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2012年3月30日 (金)

OL財布事情の近年史/第72回 アラフォー美魔女の10年前、どんなお財布?(後編)

連載「OL財布事情の近年史」は、2013年12月に単行本『女と金~OL財布事情の近年史~』として発売されます。

各年代のOL像を、イラストを交えて解説する辛酸なめ子さんのプチ時評つき。辛酸さんには、カバーイラストも描いていただきました。

エピローグには最新の女性誌お財布事情が書き下ろされ、女性誌創刊号の画像50数点を掲載。30年ぶんの「OLの財布の中身」が一気に見える本となりました。

全国書店から注文可能。
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前回のつづき。

 不況だからお金のことが気になる、でも好きなことはやめられない、そんなゼロ年代OLに、かつて「キャリアと結婚だけじゃ、イヤ」と煽動した『Hanako』も注目していた。2000年4月19日号からスタートした、「All about Money」という連載である。一人の収支表を分析する「給与診断」、何にいくら使っているかの調査「お財布拝見」が交互に登場するが、圧倒的に面白いのが「給与診断」。『Hanako』を読み、影響され、OLライフを謳歌してきた後、どんな財布状況になっていたか。2001年6月までの全16人のマネーライフは、それはもう診断と呼ぶにふさわしく、様々な面で病んでいた。

 登場するのは年齢も仕事もさまざまなのだが、まずは前々回から言及しているアラサー世代に的を絞ってみる。連載第1回、「自分ではわからないお金のこと、診断してください」というのは、外資系会社営業事務、親と同居の34歳、貯蓄280万円。手取り24万円、住居費光熱費もちろんゼロ、被服費・交際費に毎月4万円ずつ使いつつ、資格取得の勉強に専念したいけど、今すぐ会社を辞めてやっていける?と聞いている。このお気楽さは、90年代初頭に「アホバカOL」とシンクロする。 回答する経営コンサルタント渋井真帆氏も冴えている。「手取りで月収が年齢+1万円くらいあればもっと貯蓄できるのに」に対して「上場企業の課長さんクラスの平均手取り収入額です。大胆すぎる希望ですよ」、「自己投資は惜しみません。最近ではバレエレッスンに2万円、アロマ、TOEICに2万円くらい」といえば「少しうるおいを与えすぎでは。これでは、ふやけてしまいますよ」。「これといったスキルもない場合、現在と同額の収入を得ることは難しい」「いまからお財布の紐を締める練習を」と、30代半ばにしてごく基本的なアドバイスをされなければいけない状況が蓄積されていた。
 次のケース、新卒後6年間の勤務で400万円貯めて渡米、語学と音楽の勉強をして帰国後希望の音楽出版社に就職、と夢を叶えた29歳は、一見堅実なマネーライフにも見える(2000年12月27日号)。が、食費6万円、交際費9万円、被服費3万円という派手な出費の陰にある「〈クリエイティブに関わる人間は(略)ファッションセンスがよく、グルメでなければならない〉という上司のポリシー」というのがくせもの。そんなマンガみたいな上司の言うことを鵜呑みにし「年俸制のために残業代がつかないことは、ぜんぜん気になりません」、交際費も「自分のネットワーク作りのためなので、まったく苦になりません」と夢の仕事にあまりに信奉しすぎなのはいかがなものか。とにかく自己投資!とか好きな仕事!とか、みんな何かしらに過剰である。

 その他資格を取って職場にも福利厚生にも恵まれているが、スノボに年8回行きつつ、語学留学を夢見る26歳(助産婦、月収20万円、貯蓄200万円/2001年2月21日号)、親元に住みながら月の貯蓄はゼロ、ダイビングに年間60万円使い、週2回同僚との飲み会で交際費8万2000円という30歳(旅行会社、月収24万2000円、貯蓄100万円/2001年3月14日号)など、イタい例が俎上に。前者は「緊張感の足りない〈小金持ち〉」、後者は「楽しいのはいまだけ。自分の20年後を考えて、危機感を持って」と、渋井氏にバッサリ斬られている。この渋井さんという人なかなか面白いなーと思ったのだが、その後歩んだ道を見るとあんまり面白くない。人材教育やビジネスセミナーを手がけ著書をたくさん出し、一時期はビジネスウーマンの教祖っぽい立ち位置で、起業した社名がマチュアライフ研究所。マチュア、懐かしい、なんだっけと思ったら成熟、って意味でした。成熟社会をめざしてつけられたことだろうが、2010年にエムエス研修企画って地味な社名に変更していた。時代に寄り添いすぎているところが少々辛い。おっと、彼女も1971年生まれ。当時自らも模索しながら診断もしていたわけか、どうりでなんともライブ感があるはずであった。さて、現アラフォーに言及しすぎた。次回からはこれからの主役、ゼロ年代OLを見ていこう。(神谷巻尾)

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