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2013年7月29日 (月)

鎌田慧の現代を斬る/第159回 再稼働にむかう原発を止めろ(1)

7月9日、原発再稼働にむけた安全審査に、電力会社4社が5原発10基を申請した。関西電力の大飯原発と高浜原発、四国電力の伊方原発、北海道電力の泊原発、九州電力の川内原発が、少しでも早く再稼働をして儲けようする電力会社の欲望が露骨にあらわれている。

 安倍政権も規制委員会がOKすれば、すぐに再稼働にゴーサインをだすと構えている。「安くて安定的なエネルギーを供給していく責任がある。規制委が安全と判断したものは再稼働していきたい」と、7月5日のテレビ番組で発言している。9日には、「今(原発を)動かしていなくても大丈夫だ、という考え方は間違ってる」とも語った。
 さらに彼は再稼働どころか原発の新規増設まで視野に入れた発言までしている。野田政権で建設を認めなかった中国電力上関原発について、記者から質問され、「新設についてどう考えていくかはこれから検討していきたい」とボカしているのだ。
 また1万件の点検不備がみつかった「高速増殖炉もんじゅ」についても、継続していく意向を国会でしめした。実現の可能性が薄く、さらにばく大なカネがかかり、危険な事故を何度も起こしているのに、撤退する気がない。
 彼の頭の中には、福島原発事故の教訓がまったく残っていない。そのうえ7月末の参議院選挙で自民党が大勝するという結果予測が、彼をより傲慢にしている。

 その一方では、福島県での子どもへの健康被害が報告されている。県がおこなった甲状腺検査で、甲状腺がんと診断された子どもが12人、甲状腺がんの疑いのある子どもが15人もいたという。17万5000人を対象にした検査で27人という数字は、およそ100万人に1~2人という通常の発生率を大きく上回っている。

 動植物への影響も無視できない。福島市のニホンザルの調査では、体内にセシウムを蓄積していたサルがみつかったばかりではなく、被曝したニホンザルの白血球と赤血球の両方が減少していることが確認されたという。とくに白血球の減少は深刻だと『東洋経済オンライン』(2013年4月3日)に報じられている。
 また、福島県内のヤマトシジミという蝶を調査しところ「羽が小さい」かったり、「目が陥没」したりという奇形が全体の12%にのぼったという報道もある。さらに恐ろしいことには、世代が新しくなるほど奇形の割合が増えていることだ。もちろん植物の奇形も数多く報告されている。
 これだけ多様な生物に悪影響を引き起こしている原発事故からなにも学ばず、ヤミクモに原発を推進するのは、人が死んでも儲け、という犯罪行為だ。

●原発村の住民が安全審査

 今回の事故ではっきりしているのは、膨大な規模の被害を発生している原発事故の責任を、誰も取っていないということだ。
 原発を推進してきた政治家はもちろん、原発の安全性をチェックするはずだった原子力安全・保安院はなにもしなかった。電力会社は補償金すらまともに払おうとしていない。

 再稼働についても、この図式は変わることはない。
 原発推進の経済産業省内に、原発の安全を司る部署があるのはおかしいということで安全・保安院は解体され、環境省に原子力規制委員会が発足した。省庁の利益からも政治家の圧力からも自由な組織になるとの期待もあったが、すでに再稼働にむけた安全審査が始まる前から、日程の短縮を発表している。
 先月末には、自民党の衆参両院議員でつくる「電力安定供給推進議員連盟」が提言を発表。原子力規制委員会に圧力をかける、国会の監督強化を掲げている。
 原発の推進圧力の激しさは、眼に余る。福島原発の事故以来、原発推進に国民から厳しい目が注がれていながらも野田政権時は、大井原発の再稼働を認めた。机上の空論であり、ただのシミュレーションでしかないストレステストを実施して、「安全だ」と保安院が太鼓判を押して、強引に再稼働させた。電力会社をはじめとする原発推進陰謀集団の圧力に、野田政権が抗しきれなかったのだ。

 原子力規制委員会のいびつさは、委員の人選にも表れている。5人の委員のうち3人が原子力村の人間である。田中俊一委員長は、福島原発事故直後、記者会見で反省の弁を述べた原子力村の住民の1人ではあった。
「原子力の平和利用を進めて、まさかこういう事態、これほど国民に迷惑をかけるような事態は予測していなかった。結果的にこういうことになっていることについて、原子力を進めてきた人間として、国民に謝らなくてはならない」(JCASTニュース 2011年4月16日)との心境を語った。
 が、その一方で、「100ミリシーベルト以下なら健康への影響は大きくない」「一番のリスクは被ばくを怖れるストレス」とも発言した無神経人間でもあった。
 つまり原発の危険性を訴える嫌悪する市民感覚の持ち主ではなく、原子力産業の利益の代弁者である。このような人たちが、原発業界からの圧力を受けながら、客観的な安全の審査をできるはずがない。

 また、新しい安全審査基準そのものにも大きな問題がある。それは事故対策が中心だということだ。たしかに「安全神話」に彩られ、事故はまったく起こらないという過去の姿勢よりは少しは進歩したが、事故が起きたら制御しようがない原発に、どんな安全基準があるというのか。
 実際、福島第一原発は事故から2年半近くたっているのに、メルトスルーした核燃料はどこにいったのかわらかず、高濃度の汚染水が地下を通って海に垂れ流している状態だ。
 新しい安全基準の1つの目玉である「フィルター付きベント(排気)設備」についても、たしかに緊急時に原子炉内の蒸気に含まれた放射性物質を取り除くフィルターがあれば、放射性物質の飛散は抑えられる。しかし福島原発の事故では、ベントが水素爆発の原因になった可能性も指摘されている。
 フィルターによって排気時の放射性物質を取り除いても、その後に爆発が起こって放射性物質が飛散するようでは安全とはいえない。

 もし、核燃料プールの冷却がうまくいかなければ、東日本一帯が避難地域になる可能性があった。プールの冷却についても偶然の幸運が重なって救われた状況を考えれば、小手先の安全審査基準がどれほど滑稽かがわかる。制御できないほどの危険な技術は廃棄すべきだ。(談)

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