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2012年3月17日 (土)

冠婚葬祭ビジネスへの視線/3.11も稼働した「りすシステム」の見守りサポート

 3.11から一年。日本中の誰もが恐怖で凍り付いたあの日、懸命に会員の安否確認をはじめた団体がある。老人ホームでも医療機関でもない。NPOりすシステム。葬儀や墓などの死後に関することと、日常生活のなかで必要なサポートを行う生前事務の生前契約、万一判断力をなくした時にサポートをするための任意後見契約を活動の柱とする特定非営利活動法人だ。
 もとは「もやいの碑」という、地縁も血縁も超えた新しいスタイルの墓が発端だった。墓は後継者がいなければ買うのが困難だ。独身をつらぬき身寄りのない人、親族とのしがらみから抜け出したい女性、終の棲家を自分自身で決めたい人々にひらかれたお墓、それが「もやいの碑」。しかし、確実にそこへ弔われるには、自分の死後誰かが駆けつけて納骨までサポートしなければならない。その必要性から死後についての生前契約という思想が生まれ、誕生したのが「りすシステム」なのだ。
 身寄りのない場合、困るのは死後ばかりではない。入院した時に世話してくれる人、老人ホームに入りたいと思った時の保証人、認知症などになった時に自分の意思を代理してくれる人……りすシステムは、その全てについてサポートする。いわば家族の役割を、すっかり引き受ける存在だ。
 そんなりすシステムにとって、地震の後に会員の安否を確認するのは、離れて暮らす家族に連絡をするくらい当然のことだったかもしれない。しかし、被害のひどい東北沿岸部を管轄している北日本支部の常勤スタッフは1名。ライフラインが寸断された中を一軒ずつ車でまわり、電話が復旧すれば電話を駆使し、本部とボランティアの力を借りながら会員の無事を確認したという。それだけではない。会員が避難する避難所が閉鎖されると聞けば次の避難所まで連れて行くなど、まさに家族のようなサポートを実行したのだ。
 もちろん、被害があったのは東北ばかりではない。北海道から神奈川まで、東日本に住んでいる会員は1709名。地震の翌朝からは、本部・支部総動員体制で電話による安否確認を始めた。3週間ほどをかけ、幸いにして会員全員の無事を確認できた。
「地震のあと数日は一部の電車が計画停電などで動かなくなり、出勤できないスタッフもいましたから、少人数で対応せざるを得ませんでした。大きな余震があればまたかけ直したり、長野で大きな地震があったことを受けて連絡範囲を甲信越までのばしたりして対応しました」と語ってくれたのは、千代田区にある本部のアドバイザー、西村さん。彼自身、電車が動かなくなるのを危惧して、一週間は事務所近くのホテルに宿泊した。「家に帰ったら、次にいつ出勤できるか分かりませんからね」と口ぶりは穏やかだが、多くの人は「出勤したら、次にいつ家に帰れるか分からない」と逆のことを心配するだろう。家族になった責任感と、確固たる使命感がそうさせたに違いない。

「通常時でも『元気コール』というかたちで、週に一回などの頻度で会員に電話したり電話してもらったりという活動をしています。ただ私たちは緊急の際に素早く駆けつけるということができません。セコムと相談して会員のための特別価格を設定してもらい、一人暮らしの方におすすめしています。室内の人の動きをセンサーで確認し、一定時間動きが確認できない時にまずはセコムが対応し、同時に私どもに連絡をいただけるという仕組みです」(西村さん)
 災害の時のみならず、いつも見守ってくれ、自分のために動いてくれる存在があるというのは、大変心強いことだ。3.11の前までならあまりピンと来なかったかもしれない、この「いつも見守っている」というシステムのありがたさが、今は本当に良く分かる。

「会員は、頻繁に連絡してほしいという人から、極力そっとしておいてほしい人までさまざまです。事情に合わせてサポートしています」と西村さん。生前契約の実務を担うのが「りすシステム」、預託金を管理する「日本生前契約等決済機構」、葬儀部門の「りすネット」、地球環境に優しい葬儀を提案し地球に恩返しの森づくりをすすめる「エコ人権葬」と、関連組織は広がりつつある。「個」の時代のエンディングプランにフィットするりすシステムに、今後も注目していきたい。(奥山)

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