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2014年5月12日 (月)

新連載 「初老男の旧式映画館徘徊~シネコンに背を向けて~」 第1回/お文化の香りタップリの「岩波ホール」様。

 名物にうまいものなしと言うが、映画館にも当てはまる。池袋東口の旧「文芸坐」は、全国区規模での名画座の代名詞だった。北関東の発情高校生だった筆者は、『日本読書新聞』に掲載される同館番組表を見ては、「東京に行ったら毎日通うんべ!」と“赤き胸”に誓った。牛乳屋の住み込み配達員で、上京後も毎日は通えなかったが、週末には必ず直行。昼番組終了後にオールナイトになだれ込み、日に6~7本観る場合も。館内は小汚いが、確かに安くて有り難かった。が、次第に不満も。同館は2スクリーン。メイン館(定員444名)が洋画で地下(定員230名)が邦画。映写状態の問題だ。メイン館は左右の両端が必ずピンボケ。左右が合ってる時は中央がボケた。映写機、あるいは館の構造的欠陥か? 地下はピントこそ甘くなかったが、しばしばスクリーンから映像が脱線。詳しい技術的問題は不明だが(重政隆文が詳しい)、上映サイズが違ってたのかも。安いけど、富岡銀座通りの「電気館」や「中央劇場」と同じだなと内心は。まだ純情だったのでクレームなどとても。オーナーは三浦大四郎という文化人志向の人物だったが、肝心な点はアバウト。その点、興行は素人のパチンコ屋さん(マルハン)が経営する、今の「新文芸坐」(定員266名)はハード&ソフト共に完璧。昔の「文芸坐」は上映番組こそ立派だったが、映写状態は失格に近かったと、当時の常連客として証言を(真実の歴史を語り継ぐのは年寄りの義務デス)。
3  名画座ではなく封切館だが、個性的単館の老舗として「岩波ホール」(定員220名)も名高い。岩波文化の洗礼はどんな田舎者でも多少は。マインドコントロールされてたせいか、愚作でもここで観ると有り難いような錯覚を。もはや見る影もないが、70年代までは岩波文化にもまだまだ威力が。各種大マスコミも現在、安倍“ナチスの手口”政権のド汚いケツを嬉々と舐めるように、同館上映作品を誉め上げた(幇間映画評論家も)。高野悦子支配人は、美人でもなく服装センスも最悪だったが(金はかかっていた)、マスコミ操縦術にはたけていた。群馬の水飲み百姓の小倅で、牛乳屋の2畳間(!)から駿河台の夜間大学に通ってた俺などイチコロ(やや熟女趣味も?)。社会人になり月給をもらい、都内3大ダーティ名画座(池袋の「文芸坐」「ピース座」、新宿の「昭和館」)以外の名画座や封切館にも通い始めると、素朴な疑問も次々に。
 館内は清潔で映写技術も安定、旧「文芸坐」に対するような不満はなかった。ただここで見物した映画は、イメージが共通して軽いなとはおぼろげに。理由は長く不明だったが、館内が異常に明るい点に後に気付く。避難誘導灯の明りが、画面を白っぽくしてしまってる(ピント自体はバッチリなのに)。腕時計の文字盤はおろか、文字が大きめの新潮文庫なら楽々と判読可能(実際、退屈な『楽園からの旅人』の際はそうした)。場内に傾斜も一切無いから、鑑賞に理想的な中央列シートに座ると、前の客の頭で白っちゃけた画面が欠ける事態も(「新宿武蔵野館」とココが本方面では都内最悪)。要するに、いくら岩波お文化の香りを発散しようが、客にすれば映写状態と見物環境が最悪のC級映画館。以上の決定的欠陥に比べれば、慇懃無礼な従業員の胸糞悪い接客態度などどうでもいい。ビル内上階の映画館にロクなもの無し。昔からファンの常識だが、10階の「岩波ホール」はそれを証明するために今後も奮起を(一切改修などせずに)。
2  旧「文芸坐」も「岩波ホール」も有名なだけで、実態はC級映画館。が、経済的側面を加味すると、後者は一挙にD級、ないしE級に急落。旧「文芸坐」は1987年当時で2本立て700円。「岩波ホール」は1500円。今は他の封切館に倣って1800円(参考までに「新文芸坐」は2本立て1300円)。これは仕方ないとして、問題なのが老人割り引き料金(シニアなんてド恥語は絶対使わない)。一般封切館は消費税値上げ前が1000円。4月からは便乗大幅値上げして1100円。むかつくが通常料金よりは一応700円は安い。と…と…と…ところが、「岩波ホール」は老人料金が何と1500円!(当然、4月以前も他館より遥かに割引率は低かった)何の事はない。当日料金が前売り券扱いされるだけ。昨今の同ホールは、老人が主人公の映画を意識的に選択して上映、それなりの興行を展開して来た(『木洩れ日の家で』『ハンナ・アーレント』他)。それが主要客様へこの仕打ち。半年後には「早稲田松竹」や「ギンレイホール」に降りて来て、半額以下で楽しめる。年寄りをないがしろにする、鑑賞環境も最悪な「岩波ホール」は、断固ボイコットする位の気概を60歳以上の映画マニアは持ちたい。ただ「早稲田松竹」も「ギンレイホール」も、劇場内は世間並に暗いので、新潮文庫は無論の事、最愛の岩波文庫も読めはしないが。(塩山芳明)

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