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2012年11月30日 (金)

OL財布事情の近年史/第105回 恐るべし「美顔器」の罠!10年代に突入(前編)

連載「OL財布事情の近年史」は、2013年12月に単行本『女と金~OL財布事情の近年史~』として発売されます。

各年代のOL像を、イラストを交えて解説する辛酸なめ子さんのプチ時評つき。辛酸さんには、カバーイラストも描いていただきました。

エピローグには最新の女性誌お財布事情が書き下ろされ、女性誌創刊号の画像50数点を掲載。30年ぶんの「OLの財布の中身」が一気に見える本となりました。

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 ITバブルの頃に入社して、プチ贅沢を楽しんでいたら、20代後半で景気悪化、昇給も正社員待遇も、会社の存続すら危うくなって、首が回らなくなる女性続出、というテン年代の幕開けであった。
 ところで前回、担当子より「就職したてで美顔器って、どれだけアンチエイジングな人なんでしょう」とコメントがあったが、確かに美顔器だの化粧品フルラインだのエステだの下着だの、ビューティー関連への支出がやけに目立つ。そういえば、誰もがネイルに力を入れ始めたのも、2000年代半ば頃からでは。コスメに特化した雑誌も、1998年創刊の『Voce』に続き、2001年に『美的』、2004年に『MAQUIA』が出て、美容への興味が高まってきた時期だった。時代はアゲアゲ状態、美顔器に走る女子も誕生してしまったことだろう。
 そんな時代の変化を感じられる記事を見つけた。『Oggi』の人気連載、「私の預金通帳」である。ひとりの預金通帳のコピーを載せ、その持ち主の女性にインタビューするというお財布記事で、今回この「美顔器から5年後に破綻」の時代検証をするのにまさしく役立った。浮かれていた時代から、クライシスへの一連の流れを見ていこう。

 2004年2月号、社長秘書L子さん(27歳)、手取り給与10万円。社長とは美容機器や健康食品を扱う実業家のカレで、秘書の仕事は「カレのおうちで料理作ったり、レシート整理したり」。カレのおうち(自宅兼事務)の家賃は100万円らしい。お給料の10万円は習い事の「料理とお華と陶芸と紅茶」に使うが、洋服などはママが出してくれ、カードの支払いのためにあらかじめママが入金しておいてくれる。通帳にある分割払い引き落としはイヴ・サンローランのシャツとスカート、ラ・ペルラの下着30万円を4回払いに。すでに全額ママからもらい済みという。いやー、ほんとに実在してたのかと思うような暮らしぶりだが、美容機器バブルもいたんだろう、期間限定ではあろうが。

 まだまだ続きます。2004年10月号、家具づくり職人T子さん(25歳)、手取り20万円。大学卒業後のフリーター時代にカードローンで総額50万円。「大きな買い物は美顔器くらいで、あとは欲しいCDや服を買った程度なのに、いつの間にか...」。フリーターでも買ってた美顔器。しかも「使い方がややこしく、10回試して押し入れ行き」。さらにこの人「今話題!沖縄コスメ」の新聞広告で化粧品を衝動買いしてる。「母に怒られて、カードを没収されました」。よかったね。
 2005年6月号、飲食業勤務B子さん(26歳)、短大卒業後派遣3年→販売職→現職、手取り21〜25万円。「『生まれ変わる』とか『自分を変える』ものには、財布のひもが緩むんです」と冒頭からヤバいが案の定、ゴスペルのレッスンから始まり「ツボ治療カラーパンクチャーで、15万円。最近はスチーム美顔器に7万円」。なのに「美顔器の効果が出る前に花粉症で肌の調子は最悪」って、もうやめてー。「手に職を付けて一生困らない自分に変わりたい」「体質改善食品や自然はコスメ・洗剤など、どれほどお金をつぎ込めばいいのか」。今現在のB子さんが大変気になるところである。
美顔器の罠は、しかし意外と女性の財布問題の核になっていた。発見である。(つづく)(神谷巻尾)

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