「初老男の旧式映画館徘徊~シネコンに背を向けて~」第5回/池袋東口風俗街ド真ん中の文化発信基地「新文芸坐」ヘの道。
2014年8月20日(水)~29日(金)“役者生活60年 石橋蓮司映画祭”。今時こんな奇特な特集やってくれるのは、三原橋の「銀座シネパトス」なき後は、「ラピュタ阿佐ヶ谷」か「シネマヴェ-ラ渋谷」、そしてココ「新文芸坐」(池袋東口)しかない。高倉健、三船敏郎、勝新太郎、中村錦之助、小沢昭一、仲代達矢…新旧のオッサンスターや、個性的脇役の特集上映が1年中テンコ盛り。荒木一郎だ渡瀬恒彦だ、あるいは園子温監督、中村登監督には絶対に流れない、泥臭くて悪いかという“池袋のプライド”がプンプン。上映する側の趣味よりお客さまの好みが第一。背筋がピン。
2本立てで入れ替えなし。一般1300円、学生1200円。老いぼれ割り引き1050円。友の会のポイントカードは、8ポイントで1回タダ(以前は10ポイントにつき1回タダだった。会員入場料を消費税アップに伴い、50円上げた際の措置と。どこまで良心的なんだ)。気取ってる割に強欲で血も涙も無い、「岩波ホール」や「神保町シアター」、前者の下請け風な「ギンレイホール」に比べ、まさに地上の楽園。開映後30分過ぎた入場はご遠慮をとチラシにはあるが、ほとんど黙認。この点も「シネマヴェ-ラ渋谷」を見倣い、野性的な池袋らしく完全自由化すべきだ(俺のような遠距離通勤者は、電車の都合で途中入場せざるを得ない日も。場合によれば2回通って1本を観終える上客でもある)。

館内は暗く、映写状態も旧「文芸坐」とは大違いで安定。椅子がやや固いのが難点だが、「シネマヴェーラ渋谷」や「フィルムセンター」地下と違い、左右と連動してフラダンスは踊らない。問題なのがトイレ。造りが妙にシャレてて、小便器の数が少ないのには往生(休憩時間はたちまち、旧ソ連の食料品店並の長蛇の列が。初老客は尿意が我慢出来ない!)。濡れた手乾燥機の騒音もチョ-不愉快。「神保町シアター」そっくりのスカしたトイレは、池袋東口の名画座にはそぐわない。グッドアイディアが。同業者のよしみで「新橋文化」と「新橋ロマン」の、昭和30年代風トイレをそっくりもらいうけ(白いタイル&便器を基本としたオーソドックスさが粋!)、トイレスワッピングを躊躇なく実践するのだ。これでヨイヨイ老いぼれも一安心!(やっぱし駄目かい?)

マルハンの経営姿勢・従業員教育の成果だろう(あの明るく清潔なトイレでは、ハッテン場になろうはずもない)。館関係者以外でも、エレベーターで一緒になる従業員は、男女を問わず実にハキハキ態度良し。ロボット調で非人間的な程だ。自衛隊に体験入隊?(これまた勝手な推測)最初は近頃の若い者にしてはと感じ入ったが、次第に無気味に。同館、かつての「銀座シネパトス」同様、今も敗戦記念日前後には必ず反戦映画特集を。そういう貴重な「新文芸坐」で見る軍隊調従業員には(館関係者は割と普通)、正直違和感が拭えない。徹底した経営方針で利益を上げてる企業にしか、もはや文化事業は行えない時代なのだろうが。1050円で2本立て映画を見物させてやっても、トイレや従業員にまでケチを付ける、死に損ないフーテン老人もいるし。文化事業は経済的にも精神的にも忍耐か?(塩山芳明)
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