元サイテイ車掌の田舎日記/現役車掌とのひととき
○月×日
んだ。
とにかく来た。とっても楽しかった。
チャリ部隊5人には無情の雨となってしまったけど。1日目は村上でチャリを組み立てて走行は雨の中。濡れ鼠で一泊したところが新潟との県境の鼠ヶ関(山形県)。こうなりゃもう「チュウ」のお湯割りしかない。
翌日起きるとまたも雨。結構な降りだったという。隊長は起きぬけのウィスキーを半ば自棄クソ気味で呷ったそうだ。もうこれで酒田までの残り60キロを走る気は失せ、しょうがない、雨の日はしょうがない~と口ずさむと、「わが社の車(電車のこと)で行きましょう」とあっさり決まったらしい。
それでも初参加の若い後輩2人は「僕らは走ります」という正しい選択をして別行動。いつものロートル3人はチャリを畳み、結局電車でやって来た。
家から程近い、老舗割烹「伊豆菊」で再会を祝し、昼前からの大宴会となった。ほんとに隅から隅まで酒田を飲んで酒田を食べてくれた。海山の旬のものを旨いの連発で大喜びだった。思い出話には大笑いの花が咲いた。
後輩らは午後2時頃に無事元気に到着して場所を我が家へと移動。家ではボブ・ディランや高田渡のCDやレコードを引っ張り出しては好きなだけ聴き、後輩は拙著を読んだりしていたようだが、おれはもう殆ど沈没状態。
気を遣ったのだろうね。結局は泊まらずに秋の再会を約束して、酒田18時発の最終の特急「いなほ」で帰って行った。おれはこの時、入場券を買ったのだが、10円はいつ上がったのか140円になっていた。
23時半頃に東京の自宅に着いたとそれぞれメールが入っていた。「秋の漁の手伝い、おれにもさせて下さい」「ノリさんの楽しそうな顔を見られてよかった」「癒しののりちゃんありがとう、秋にまた」と。
しかし、なんだな。乗務員の勤務が不規則なのは仕方がないにしても、長時間連続乗務にはみんなよく耐えている。
つい最近、中央線折り返しの東京駅ホームの車掌詰所(電話、机、椅子が各1つ。長くても数分しかいない小さな休憩所)がクソまみれになっていたのだという。トイレが間に合わなかったのだ。証拠の隠滅!? 掃除ぐらいしろってか。それは無理。だって、すぐに折り返しの発車時間なのだから。なんて気の毒なことだろう。ほんとに笑い事では済まない。こんなことは首都圏のJRではよくあることで、ただ表に出ないだけなのだ。
昔は乗務員室でクソをしてこそ一人前などといわれていた。人間の尊厳もあったもんじゃないが、今では若い女性車掌も多い。男の世界だった国鉄の職場はJRになりすっかり様変わりした。
おれは乗務員は若いうちに降りて事務や駅員になった方が良いといつも思っていた。実際、事務係などの試験も受けた。が、受からず、また希望も聞いてもらえなかった。同僚たちの答えは決まって「今更」だ。何十年と乗務をして「今更」新しいことなど覚えたくないのだという。それもよく分かる。でも、身体が大事だろう。
使い捨てが当たり前の世の中だ。まるで機械のように人間が扱われている。止どまることのないコンピュータ時代。おれたちにはもうついて行けない。ただの飾り気の社会じゃないのか。人間味がどんどん薄れて、人の心も感じられない世の中に移りゆくような気がしてならない。
そんな東京とはおれはおさらばしたけど、不平不満が渦巻く一方で、誰もが皆耐えて耐え抜いて生きている。
感傷に浸るのもいい。夢を見るのも大事なことだ。でもね、現実をよく見ろ。頑張れ。おれは頑張った。負けるな。おれは負けたけど。挫けるなよ。おれもまだ挫けちゃいない。
また会おう!!(斎藤典雄)
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