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2012年4月10日 (火)

東京みくじ巡り/千束稲荷神社

Senzokuinari  鷲神社の近くに、5千円札の樋口一葉の『たけくらべ』の作中で、子供たちが遊んだ神社として有名な千束稲荷神社がある。ここは吉原が近いから華やかなのかと思っていたらそんなことはなく、住宅街の中にひっそりこぢんまりと佇んでいて「華やか」という言葉からはかけ離れている場所だった。千束稲荷や鳳神社、件の吉原もそうだけど行くのに手間がかかる。電車なら日比谷線三ノ輪駅から徒歩、または浅草からバス。選択肢が少ない。

 境内は狭いながら余計な装飾がないせいで思ったより広く感じられた。拝殿も立派できちんと世話がされている。印象的だったのは、入ってすぐにある樋口一葉像。ゆかりがありますということが一目でわかる構造になっている。なんて親切なんだ。しかも、この親切具合は一葉像だけでなくみくじにまで及んでいる。なんと、みくじが賽銭箱の横に設置されているのだ。
 みくじ設置場所といえば、小規模の神社では社務所、中規模以上だと神札授与所か、独立してあるのが常識だ。しかし、千束稲荷はその常識を打ち破っているのだ。このメリットは大きい。セットになっているおかげで移動する手間が省け、さらに賽銭箱にお金をいれ、願掛けした直後に運だめしができるのだ。せっかちな江戸っ子に向けた神社側の配慮なのかもしれない(省スペース化という見方もある)。
 江戸っ子といえば“粋”だが、置いてあるみくじがまたいい。白黒印刷の味気ないものではなく、「華みくじ」という少し高いけどカラフルでかわいい入れ物に入ったものを採用している。これを置こうと提案した人、いい仕事してるねぇ。拝殿は木造で使われる色味も少ないし地味。しかし、それが功を奏して華みくじが引き立てられるので、思わずお金を入れてしまう。もしかして、江戸っ子への配慮や粋と見せかけた神社側のビジネス戦略だったりして。

 本題のみくじだが、みくじそのものは至ってふつう。運勢は大吉。どうやら私の真価が周囲から認められるらしい。発揮できる真価があるかは謎だが、努力や苦労が実を結んでくれるのはありがたい。最近よく目にする「目上の人から引き立てられる」だが、なかなかそれを実感できない。気づいていないだけかもしれないが、アンテナを張り巡らせてみようと思う。
 注目すべきはみくじではなく、お守りのような作りの入れ物だ。開くと願い事を書くスペースがあるのだが、叶えるには信心と努力が条件になっていて、一筋縄ではいかない仕組みになっている。
 そういえば、これまで引いたみくじの多くに「努力」という言葉が書かれていた。なんとなく神様は願いを「叶えてくれる」存在に感じてしまうが、願いは見えない力によって叶えられるのではなく、最終的には自分の力が達成の秘訣なのだと、至極もっとものことをみくじを通して常にいっている。
 「困ったときの神頼み」という言葉があるように、どうにもならない状態の時に参拝するのもよい。しかし、「努力も大事」というのであれば、新しいことに挑戦する前に決意表明しに神社へ行くほうが理にかなっているのかもしれない。みくじも基本的にアドバイスする内容が多いので、目標が決まったら紙に書くだけではなく、神社へ行って神様に宣言してくるのもいいかもしれない。達成した時は、お礼まいりも忘れずに。(月島めぐる)

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コメント

おやおや、偶然が重なりましたね。新井薬師でエッチな表現したり、千束では粋。どちらも阿部定と近い場所。薬師あいロードにかつて、阿部定が勤めていた料亭があったし、千束稲荷神社の向かいに、おにぎり屋若竹がありました。気付いていましたか?

投稿: あざみ | 2012年11月22日 (木) 19時53分

あざみさま

コメントありがとうございます。阿部定との共通点は気づきませんでした。おにぎり屋があったとは。勉強不足ですね。
次回からは、もう少し神社近辺の歴史や土地を調べて見て回っていこうとおもいます。(月島)

投稿: | 2012年12月 8日 (土) 12時04分

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