OL財布事情の近年史/第95回 なんだか財布記事が大ブレイクした!お金への愛憎入り乱れる09年(前編)
連載「OL財布事情の近年史」は、2013年12月に単行本『女と金~OL財布事情の近年史~』として発売されます。
各年代のOL像を、イラストを交えて解説する辛酸なめ子さんのプチ時評つき。辛酸さんには、カバーイラストも描いていただきました。
エピローグには最新の女性誌お財布事情が書き下ろされ、女性誌創刊号の画像50数点を掲載。30年ぶんの「OLの財布の中身」が一気に見える本となりました。
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カツマーやら品格やら、生き方指南でも騙しが効かなくなってきた2008〜2009年、女性誌に残ったテーマといえば。もちろんお金であった。まあこの頃のお金関係の記事の多いことといったら。定番の『With』『MORE』はもちろん、『日経ウーマン』にいたっては多いときは隔月でマネー特集組んでるんじゃないかといった勢いである。
『MORE』2009年9月号「もうみんな始めてる!HAPPY♥節約ライフ」では、直木賞作家の山本文緒が「ていねいな生活から得られる宝物」と題したエッセイで、「不景気になってよかった、と言ったら言い過ぎでしょうか」「お金さえあれば何でもできる、という異様な万能感に世間はあふれ返っていました」「この不況がなかったら多くの人は、働いて生活費を稼ぐということがどういうことか、まだ真剣に考えなかったかもしれません」と、さすが作家の言葉と思わせる表現で説いているが、つまり生きていくための金のことを考えないと、マジやばい事態になってきた。
『日経ウーマン』2008年4月号「働く女性1000人のリアルマネー白書」では、「すっきりシンプル節約術でお金を永遠の味方につける!」とキャッチコピーこそ爽やかだが、読者976人へのアンケート結果は、非常にシビアである。
平均年齢31.9歳で、平均手取り月収24.1万円というのは、このご時世低いとはいえないが、かつての同誌読者の、バリバリのキャリアウーマンを思うと、ずいぶんこじんまりしている。1ヶ月の生活費の平均を見ても、食費2万7216円、交際費1万7738円、服飾費1万4207円、化粧品代6540円と、いたって地味。反面、貯蓄にはどん欲で、毎月の貯蓄は4万9649円 投資1万5472円と、収入の四分の一以上を蓄財に回している。そのおかげで、貯蓄額平均465.1万円と、年収以上の額を貯めているのだ。
こんなに堅実な生活をしているのに、「〈ワーキングプア〉も他人事ではないと思う?」という問いに、「はい」と答えたのは78.7%。「日々の生活の中で、〈格差社会〉を実感することがある?」も78.7%が「はい」である。31歳で、貯金もあるのに、貧困と隣り合わせだというのか。
「貯蓄の目的は何ですか?」といえば、「老後の生活のため」44.8%、「リストラ・失業など不測の事態に備えて」31.7%が上位、旅行(25.8%)や結婚(24.2%)より、まず生活防衛だ。「将来実現したい〈夢〉を教えてください」は、結婚、出産を僅差で抑えて「収入アップ」が49.3%で1位。やはり自己完結でいい生活をするのが、平成女子の夢なのか。とはいえ、「ずっと働き続ける」は34.9%とぐっと下がる。ずっと働くのは当然のことで、夢なんかじゃないってことか。男性は働くのが夢、なんて言わないもんね。女性は選択肢がたくさんある、結婚も出産もキャリアも自分次第、なんて言ってた時代が夢だったのである。(つづく)(神谷巻尾)
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