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2012年5月15日 (火)

冠婚葬祭ビジネスへの視線/安置難民を救う「死者のホテル」りすセンター・新木場

 病院で臨終を告げられてから霊安室に移動し搬送するまで、どのくらい時間の余裕があるかご存じだろうか。
 一般的には、遺体の処置時間を含めても2時間程度。霊安室には1時間程度しかいることができない。なぜか。病院に用意されている霊安室の数が少ないためだ。中規模病院でも1~2体程度、5体以上置ける病院などほとんどない。
 だからこそ各病院では葬儀社との迅速な連絡体制を整えているのだが、そうするとどうしても葬儀社の選定は病院主導になる。古くから付き合いがあって間違いのないところ、いつでもすぐに駆けつけてくれるところ……しかしその葬儀社は、本当にどんな遺族にとってもベストな葬儀社といえるだろうか。
 いったん自宅に連れて帰り、ゆっくり相談することができる人は、葬儀社には「自宅への搬送」だけをお願いすればよいだろう。でも、誰もがそうできるわけではない。一度ある葬儀社の安置室へ運んだ遺体を別の葬儀社へ移動するのは精神的にも経済的にもたやすいことではない。
 そんな「安置難民」の悩みを払拭するのが、りすセンター・新木場。遺体の冷蔵安置を行う施設であり、30名ほどまでの葬儀であれば十分に可能な会場も整っている。今回、センター長の花田さんと職員の近藤さんにご案内いただいた。

 りすセンター・新木場は、新木場駅から車で7分程の立地にある3階建ての建物だ。1階が安置室になっており、37体を収容可能。依頼すると白い搬送車で迎えに来てくれる。遺体は吸水シーツに取り付けるバーコードで管理し、室温5℃・湿度80%に保たれた保冷室に安置される。室内には滅菌灯がついていて、マイナスイオンを発生させる装置で空気を清浄に保っていた。
 そして安置室の手前は「陰圧室」になっている。「インアツシツ」という聞き慣れない言葉に首をかしげていると、近藤さんが何かのスイッチを押した。「ゴー」という音とともに、排気口から部屋の空気が出ていくのが分かる。室内の気圧を低くすることによって排気がなされ、フィルター処理を経て外へと排出されるしくみになっているとのこと。万一、何かの菌に空気が侵されたとしても安心だ。
「温度、湿度、滅菌管理がここまでしっかりしているのは、日本では大変珍しいのではないでしょうか」と近藤さんが言う。確かにそう思う。いろんな斎場を取材してみたが、ここまでハイテクな安置室は見たことがない。
Photo  2階はお別れ会などのための会場で、パーテーションで区切られた小ぶりの部屋が3つある。パーテーションを外せば30名程度は収容できるとのことだ。部屋の手前は受付や故人の思い出コーナーなどを設けるスペースで、要望があればスクリーンを配置し、ビデオなどを流すことも可能だ。
 3階もお別れ会などの会場だが、こちらは畳。20名程度の会葬が可能だ。故人に一晩中付き添いたいという人は、この部屋で見守りができるとのこと。寝具などを使いたい場合はレンタルとなる。
「例えばご安置のあと、ご遺族はこの3階のお部屋でゆっくりと葬儀について話し合っていただく。葬儀社に見積もりを依頼する場合は、それが妥当な金額なのかということもアドバイスします」と花田さん。つまり葬儀の相談員が脇についていながら葬儀社をじっくり選べるわけで、こんな心強いことはない。これが葬儀社の安置施設だったら、自社の案内しかしないのだから。
「ご利用は私共の母体である『りすシステム』で生前契約をし、ご自分で葬儀をプロデュースして逝った方のご要望通りに祭壇や棺を手配して葬儀を執り行う、というものがほとんどです。しかし喪主となる立場の方にも、故人との最後の時間を作り出すためにこういった施設があることを知っていただきたい」と近藤さん。
 お2人とも穏やかで、こちらの質問にしっかりと答えて下さるのはもちろん、記者の感想などにも頷きながら真剣に耳を傾けて下さり、聞き上手な男性方でした。「毎月12日にはセンター内の見学会もあります。ぜひ施設内を確認するとともに、実際にお手伝いをする私たちの顔を見ていただきたいです」とのこと。自分の死後、確実にこの2人が葬儀の手伝いをしてくれると知っておけば、確かに安心だろう。

 遺体保管は一泊7,350円、面会が一回につき1,050円。会場は規模により1時間2,000円(10名程度)、3,000円(15名程度)、5,000円(30名程度)。葬儀なら準備時間を含めて3時間ほどあれば施行できる。
 遺体保管の料金は相場かやや低めなくらい、ということだが、こちらに保管ができれば最先端の設備で見守りをしてもらえる上、葬儀社社員ではないスタッフに心おきなく相談ができる。そんなところは、日本にここだけと言っていいだろう。(小松)

■連絡先…りすセンター・新木場 TEL 0120-373-959

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