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2013年5月 1日 (水)

書評『苦縁 寄り添う宗教者たち』

Kuen 『苦縁 寄り添う宗教者たち』(北村敏泰著、徳間書店、2013年3月)は震災直後から東北へ飛び、主に宗教者への取材を続けたジャーナリストの手記だ。僧侶に関していえば、49日目や1年などの区切りに法要でお経を唱える姿がメディアで紹介されたが、そのほかの活動についてはほとんどといっていいほど報道されていない。しかしこの本には、自らも被災し、歯を食いしばりながら復興に奔走する宗教者の姿が40数例、しっかりと刻みこまれている。

無償で火葬場へ読経へ通い詰める。遺族に礼をいわれることはほとんどない。しかし故人のために読経し続ける僧侶。
傾聴ボランティアをしたいと、傷ついている人たちの話を引き出すためにお茶やコーヒーを用意して待つ僧侶。
肉親の死に心が追いつかず「幽霊でもいいから会いたい」と泣く人々に、そっと寄り添う僧侶。

普通に暮らしていると宗教者との接点がほとんどないのが日本だ。とくに僧侶に関しては「葬式のときにお経をあげに来てくれる人」という認識くらいしかないだろう。この本に出てくる宗教者は、私たちと共に苦しみ、悩み、そして闘っている。1人の人間として被災者に寄り添い、原発に怒り、故人らに祈りを捧げているのだ。

未曾有の災害に立ち向かう彼らは、常に自問自答している。その問いは深く、答えはなかなか出ない。ただ、神に仕える、仏に帰依する彼らの軸はブレることがない。軸がブレなければ、しなければならないことはいずれ固まってくる。信仰は自らの思考の限界を超えて、強い行動力を我々に与えてくれるのだ。「信じる」ことの価値は何か。その源泉を見つけた気がした。(奥山)

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