OL財布事情の近年史/第106回 恐るべし「美顔器」の罠!10年代に突入(後編)
連載「OL財布事情の近年史」は、2013年12月に単行本『女と金~OL財布事情の近年史~』として発売されます。
各年代のOL像を、イラストを交えて解説する辛酸なめ子さんのプチ時評つき。辛酸さんには、カバーイラストも描いていただきました。
エピローグには最新の女性誌お財布事情が書き下ろされ、女性誌創刊号の画像50数点を掲載。30年ぶんの「OLの財布の中身」が一気に見える本となりました。
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前回の続き。
ゼロ年代半ばの美顔器族のその後を、『Oggi』連載「私の預金通帳」に見ていこう。いや、そんな族はいませんけどね。美容にファッションに内面...自分磨きへの過剰な追求にハマったことを封印したい族、というのは少なからずいることだろう。
2007年7月号、IT系情報会社勤務A子さん31歳、食品販売、人材派遣、IT2社を経て現職2年目。会社の急成長や上場の瞬間に立ち会い「株価が上がると自分までお金持ちの気分に」なり、高い家賃の物件に引っ越したり買い物したり熱に浮かされていたが、ライブドア事件で株価は1/3。「当時の買い物約100万円はかつての貯金から払い、株は売れずに持っている。「家賃に首を絞められている状態」だが、伊勢丹で「年間100万円使って割引率10%にさせるのが今年の目標」で、「電車賃を惜しまず伊勢丹詣でを続けている」というねじれ構造である。
2000年代後半になってくると、登場する読者の年齢層も上がり、30代・独身が増えてくる。2009年7月号の編集プロダクション子さんは33歳。編集プロダクション2社目で手取り37万円だから悪くはなさそうだが「“一生独身の場合、60〜88歳の間に必要なお金は5,6000万円という新聞記事を読んでから、眠れないんです」と怯えている。「就職氷河期を耐えれば次が開けると思って頑張ったら」3年目から給料が上がったが、それで歯列矯正と英会話とマンション購入につぎ込んだら、「今度は世界恐慌。給与アップは止まり、支払いが重くのしかかっている」。歯は2年間の矯正で180万円。マンションは3年前に「今が底値」と聞いて衝動買いしたが、今はさらに下がっていて、月の支払いは10万強。その他、生命保険会社の年金2本に加入し、約3万8000円。そして通帳をよく見ると「自動融資」の項目で、4000円、18000円、と月に何度か入金されている。残高がゼロで引き落とせないときに、預金を担保に融資しているのだろう。そして月イチで10000円の「ご返済」、つまり元利均等払いってことか。住宅とで、二重ローン。おっかねえ!
ビューティ消費が増えるとともに、それにまつわる職業も増えて来た。が、過剰消費につながる仕事が手堅いものであるはずもなく。2008年4月号、エステサロン勤務38歳のJ子さんは、金融、建築会社などに計7年、30歳から化粧品会社で派遣、医療事務とメイクを勉強して1年前から現職で手取り給与10~12万円、都内でひとり暮らし。プロフィールからすでに辛い。「'90年代の大手企業時代、'00年代の派遣時代、昨年からのエステ見習い時代、J子さんの給与は各時代を減るごとに減っている」。将来はサロンを開くつもりだが、貯金70万円しかないので「エステ勤務のない日にほかのバイトをしようと思っています」。減るいっぽうの通帳を見るのがつらく、1年以上記帳をしていない、という。
美への追求が女子の経済を苦しめた。ところで最近会ったお洒落メンズが、妻に誕生日プレゼント何がいいか聞いたら「美顔器」と言われて一気にテンションが下がった、と言っていた。キレイの動機は男性受けしない。だから自分で買わなきゃならない。そしてキレイになったあとに残るものは。。。という話である。(神谷巻尾)
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