OL財布事情の近年史/第73回 OL意識180度転換期?!否、もはやOLではない(前編)
連載「OL財布事情の近年史」は、2013年12月に単行本『女と金~OL財布事情の近年史~』として発売されます。
各年代のOL像を、イラストを交えて解説する辛酸なめ子さんのプチ時評つき。辛酸さんには、カバーイラストも描いていただきました。
エピローグには最新の女性誌お財布事情が書き下ろされ、女性誌創刊号の画像50数点を掲載。30年ぶんの「OLの財布の中身」が一気に見える本となりました。
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本格的なデフレ時代になっても相変わらず夢見がちで貪欲なアラサーOLがいる一方、その下の、1970年代半ば以降に生まれ、就職氷河期に直面した世代は全く別の道を歩いていた。ロストジェネレーションなどと呼ばれ、フリーター、非正規雇用、格差社会、などのワードがつきまとい、もはやOLとさえ呼ばれなくなっていたかもしれない。2000年前後に創刊した女性誌を見てみると、『GINZA』(97年)『BAIRA』(01年)『STORY』(02年)『inRed』(03年) など「いい時代を知っているOLのその後」向けに物欲を刺激する雑誌がある反面、ほんとなら現役OLボリュームゾーンの20代ターゲット誌には、『SWEET』(99年)『Soup.』(01年)『mina』(01年)など、学生でもママでもOKみたいなカジュアル路線のものが目につく。消費力も期待されなくなり、上の世代が謳歌していた、旅行にブランドに自己投資に、というOLライフへの憧れが、ここで初めて断ち切れたのかもしれない。
それでは働く20代女性は、バカみたいな消費や自己実現をしなくなって、堅実で賢くなったのか。否、そんなに単純にはいかないのが、この現代社会である。次に彼女たちの食指を動かしたものは何か。数年分のお財布記事から見えてきたもの、それは「趣味と主婦」である。シュミとシュフ。韻を踏んでるんじゃねぇ、とか就職氷河期の不幸な若者たちをバカにするな、とかいうご指摘もあるかと思うのでサクサク記事を見ていこう。前回とりあげた『Hanako』の「給与診断」から、20代前半のロスジェネ世代をとりだしてみる。
まずは、趣味について。25歳アルバイトの女性は、東京の短大を出て一旦郷里に帰ったが東京に住みたくて再度上京。正社員の営業職はハードワークで体を壊し退社、バイト2つ掛け持ちしたりしているが、月2万2000円の税金・保険料負担がつらいという。彼女の生活の基準は、趣味だ。ラクロスの大学OGチームに所属し毎週土日にプレイ、「東京に住んでいたいのは、ラクロスをしたいからかもしれません」。仕事に関しては「派遣社員から正社員になる道もあると聞いているのですが……でも、本当はフリースクールの講師になることが私の長年の夢」と夢は見ながら趣味のために東京で暮らし、収入16万円で、月9万円の赤字生活をしている(『Hanako』2000年8月23日号)。
一方24歳の看護婦は月収30万円、安定した一人暮らしだが、毎月30万円きれいに使い切り、貯蓄額も30万円。彼女の消費対象は、バンド。いわゆるおっかけで、月に15回のライブハウス通いや、売上貢献のためのCDまとめ買い、ライブ用の服などで月10万円使っている。特に意味なく携帯2台持ちで割引プランもせず、食事は「ひとりで食べるのは寂しい」からすべて外食と、趣味以外無頓着である(同2001年1月31日号)。
(つづく)(神谷巻尾)
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