbooksendai.com/modules/bulletin/index.php?page=article&storyid=43

 今回おすすめする書店は、「杜の都を本の都にする会」のメンバーで、このトークイベントの主催となって下さった「火星の庭」。
 古本をメインとしたブックカフェで、ランチもやっている洒落たお店である。

 仙台駅をアエル側に抜けて、駅前通りに出る。5分ほど歩くと大きな通りに出る。仙塩街道だ。信号を左に曲がって一分ほど歩くと、左手に看板ともオブジェともいえない、鉄製のお鍋のような茶色いものが立てかけてあり、「火星の庭」と書いてある。気づかずにそのまま通り過ぎて錦町公園まで来てしまったら、来た道をちょっと戻ろう。
 お店に入ると、右側がカフェスペース、左側に本棚がある。真ん中の仕切はディスプレイ棚が使われていて、チラシのスペースとして活用されている。
 本は丁寧な品揃えだ。特に美術系は豊富で、美しい画集やデザインの優れているものなどが店全体に鮮やかさをもたらしている。手作り風味溢れる飾り棚や紙芝居も雰囲気作りに一役買っている。文庫は人文社会系が魅力で、一般の書店では到底お目にかかれないレアものもところどころにあり、ついついじっくり見てしまう。店主自身の蒐集家ぶりが滲み出ている棚であった。

 カフェではお茶やお菓子はもちろん、ランチメニューもあり、豆の沢山入ったココナツカレーがとても美味しかった。ライスが玄米なのも、何だか優しい。チキンなど肉類が入っているわけではないのに満足感はばっちりで、お得な気分を味わえる。女性にはたまらないメニューだと思えた。

 客層はやはり女性が中心か、と思いきや女性あり男性あり、団体客ありお一人様ありと様々な層をキャッチしている。一人新聞と古本を傍らにコーヒーを飲むおじさまの隣で、女子大生とおぼしき4人組が笑いあってお茶していたりする。選書にこだわりがあってカフェメニューも凝っていて、要するに割と個性の強い店のはずなのだが誰でも入れる気軽さがあるのは、店主のマジックかそれとも仙台マジックか。東京にも面白いブックカフェはあるけれど、客層が限定されてたり常連さんのたまり場になったり、割と内輪で成り立っているところがある。その善し悪しを問うつもりはない。でもブックカフェを特別視しないで、エキチカだからとかカレーが美味しいからとかゆっくり新聞が読めるからという理由で人が集まってきたら、きっとそこで読書の世界を変えるような動きがおこるような気がする。そんな妄想が揺り起こされる本屋さんだった。(奥山)

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2009年7月 6日 (月)

書店の風格/第36回 八文字屋本店

 びっくりした。
 八文字屋本店のある山形県は、記者の故郷である。幼少の頃から、父の車で街まで(市街地に行くことを「街に出る」という)遊びに行くと、必ず寄っていた八文字屋。なぜか大きなゴリラのフーセン人形がにこやかに出迎えてくれる八文字屋。専用駐車場に車が殺到するので、いつも「大沼デパート」に車をとめて徒歩で向かっていた八文字屋…。こんなに近くにあったから、気づかなかった。あなたがこんなに老舗だったなんて。

 八文字屋の創業は元禄時代。なんと300年もの歴史を持つ。紅花商人が東京で「八文字屋本」と呼ばれる類の浮世草子を仕入れてきて貸本を行った、というのが発祥らしい。山形、という名がつかぬ頃から、地域の文化の発信地として頑張ってきた本屋さんだ。

 店内は一階と二階にわかれていて、入ると棚は入り口に対して縦置きのものが多く、吹き抜けになっている部分があるため実際よりもかなり広く感じる。まず雑誌と新刊文芸が並ぶ王道の配置だ。他店に比べてシンプルでアットホームなところがないのは、POPを全く置かないから。そっけないと見るか、目線がごちゃごちゃしないで正解と見るか。本読みなら断然後者だろう。奥へと進むと左側は新書から文庫へのグラデーション、右側は一般書から専門書へのグラデーションが美しい。無駄のない構成が店内をいっそう広く見せることに成功している。本当は東京の中規模チェーン店ほどの面積もない本屋さんなのだが、洗練された品揃えが、それを感じさせない。

 二階はコミックと参考書のコーナーだ。そう、ワカモノ向けなのである。中央の吹き抜けをぐるっと囲んで展開される棚の向こうには併設されたカフェスペースがあり、購入した本をゆっくり読めるようになっている。高校生の頃、なぜか赤本を買い込んでいたことが昨日のように思い出される。受験期に赤本がこれでもかと平積みされる壮観さは、関東圏の書店ではあまり見かけられないけれど、ワカモノが日本全国どこにでも飛ぶ地方書店にとってはごくありふれた光景なのかもしれない。しかし、八文字屋に並んでいると、「参考書」もきちんとディスプレイすべき「商品」なのでは、と思えてきてしまう。
 あのころは、赤本も飽きずに眺めたものだった。本屋さんで売っているものは、全部が読み物であった。受験生なのをいいことに、受けもしない大学の赤本を何冊も買ったものだ。そんな衝動買い、きっと八文字屋でしかできないと思う。(奥山)

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2009年6月22日 (月)

書店の風格/第35回 書泉グランデ

 たくさんのファンが付いている書泉グループ。
 豊富な品揃えはもちろんだが、ファンが付くのはそれだけが理由ではない。デザインが2~3ヶ月に一度は更新されるビニールバッグや、動物柄、花柄などバラエティ豊かな栞も本読みの心をしっかり捉えて離さないのだ。

 そんな書泉グループの一店舗、書泉グランデは神保町にある細長い印象のビル。古書店や専門書店などが立ち並ぶ中でも異彩を放っているのは、大型の新刊書店にもかかわらず得意ジャンルがガッツリ確立されているからに他ならない。恵まれた立地と規模を惜しみなくさらけ出すのは、「鉄道」と「ミリタリー」に対してである。そんな心意気に、男性ファンは大いに応えるのだ。

 最上階の6階に降り立つと、昔ながらの書店の雰囲気に心和むと同時に不思議な感覚に襲われる。乗り物とミリタリーでワンフロアが構成されている光景なんてなかなか見ることができない。弊社から出ている斎藤典雄氏の『車掌の本音』シリーズも常時置いて下さり、日本で一番売っていただいている。ここは鉄道ファンにとって、情報の聖地なのだ。ネット社会になった今でも変わらない、アラカルトな魅力がある。

 さらにコミックやエンタメ系もかなり洗練された品揃えがされている。地下1階の売場は独特で、階段を下りれば脇のスペースはサインの山、エレベーターを降りるとタレント本や写真集、メディア論などのコーナーになる。現在は「Bejean + Beppin School バックナンバーフェア」を開催していて、なかなかない試みなので日頃興味のないジャンルだとしても観ていて本当に楽しい。この書店のフェアには常に注目しておいて損はない。
 奥の小部屋めいたところに進んでいくとコミックの棚が四方を占め、薄暗い迷宮に迷い込んだような錯覚に陥る。ジャンルを問わず様々なコミックが目に飛び込んできて、しかし安らいでじっくり選ぶ心境になれるのは落ち着いた照明のおかげだろう。どうしても「溢れる」印象のあるコミック棚は様々な色がチラチラと目に入ってくるが、それが抑えられている。

 大規模書店にして、専門店。そんな贅沢をかなえ、さらにお客様の支持を得ている書泉グランデ。今日も売り手と買い手の静かなコミュニティゾーンとして機能している。(奥山)

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2009年6月 8日 (月)

書店の風格/第34回 昭島 井上書店

 ゆるやかな書店。そんなふうに形容すればよいだろうか。
 井上書店は、昭島市にあるいわゆる「まちの本屋さん」だ。昭島駅から歩いて四分、本館とコミック館に分かれている。本館に入ると、絵本の読み聞かせ会のご案内や手作りのポスターが賑やかだ。正面には文庫棚、新書棚、右側の壁際に文芸や専門書の棚があり、左側は児童書が展開されている。どの棚も整然としていて美しい。
 一見普通の本屋さんだが、一般書店とは空気の抜け方が違う。なぜか。本の並べ方にその鍵があった。

 一般には背を向けて一冊ずつ挿してしまう新書や文庫の棚だが、贅沢にもほとんどの本を、面を見せて陳列させているのだ。挿してあるのはほんの一部、本と本の間に挟まっているくらいのものである。
 さらに文芸書・専門書の棚では、平積みにされてある本がほぼ2冊や3冊ずつ積まれてある。書店で平積みになっているというと、頭の中ではドカンと10冊、いや20冊、積み上がっている様を思い浮かべるが、ここでは3冊。この冊数でいいのであれば、ひとつひとつの商品を余ることなくアプローチできる。

 そして特筆すべきはPOPの存在だ。エンド台では余すところなくPOPが立ち並び、あるところでは棚に貼られ、あるところではプラスチックケースに入れて飾られている。しかも筆跡が様々だ。店員さん、アルバイトの皆さんが分担して、全員で書いているとのこと。本好きじゃなくても、字が下手でもとりあえずやってもらう。そのうち、どんどん上手くなってくるのだという。

 「本を並べる」というと、積んだり棚に順番に並べたり、という印象があるが、このお店は一点一点の書籍を「商品」として扱い、ディスプレイしている。当たり前のようだが、なかなか生まれない現場感覚だ。ブティックをつくることで生まれる空気の抜け感が、本を選ぶことに意識を集中させてくれる。昭島は書店の激戦区だが、一押しの本屋さんだ。(奥山)

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2009年5月25日 (月)

書店の風格/第33回 タコシェ

 奇跡のような書店だ。
 中野ブロードウェイの中、三階直通のエスカレーターをのぼる。まわりはまんだらけだらけ。そしておもちゃ屋、明屋書店などを抜けて行くとあるのが「タコシェ」。自費出版、少部数流通の雑誌や書籍を中心に集めた本屋さんだ。この国のプレスの、逆からの縮図。表現が好きだと、活字が踊るような本ばかりがひしめき合っている。ここに来ると、日頃感じている出版界の不況だの活字離れだのネットに読者が流れていっただのという議論が吹っ飛んでいってしまう。みんな、勝手に元気なのだ。本当に頼もしい。

 縦に長い店内はどう見ても5~6坪にしか見えないが、1万点ほどの品揃えだという。一点ものが多いからだろう。とはいえ、店内中央に細長く置かれた平台には常に何十点もの雑誌・書籍が平積みされている。特に記憶に新しいのが徳島発信の『ハードスタッフ』12号。

Hardstuff  11号から数えて、なんと15年めの発行だ。これが平台におよそ50冊、積み上げられている風景は圧巻だった。普通の書店であれば並べるのが非常に難しい自費出版の雑誌が、ここでは大事かつものすごい売れ行きを見せるのだ。

Mavo_2

 最近では編集家・竹熊健太郎氏が責任編集をつとめる『コミック マヴォ vol.01』。密かに話題沸騰だったが、やはり買うならタコシェかな、と思わせる。

塩山芳明氏の新刊『出版奈落の断末魔 エロ漫画の黄金時代』も発売当初から置いていただき、一般書店・チェーン店では考えられないほどの部数が売れた。書店さんとお客様と、そして著者。全ての顔がかいま見える表現系スケルトン空間が、確かに中野にある。(奥山)

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2009年5月11日 (月)

書店の風格/第32回 啓文堂書店渋谷店

★★★★★★★★

連載の前のコマーシャルです。
先月、新刊『出版奈落の断末魔 エロ漫画の黄金時代』を弊社から出版した塩山芳明が、来たる5月19日阿佐ヶ谷ロフト

「『マンガ論争勃発2』発売記念!! 昼間たかし東大入学お祝いイベント
永山薫vs昼間たかし これが現実だ!と、言われても・・・」

に出演します。

詳しくは↓
http://ameblo.jp/mangaronsoh/

お申し込みは
http://www.loft-prj.co.jp/lofta/reservation/reservation.php?show_number=106

出演者は
永山薫(批評家)
昼間たかし(ジャーナリスト/東京大学大学院情報学環教育部研究生)
塩山芳明(エロ漫画編集者・文筆家)
市川孝一(コミックマーケット準備会共同代表)
金田淳子(社会学者)
武田“コックローチ”圭史(赤ブーブー通信社)
中田雅喜(漫画家)
三崎尚人(同人誌研究家)
増田俊樹(映画監督)
大塚麻恵(女優)

と、たいへん豪華。一見の価値有りです。こぞってご参加下さい!

★★★★★★★★

 さてさて、渋谷といえば若者の街。ハチ公側はそんな感じだけれど、でもやっぱりビジネスの街でもある。特にそれを感じ取れるのは、ランドマークタワー側。ホルモン屋や焼き鳥屋の並ぶ通りはスーツ姿で賑わう。そんなところに、啓文堂書店渋谷店はある。

 ランドマークタワーの裏側からはいると、入り口をくぐったと思ったら下り階段がある。まるで要塞に潜り込むかのようだ。踊り場の棚が文化の発信地であり、チラシや試写会ハガキが豊富に並んでいる。なめるようにしながら売場へ下ると、まずは話題書が大きな平台にどかんとデコレイトされてある。面白いと思うのは、この構成だ。棚の1つ1つはもちろんのことなのだが、平台の1つ1つも、そのまま一個のジャンルを獲得しているのだ。店の中央通路に転々と平台が置かれてあり、新書台、文庫の台、フェア台とにぎやかだ。いまのフェアは「飲食店経営フェアー」。まわりの建物を思い浮かべると、何ともキャッチーだ。きっと休憩中にぷらり立ち寄る店主のためのお役立ち企画。この不況を、みんなでぜひとも乗り越えたいものだ。

 地下は、入って向かって右側が新書や文庫や軽めの本、左側が専門書としっかり別れているので、目的に従ってブラウジングしやすいつくりになっている。そして一階は、ドーンと全てコミックフロアである。だからといって落ち着かない印象は受けない。やはりオトナ向けのもの、コアなもの、マニアックなものが厳選されており、渋谷という土地を思わせる品揃えだ。

 ビジネスマン向けの書籍が多いかと思いきや、結構カワイイものや実用書もある。むしろ入り口まわりはそんなものが多く配置され、華やぎを持たせている。朝九時から夜11時までというロングな営業時間も、働く女性の味方。楚々とした店構えも魅力だ。ハチ公前、TSUTAYAやブックファーストがどうしても目立つけれど、ほっこりゆっくり本を選びたいなら断然おすすめである。(奥山)

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2009年4月13日 (月)

書店の風格/第31回 紀伊國屋書店国分寺店

★★★★★★★★

 連載の前にちょっとコマーシャル。
 塩山芳明の新刊『出版奈落の断末魔 エロ漫画の黄金時代』が、なんと!

東京堂書店 週刊綜合ランキングで第2位!!
(4月第一週)

三省堂書店神保町本店 人文・社会棚で第2位!!
(業界紙『新文化』4/2付)

となりました。
大きな展開をしてくださっている紀伊國屋書店新宿本店様、サブカル本のお取り扱いでは右に出るお店はないであろう中野・タコシェ様でも、たいへん良い売れ行きです。
大胆なタイトルなのに並べてくださった書店様、お買い上げ下さった皆様、本当にありがとうございます。
これからも、精進いたしますので、何卒よろしくお願い申し上げます!

コマーシャルを終わります。

★★★★★★★★

 「客足のとぎれない店」というと、皆さんはどんなものを想像するであろうか。
 行列の出来るラーメン屋さん? 限定スイーツが話題のデパ地下?
 「客足のとぎれない本屋さん」があるのだ。
 それが紀伊國屋書店国分寺店である。

 紀伊國屋書店国分寺店は、国分寺駅の改札を出て目の前にある「国分寺エル」という駅ビル内の書店だ。「エル」は服飾雑貨のテナントが多いビルで、さらにマルイと繋がっているため、国分寺一番のショッピングスポットとして機能している。そのなかにある唯一の書店が、ここなのだ。

 通常、出版社の営業マンが書店にお邪魔して担当者にご挨拶したいと思うとき、アポを取っていなければ店内を探して本人に声をかけることが出来ればラッキーだ。でもどうしても、そうは行かないときがある。お目当ての担当者様がレジに入っているときだ。
 そんなときはレジのお客がすっかり引けるまで待って、声をかける。
 ご本人が見あたらないときは、レジにいる人を避けて、声をかける。
 そのどちらも滅多にかなわないのが、このお店だ。

 なぜかというと、レジの前からお客がいなくなる瞬間がほとんどないからだ。平日の昼間、他のお店ならば比較的すいているような時間帯も、レジ前には行列が出来ていて、店員はみなレジ中に集中している。「ちょっと待とう」が「1時間後にまた来よう」になり、「また今度来よう」になってしまう代表的なお店だ。あまりに声をかけるのがつらくなってしまう。国分寺市民は全員このお店で本を買うよう義務づけられているのではないかと思いたくなるほどの混みようなのだ。

 このお店はどうしてこんなに人気があるのか? たしかに立地条件はよい。大規模な書店さんが国分寺には少ない。でも書店自体はたくさんあり、雑誌やベストセラーならそちらで間に合いそうだ。何故なのか。それは、この書店のバランスの良さにヒントがあると思う。

 まず、お店の入り口には新刊、ランキング本がずらっと顔を見せて並んでいる。ふつうならショーウィンドウにしたい豪華な設置だが、それをしない。お客様が直接手に取れるようにしてある。中にはいると、一般的な書店よりも見晴らしのいいことがすぐに分かると思う。棚の高さが、若干低めなのだ。そして横長の空間の、中間地点に入り口が位置するので、どのフロアに行くにも億劫さを感じない。見渡せば全体がすぐに把握できる程度の規模というのも魅力である。

 そして見たところ、どの棚も収集に偏りがない。文芸書、ビジネス書、人文、学参、文庫、児童書、どこを見ても平均的な品揃えで隙がないのだ。国分寺はホームタウンである。一般のお客さんが何を好むか、どこに何がどの程度置かれるのがよいのか、考えた末の平均値なのであろう。文具にたとえると、使い勝手よく手放せないボールペンのようだ。凝ったつくりの万年筆には最初は心躍っても、リピーターにはならない。

 書店激戦区の中央線西側で、生き残っていく術を見せられたような気がした。(奥山)

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