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2015年1月

2015年1月13日 (火)

「初老男の旧式映画館徘徊~シネコンに背を向けて~」 第9回/「ギンレイホール」差別や偏見とは無縁な公平で温厚な老映画マニアが最も嫌う名画座への屈折した恋文

  本連載を1度でも斜め読みした経験があれば(執筆者&担当編集者しか読んでないとは絶対思いたくない)、筆者が物事を偏見に基づいて判断する人間とは、誰1人として思わないはずだ。観念でしか存在しない中立的立場に立つなどとは毛頭言わないが、人種・出自・性別・主義・宗教を価値基準の根本とする、”アベシン風在特会的思考”の持ち主とは、最も無縁だとの自負が。過去の“大好評大河連載”の題名を思い起こして欲しい。「池田大作より他に神はなし」だ。極右”ナチスの手口”内閣の暴走エンジン、創価学会(公明党)のビッグ・ブラザーに対しても、決して敬意を失わないこの真摯さ。我ながら自分を素直にほめてやりたい。だが世間には極端な考えの持ち主も。筆者を”歩く偏見”扱いする人さえ現に。特に地元飯田橋の名画座「ギンレイホール」への評価は、知人で書評家の岡崎武志にも「極端すぎます!」と大ヒンシュクを。還暦を迎えるまで自らを温厚で公平なヒューマニストとずっと確信。昨年、面と向かってすずらん通りの「上島珈琲」でそう言われた際は、内心大々ショック!(お前はもらいっ子だと、15歳の誕生日に両親に告げられた少年の気分)。
Dscf5039_2  「ギンレイホール」。定員206名。入場料1500円(主として洋画2本立て)。老いぼれ割り引き1000円。並の名画座だ。特に場末の初老男から恨みを買う点はない(自分で言ってりゃ世話ねえよ)。上映作品は学生&OL趣味というか、こぎれいな恋愛映画や「岩波ホール」落ちの、海の彼方の社会派映画がメイン(絶対安全地帯評論家、堤未香趣味?)。気取りやがって! 確かに肌に合わない。が、それは上映する側の勝手。観る側も嫌なら行かねばいいだけ。「余は何故この名画座をここまで憎むに至りしか?」(眼を閉じて沈思黙考)浮上したのがウディ・アレン。特にファンではないが、他の館がいい番組を組んでない夜は、頻繁に上映するここへ(年に1度程度)。その度に99%不愉快な思いを。俺の顔を知ってる従業員が敢えてやってるとの、妄想モード入り寸前の驚くべき客観的数値だ(?)。憎悪への道への冷静な回顧を。
 (第1段階)。券売所の従業員が男女の区別なく不細工で無愛想。昔っから。不細工か否かは主観的問題だが、愛想の無さは絶対的かつ破壊的(「シネマヴェ-ラ渋谷」や「早稲田松竹」の対極)。客を見下し、私物をタダで見せてやると言わんばかりの傍若無人さ(一昔前までの「岩波ブックセンター」の従業員に酷似)。入れば入るで同類のチンピラが、「そこの方もこちらに並んで下さい」と、客を横柄かつエラソーに強制教育指導。どうせガラガラなんだし、いちいちうるせえよ糞野郎。徹底教育されてる「新文芸坐」の従業員ならこうだ。「次回お待ちのお客様、2列にお並び下さい。尚、お席は充分にございます」神楽坂の馬糞のように、ソファで読書してる老人にまで御指導に及ぶ事など絶対ない。たかが映画館の切符売りや便所掃除見習いが、年長者にインチキ道徳まで説くんじゃねえよ。ペッ!
 (第2段階)。ドチンピラ様方の御指導・御鞭撻でやっと入れてもらった場内。日活ロマンポルノを上映してた頃に比べ、確かに清潔になった。ただ建物の基本構造はそのまま(どう見ても築半世紀は経過した、「銀鈴会館」1階。上階は雑居ビル)。天井の低さとシート列間の狭さ、椅子自体の小ささで凄い圧迫感。この小屋に来る度に、閉所恐怖症がどういうものかを実感。更に右側に焼き肉定食の香りを漂わせたハゲ親父、左側に安香水をプンプンの醜女が座ったりすると、連合赤軍、いやイスラム国級のステレオ式リンチ。即刻帰りたくなるが、入場料1000円がそれを押しとどめる。人間椅子状態でニンニク臭いアレンを満喫後(……)、地下のトイレへ。無論館側の責任ではないが、ここでは必ずパンツを濡らす。小便切れが悪くなって大分たつから、放尿終了後はプロペラ状にブルンブルン回転させるのだが…。この小便切れの悪さは、(第3段階)にカウント出来るのかも(説得力ゼロ)。人間(映画館)どこで冤罪にはめられてるか、分かったもんじゃないな(お前が言うな!)。
2_2  番組センスの悪さ、従業員教育の欠如は確かに館側に責任の一端が。ただそれ以外の建物構造、客質に関しては言いがかりに近い面もあると、書いてて自らチョロリ反省。けれど最初の2つこそが、映画館の根本なのは本当。建物構造や客質は館側でも勝手に変更したり選べないが、上映番組や従業員教育は今日からでも出来るはずだ(数行前の反省はホラ)。ただゴールデン街商法と言うか、何の商売でも威張られるのが好きな客もまた多い。「ギンレイホール」はそういう懐の深いお客様に愛されてる映画館なのだと理解すれば、同館大嫌いの俺にも至極納得が行くのだった。(塩山芳明)

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