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2012年3月19日 (月)

「ハーモニー」で豊かな出会いがありました(後編)

 前回のつづき。
 精神障害者共同作業所「ハーモニー」で、中村さんから「若松組」の話をお聞きした後、施設長の新澤さんとカウンセラーの藤田さんに「幻聴妄想かるた」についてお話を伺った。
Karuta  かるたは2008年11月に、はじめは左写真のような形で作られた。かるた用の分厚い紙を取り寄せて、全てが手作りで3000円。小冊子や箱代まで含めると、利益はほとんど出ない。購買層は福祉系、教育系が中心で、500組ほどが売れたとのことだ。手作りかるたを500組! なかなかの数である。
 かるたは医学書院の雑誌「精神看護」に取り上げられ、のち、同社から出版された。DVDとCDがついて2,415円。より豪華になった上に価格まで絞られたのは、ひとえに編集者の熱意のたまものだったと新澤さんは言う。
「かるたなので、発売はお正月の前にしようということで、昨年の11月下旬に出版しました。ネットなど色々な場所に取り上げられて、肯定的なものから否定的なものまでさまざまな反応がありました。スタッフとしては、否定的な反応があるとやはり少し利用者の皆の顔色をうかがってしまうところがあるんですが、それを『嫌だ』という人は意外なほど少ないですね。『多くの人に自分の状況を知ってもらえて良かった、楽になった』という人もいるくらいです」
 自らアクションを起こすことが難しい精神障害者にとって、発信者となったことの喜びは計り知れないものがあるのだろう。

 ところで、私は書評で1つ間違ったことを書いてしまった。読み札に書いてある妄想の持ち主と絵札の作者は同じだと思っていたが、違った。皆で読み札に書かれた事柄についての絵を描き、人気投票によって絵札が選ばれるのだ。
「みんなで、共有された経験を描くことが大事だと思っています」と新澤さん。誰か1人の妄想でしかないものが、かるたになって複数の人に絵を描いてもらうことで、みんなのものになっていく。それはさらに購買者の手元に届き、それぞれが読んだり遊んだりすることで、不特定多数の人々のものになってゆくのだろう。

「かるたを研究対象として買ってくれた人からは『興味深い』といった、中身についての感想が届くのですが、実際に遊んでくれた人からは『楽しい』『面白い』という感想をいただくんです。反応の違いに、かるたのメディアとしての面白さがありますね」(新澤さん)
体験をより共有するためにも、実際に遊んでみることをオススメしたい。

 かるたは今後、第2弾を発行予定。テーマは「生活・失踪」だ。より精神障害者の日常に密着した、具体的な生活についての内容が描かれた札が並ぶ。
「多くの病気の場合、普通は治ってから就職など社会参加の途を探そうという考え方になると思いますが、精神障害は長い治療期間が必要ですし、回復するまで入院や療養をというのでは、人や社会とのつながりがなくなってしまいます。むしろ多少の症状があっても周囲のサポートを得ながら、地域で暮らしていくことができるとよいと思うのです。症状が悪化し所在がわからなくなることもあるのですが、失踪するにしても、それを予告して自分のつらさを他人に伝えておいたり、最低限の連絡手段は残しておくなど、『健康的な失踪』『予告失踪』ができないだろうかと大真面目にミーティングで話し合ったりしています」と、藤田さんと新澤さんが教えてくれた。

 症状と上手に付き合いながら社会で生きてゆくことの重要さが伝わる一冊となりそうだ。(奥山)

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