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2013年7月11日 (木)

鎌田慧の現代を斬る/第158回 安倍政権の「悪霊」がばっこする(2)

●情報の集中は管理の強化
 しかも集中した情報は必ず外に流れてしまうため、いろんな犯罪に使われることが予想される。1936年に社会保障番号を導入した米国は、インターネットの普及にともない番号を盗んでの「なりすまし」が横行。政府の給付金を不正受給したり、銀行口座を不正にに利用する犯罪が激増した。
 2006~08年のなりすまし犯罪の被害者は1000万人を超え、年間の被害総額は500万ドルに達したという。その結果、共通番号とは別の番号で管理し、情報漏洩を防ぐ方策も採られている。また、イギリスでも「国民IDカード制」が2008年に導入されたものの、すでに廃止されている。

 一方、日本では3年後に規模を拡大し、民間活用へも門戸を開こうとしている。それでも当初計画にあげられていた民間医療での活用は、危険性が高すぎるとして先送りとなった。このような危険な法律にたいして、マスメディアは反対の声をあげない。
 朝日新聞の5月26日の社説にいたっては、「自分の共通番号を安易に他人に示したりしないなど、国民の側にも自衛が求められる」などと書いている。ドロボウを行動しやすくしておいて、個人に気をつけろというのはおかしい。
 少しでも危ないことがなくないよう国民の安全を守るのが政治だ。朝日新聞の論調は、狂犬を放し飼いを認めておいて「気をつけろ」と怒鳴りつけているようなものだ。
 こうした「歓迎ムード」の裏には、産業界の待望がある。初期投資だけで2700億円。維持費に年間何百億円もかかる。コンピュータメーカーやカードを印刷する大印刷会社など関連業界が手ぐすね引いて待っている。

 しかも安倍晋三首相は、マイナンバー制度で国民の基本的人権を危うくしながら、国の機密事項を漏らした人を厳しく処罰する「秘密保全法」の導入を狙っている。これはかつて廃案になった「国家機密法」の生まれ変わりである。国の情報は国民に公開せず、国民の情報は権力側がすべて吸収する。それは強権国家であって民主主義国家ではない。
 マイナンバー制度を考える上で、住基ネットへの接続を全国で唯一拒否している福島県矢祭町の決断は参考になる。6400人の町民を代表する町長が、村民の個人情報が流出するおそれがあるとして反対を貫き、抵抗をつづけているのは画期的なことだ。
 古張充村長は毎日新聞のインタビューに「お年寄りがカードを落としたら、預金も何もなくなってしまうのではないかと不安に思っている」(2013年5月18日)と答えている。当然の不安だ。さらに町が住基ネットを利用すると、5年間で1700万円の出費がかかることもあきらかにしている。

 国民に番号を付けて管理するのは、牛などのトレーサビリティとおなじだ。生まれたら耳に番号をつけて、店頭で販売される肉になるまで番号で管理される。人間が安全な肉を食べるために開発システムだ。マイナンバーは政府が国民を「食べる」ために、お墓の中まで管理するようなものである。トレーサビリティが牛のためではないように、マイナンバーも国民のためではない。これは自明のことである。
 またマイナンバーがICカードとして広く普及すると、個人を特定するためのIDカードにもなりうる。いつも所持していなければならなくなれば、それは恐怖政治である。

●安倍首相による「ガマの油売り」
 さまざまなウソの大義名分で政策を進める、安倍首相の「妄言」の中でも、最悪なのが原発にかんするものだ。彼は事故を経験したから日本の原発は他国より安全だと主張して、原発輸出を進めているのだ。
 わたしはこれを「ガマの油売り」と呼んでいる。刀で腕を傷つけたりして、効果のないインチキ商品を売りつける香具師の口上と、おなじようなものだからだ。
 現在、日本は南アフリカやアジア首長国連邦、トルコ、インド、ベトナムへの輸出を進めている。中でもトルコは地震国である。地震を発端にした原発事故が終息しないのに、危険をそのまま横流しするモラルが問われている。
 インドは原爆保有国であり、核拡防止散条約を締結していない。しかもパキスタンとの緊張関係のなかで、核開発が進んでいる。原発についてはインドより日本が進んでいるため、その技術が原爆に使われる危険性がある。

 現在、米国・フランス・ロシア・韓国などがインドへの原発輸出商戦を狙っており、それに日本が加わった形だ。安倍首相は首脳会談で「核実験全面禁止条約(CTBT)に署名・批准を促した」というが、シン首相は核実験凍結をつづける意向をしめしたもののCTBTの締結を約束していない。被爆国である日本が、インドの核拡散に協力していいのか。被爆者の傷に塩を塗るやり方である。
 また、インドに原発を売ることは、中国とインドの緊張関係に影響を及ぼしかねない。大局的には、日本と中国は協調していくしかない。米国と一緒に中国と対立しようと願っても、米国は中国と商売しようと思っている。結果として日本はアジアの孤児になってしまう。中国嫌い・韓国嫌いの安倍政権が、核技術を振り回すのは危険だ。
 フクシマでは、原発の被害で故郷にも帰れないし人がおり、子どもの内部被爆を心配する親がいて、原発周辺で被爆しながら働いている労働者がいる。そんな状況の国が、他国と争ってまで、原発輸出に力を注ぐべきか。

 また原発製造メーカーの製造物責任という問題もある。日立製作所を中心とする企業連合は、イギリスで原発建設を計画する会社を買収した。事故によって製造物責任を被る可能性があるとして、やがて保有株式は50%に下げる意向である。原発は売り込みたいが、事故の責任は取りたくない。日立は廃炉を決定した米国原発会社から、損害賠償を請求されそうだ。

●解雇を簡単にする限定正社員
 「限定正社員」制度は、正社員の雇用を、企業に有利なように改悪したいという財界の悲願が込められている。
 すでに忘れさられているが、2005年には、「ホワイトカラーエグゼンプション」を経団連が提言した。労働基準法により、労働時間は1日8時間、週40時間以内と定められている。こうした制約を外そうとしたのが、ホワイトカラーエグゼンプションだった。採用労働にしていく労基法の歯止め取りさる露骨な法律案は、「過労死促進法案」として反対運動も盛りあがり廃案となった。
 今回、問題となっている限定正社員は、勤務地や仕事内容、労働時間が限定された労働者を指す。この限定正社員の解雇の基準を緩くするのが狙いとなる。
 労働者派遣法の改悪により、派遣できる範囲は大幅に広がった。しかし業務を派遣に任せるのは最長3年という法律的な歯止めがある。それを突破しようとしているのが、この制度といえる。

 労働基準法は解雇の要件を厳しく定めている。そのため正社員を雇った場合、仕事がなくなっても、内部的柔軟性ともいわれる、配置転換による雇用の維持を目指す。そうやって大企業は生涯雇用を守ってきた歴史がある。ところが限定正社員の導入により、仕事がなくなったら解雇ができる仕組みができあがる。
 しかも制度ができれば、本当の正社員を限定社員に格下げする可能性が高い。正社員を限定社員にして、仕事がなくなったらクビ。「名ばかり社員」である。労基法に守られた正社員をクビにするために、限定正社員制は使われることになる。

 西欧諸国では、年間数十万の解雇紛争が労働裁判所で扱われる。しかし日本では年間1600件程度でしかない。労働局への相談件数は10万程あっても、あっせんの申し込みは4000ぐらいだという。しかも金銭解決は、平均17万円である。クビにして17万円はひどすぎる。つまり現状でさえ日本の中小企業は解雇自由なのだ。それを大企業まで広げるのが限定正社員の制度である。これは大企業をブラック企業化する法律だ。
 しかし政府の規制改革会議は「非正規社員を社員化をうながすのが狙いだ」、あるいは「限定正社員は正社員にする」などと宣伝する。しかし、それは本当の意味で「限定」された人だけの幸運である。

 社会を安定させなければ消費はふえない。少子化にも歯止めがかからないだろう。社会を安定させるためには、非正規社員を社員化するしかない。しかし経営者は自分の地位の維持と自分の利益しか考えず、社会の安定など考慮しない。
 マイカーも買えない、マイホームも買えない、マイナンバーの監視体制だけが残る。アベノミクス崩壊の裏で、日本はそんな社会にむかっている。(談)

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