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2012年4月16日 (月)

鎌田慧の現代を斬る/第155回 大飯原発再稼働の野望と震災復興に見る野田政権のゴリ押し

 3.11東日本大震災から1年がたった。それでも被災地の復興どころか復旧さえも進んでいない。あまりにも被害地域が広大だからだ。そのうえ未曽有の原発事故が被災地の救済を困難にしている。がれきをどうするのかについても、汚染の恐怖から受け入れ先住民の反対も強く、大きな社会問題となっている。
 さらに福島第一原発に近い地域では、避難すべきか除染して残るのかも重要な課題だ。飯館村などでは住民帰還にむけた除染もはじまっている。ただ、低レベル被曝といっても、人体にどんな影響がでるのか予測できない部分も多い。汚染の度合いによっても大きく変わってくるが、除染すれば安心という話ではない。
 除染の方法の問題もある。飯館村は放射線量の低いところから除染するという国の指針ではなく、標高の高いところから着手すると発表した。標高の高い地域から低い場所へと、雨水などで放射性物質が流れでるのを抑えたいとの思いがあるという。誰もが暗中模索だ。
 菅野典雄村長は「やってみなければ結果も分からないが、汚染された故郷を置き去りにすることはできない」(『毎日新聞』2012年3月5日)と語っているが、どれだけの住民が帰ってくるのだろうか。
 1月末、帰還宣言をだした川内村は、3月から行政機関を元の役場に戻した。しかし村が実施した全村民へのアンケートによれば、「帰村済み」「帰村する」は計38%にすぎず、「帰村しない」が28%、「分らない」36%と、ほぼ村を三分する結果となった。
 おなじ地域でも意見が割れているため、被災地域への補助金をどのように活用するのかも、今後、争点となっていくことだろう。
 いま現在稼働してるの原発は、54基中1基だけだ。北海道の泊原発の1基である。しかも5月上旬には定期検査のため停止が決まっている。
 日本の全原発が操業停止という東日本大震災以前には予想できなかった状況となっている。このまま夏を迎えれば、原発が稼働しなくてもなんら電力不足にならないという事実が白日の下にさらされる。
 それをなんとか阻止しようと、政府や電力会社が運転再開をゴリ押ししている。関西電力はストレステストの1次評価に合格したとして、大飯原発3、4号機が運転可能だという報告書を作成。野田政権も安全性を確認したとして、暫定的な安全基準に「おおむね適合している」と判断した。
 班目春樹内閣府原子力安全委員会委員長でさえ、「(1次評価は)再稼働とは関係ない。2次評価まで終わらなければ、安全性の判断はできない。1次評価は安全委が要求している(安全性の)レベルに達していない」(『東京新聞』2012年2月18日)と語っているほどなのにだ。
 また、大飯原発の1次評価を「妥当」と判断した保安員の意見聴取会メンバーである井野博満・東京大名誉教授と後藤政志・芝浦工大非常勤講師は「住民の安全性の判断に必要な2次評価が未提出で、再稼働ありきの見切り発車」(『毎日新聞』2012年3月1日)と抗議文で批判した。
 炉心損傷までの余裕を測るのが1次評価だとされているが、これまで1次評価を実施した原発は地震の揺れについては想定の1.29~2倍、津波の高さについては1.5~6.2倍の高さになっても炉心損傷は起こらない、外部電源を失っても10.7~104日は安全に原子炉を冷やすことができると結論付けている。しかし、その想定が正しいかどうかは検討されていない。そもそも原発推進派の決めた想定で安全だと思える人がいるのだろうか。
 佐藤栄佐久前副知事は、経済産業省と安全保安院の関係は「泥棒と警官」だと評した。その両者が同居して原発を推進している。悪名高い不安全・保安院の認定する「安全性」など、茶番でしかない。
 現在、政府は原子力安全・保安院と内閣府の原子力安全委員会を一体化した原子力規制庁を設置しようとしている。4月発足の予定だったが、関連法案が通らず、いつ発足になるのかは不明だという。
 環境省の下に置くことで現在の保安院より独立性は保てるといわれているが、その内実はお寒いものだ。まず、新組織の7割が保安院からの出向になると予想されている。しかも経済産業省から出向したものが、元の組織に戻らないようにする「片道出向」の規制は、課長・参事官級の12ポストのみ。それも「当人が望む場合は戻れる」という例外規定まで設ける。あくまでも「泥棒と警察」を一緒の組織に置きたいらしい。目先を変えただけの「改革」が、政府と経産省のお手盛りで進んでいる。

 政府は大飯原発を突破口に原発の再開を強引に推しすすめようとしている。とりあえず大飯の2基さえ動かせば、大飯を前例として他も動かせると踏んでいるのだろう。
 福島第一原発の4基は「冷温停止状態」といわれているが、肝心の燃料棒がどこにあるのか分からない。温度も上がったりしているおり、安定しているわけではない。福島原発の事故すら収束しておらず、その原因すらハッキリしないのに、どうして大飯原発が安全だといえるのだろうか。まして大地震がいつくるか分からない状態で、しゃにむに原発を再開させようとするのは、金儲けのための無理心中させよう、という反正行為だ。
 事故から1年をへてやっと当時どのような状況だったのかがあきらかになってきた。そのなかには事故発生当時に、東電がすべての職員を原発から避難させようとしていたという疑惑まである。もし全員が避難していたら冷却作業などが止まり、4基すべてが暴走してしまった可能性が高い。そのような大事故が起きたとき、政府が住民を助けないことは、今回の事故でハッキリした。パニックを起こさないためだ。放射性物質の飛び方を予測するSPEEDIの結果を公開しなかったのは、その証拠の1つである。
 運転の安全も確保できない。事故が起こっても情報がなく避難さえできない。事故後に汚染された土地が大量の発生する。こうした状況があきらかとなり、原発に反対する人は確実に多くなっている。
 今年の3月11日には郡山で大規模な反対集会がひらかれた。わたしもそれと前後する各地の反対集会に参加している。どこも大盛況で、脱原発の勢いが弱まってはいない。こうした民意を政府は、きちんとくみ上げる必要がある。(談)

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