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2014年9月

2014年9月 5日 (金)

「初老男の旧式映画館徘徊~シネコンに背を向けて~」第5回/池袋東口風俗街ド真ん中の文化発信基地「新文芸坐」ヘの道。

  2014年8月20日(水)~29日(金)“役者生活60年 石橋蓮司映画祭”。今時こんな奇特な特集やってくれるのは、三原橋の「銀座シネパトス」なき後は、「ラピュタ阿佐ヶ谷」か「シネマヴェ-ラ渋谷」、そしてココ「新文芸坐」(池袋東口)しかない。高倉健、三船敏郎、勝新太郎、中村錦之助、小沢昭一、仲代達矢…新旧のオッサンスターや、個性的脇役の特集上映が1年中テンコ盛り。荒木一郎だ渡瀬恒彦だ、あるいは園子温監督、中村登監督には絶対に流れない、泥臭くて悪いかという“池袋のプライド”がプンプン。上映する側の趣味よりお客さまの好みが第一。背筋がピン。
 2本立てで入れ替えなし。一般1300円、学生1200円。老いぼれ割り引き1050円。友の会のポイントカードは、8ポイントで1回タダ(以前は10ポイントにつき1回タダだった。会員入場料を消費税アップに伴い、50円上げた際の措置と。どこまで良心的なんだ)。気取ってる割に強欲で血も涙も無い、「岩波ホール」や「神保町シアター」、前者の下請け風な「ギンレイホール」に比べ、まさに地上の楽園。開映後30分過ぎた入場はご遠慮をとチラシにはあるが、ほとんど黙認。この点も「シネマヴェ-ラ渋谷」を見倣い、野性的な池袋らしく完全自由化すべきだ(俺のような遠距離通勤者は、電車の都合で途中入場せざるを得ない日も。場合によれば2回通って1本を観終える上客でもある)。
Dscf3127  写真を見ればお分かりのように、パチンコ屋「マルハン」グループビルの一角に同館はある。赤字覚悟の文化事業であろう(場所は旧「文芸坐」跡地)。8月一杯で閉館した、ガード下の「新橋文化」と「新橋ロマン」のオーナーもパチンコ屋を経営と。両映画館の1ヵ月分の売り上げは、パチンコ屋の1日分にしかならないとのゴシップを以前聞いた。出来過ぎな感もあるが(数字の語呂が良すぎるぅ!)、両館にも頻繁に通ってた俺には、さもありなんと納得(後者の場合、最終回は普通でも3~4人。1人の場合もザラだった)。和田アキ子をマスコット婆さんにしてるうちは大丈夫か? しかし、カジノが出来て親会社の売り上げが激減した場合は?「新文芸坐」の将来が心配で心配で夜も眠れない昨今……(その頃はもうくたばってるっつーの!)。
 館内は暗く、映写状態も旧「文芸坐」とは大違いで安定。椅子がやや固いのが難点だが、「シネマヴェーラ渋谷」や「フィルムセンター」地下と違い、左右と連動してフラダンスは踊らない。問題なのがトイレ。造りが妙にシャレてて、小便器の数が少ないのには往生(休憩時間はたちまち、旧ソ連の食料品店並の長蛇の列が。初老客は尿意が我慢出来ない!)。濡れた手乾燥機の騒音もチョ-不愉快。「神保町シアター」そっくりのスカしたトイレは、池袋東口の名画座にはそぐわない。グッドアイディアが。同業者のよしみで「新橋文化」と「新橋ロマン」の、昭和30年代風トイレをそっくりもらいうけ(白いタイル&便器を基本としたオーソドックスさが粋!)、トイレスワッピングを躊躇なく実践するのだ。これでヨイヨイ老いぼれも一安心!(やっぱし駄目かい?)
Dscf3131  池袋駅から徒歩5分。「ヤマダ電機」や「ビックカメラ」裏手風俗街の、一番目立つ4差路角。女性客は行き帰りがチョイ怖いかも。よりJR線路寄りで細長い池袋駅前公園は、金銭がらみのナンパの名所として有名。奥はラブホテル街。風俗店こそないが、円山町ラブホテル街の「シネマヴェ-ラ渋谷」と、立地環境は酷似。客筋はかなり異なる。アンケートを取れば、「新文芸坐」の客筋は「シネマヴェ-ラ~」より、20歳は高齢な点が明らかになろう(推測で断定)。高齢客の1人である筆者は、「新文芸坐」に行く度に新宿にあった「昭和館」や、六区の「浅草新劇」を連想。両館共に男色家・女装者・老娼婦他が徘徊する異空間だった。幸か不幸か今のところ同館は、その事態を免れている(「新橋ロマン」も最後まで男色家の気ままなハントが横行、ノンケ客は実に落ち着かなかった)。
 マルハンの経営姿勢・従業員教育の成果だろう(あの明るく清潔なトイレでは、ハッテン場になろうはずもない)。館関係者以外でも、エレベーターで一緒になる従業員は、男女を問わず実にハキハキ態度良し。ロボット調で非人間的な程だ。自衛隊に体験入隊?(これまた勝手な推測)最初は近頃の若い者にしてはと感じ入ったが、次第に無気味に。同館、かつての「銀座シネパトス」同様、今も敗戦記念日前後には必ず反戦映画特集を。そういう貴重な「新文芸坐」で見る軍隊調従業員には(館関係者は割と普通)、正直違和感が拭えない。徹底した経営方針で利益を上げてる企業にしか、もはや文化事業は行えない時代なのだろうが。1050円で2本立て映画を見物させてやっても、トイレや従業員にまでケチを付ける、死に損ないフーテン老人もいるし。文化事業は経済的にも精神的にも忍耐か?(塩山芳明)

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2014年9月 2日 (火)

「新・幻聴妄想かるたとハーモニー展」で、かるたの世界一になれました

Photo_2  以前レポートした、『幻聴妄想かるた』の作者である世田谷の就労継続支援B型事業所「ハーモニー」。
 新たに制作された『新・幻聴妄想かるた』を紹介する展覧会が、千代田区の「アーツ千代田」で開催されています(9/7まで、金・土・日にオープン)。

 先週日曜日に展覧会内で開かれた「メンバートークと新・幻聴妄想かるた世界一決定戦」に参戦してきました!
 試合では「新・幻聴妄想かるた」を1チーム6~7人で囲み、いっせいに読み手の方へ目をみはり、耳を澄ましました。最初の読み手は写真家の齋藤陽道さん。最初に手話、次に声で読み札をあらわしてくれる彼に、みんな大注目。ちなみに奥山は手話がまるきりできませんが、3枚、4枚と読み札を重ねていくと「あ、わかった!」とひらめく瞬間もあり。みんなも同じようで、札が読まれた後に「はい!」という合図が出ると、札をとるバシッという威勢のいい音が響いていました。「はい」の合図がある前に札をとってしまうとお手つきになるので、「わかった!」と思っても、じっとガマン。たまらずお手つきする人もいて、会場は終始笑いに包まれていました。

 3人の手強い読み手があらわれましたが、見よう、聞こうと思えば見えるし聞こえる、想像力が大事なんだと改めて考えさせられました。日ごろ接している人たちに対しても、本当はこのくらい真剣に聞こう見ようとしなければならないのかもしれません。チラッと見て、チラッと聞いて、終わりにしているような気がします。

 そして気づけばチーム最多の札を手にしていました。3チームありましたが、それぞれ最多の人たちが等しく世界一! とのこと。最初は見学だけのつもりが、どんどんのめり込んで、いつも「ハーモニー」に関わっているだろう人たちを押しのけて世界一って……自分で呆れてしまいましたが、齋藤さんにシャボン玉で祝福され、なんだか幸せな気持ちになりました。

 会場内には以前に取材をさせていただいた、今は故人である中村さんの似顔絵などもあり、今でもみんなに愛されていることを思うととても切なくなりました。中村さんは「若松組」という組織に追われているという妄想に苦労していましたが、組織は天国まで追ってきたでしょうか。
3 Photo_3

 会場隅のテーブルには絵札も読み札もたくさん置かれていて、こちらはなんと、会期中にお客さんたちが描いていったものだとのこと。しかも、先に書かれて置いてある知らない人の読み札のために、絵札を描いていく人がいるというのだから、素晴らしい遊び心です。

 残りの会期は9/5、6、7の3日間ですが、6日(土)7日(日)には日替わりトークショー「幻聴妄想ラジオ局」が、最終日の7日には「メンバートークと新・幻聴妄想かるたノンビリ大会」(14:00~)があります。かるたの絵を使ったトートバッグなど、限定商品も販売中。
 秋葉原から徒歩7分、廃校を利用したギャラリーには他にもアートな催しがたくさん。詳しくは下記HPにて。(奥山)


「アーツ千代田3331」
http://www.3331.jp/

「ハーモニー」ブログ
http://harmony.exblog.jp/

主催「エイブル・アート・ジャパン」
http://www.ableart.org/

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