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2012年1月23日 (月)

編集部の女の子/歌舞伎を観に行きました

 先日、1月15日は「国立劇場開場四十五周年記念 平成二十四年初春歌舞伎公演」に出掛けました。演目は、「通し狂言 三人吉佐巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)」と「奴凧廓春風(やっこだこさとのはるかぜ)」。どちらも「江戸演劇の大問屋」との異名を持つ河竹黙阿弥の作です。松本幸四郎、中村福助、市川染五郎、松本金太郎らが華やかに舞台を彩りました。

 「三人吉佐巴白浪」は「三人吉佐廓初買(くるわのはつがい)」から派生した河竹黙阿弥の代表作です。黙阿弥が得意とした「白波物(盗賊を主人公にした作品)」で、同じ「吉佐」の名を持つ三人の盗賊が、百両の金と刀をめぐる因果応報の故に散るというストーリー。因果の綾が巧みに絡まった奥深い作品です。作中のあちらこちらに散りばめられた伏線が見事に回収されていく様には、舌を巻きました。福助演じるお嬢吉佐の「月も朧に白魚の…」から始まる名ゼリフも聞けて大満足。まさに「こいつァ春から縁起がいいわえ」という気分です。三人の吉佐は正真正銘のヒーローではなく、むしろ社会のモラルや常識からは逸脱した存在なのですが、随所での振る舞いがとても粋で人情に溢れており、彼らのすがすがしい生き様が面白く描かれていました。雪の舞う大詰、「本郷火の見櫓の場」での幕引きは、とても「黙阿弥らしい」そう。下手のみならず上手にも設置された両花道が作品にさらなる華やかさを加え、デフォルメされた派手なアクションも大迫力。「大向う」という客席からの掛け声が方々から飛び、圧巻でした。


 世阿弥の絶筆となった「奴凧廓春風」は、初春狂言お決まりの「曽我物」にお正月に飛ばす奴凧を組み合わせた作品。実に105年ぶりの全段通し上演だそうで、日本舞踊松本流三世家元(七代目 市川染五郎)が振付を担当していました。両花道を使った渡りせりふも粋で福助と染め五郎の掛け合いも見応えがありました。衣装の着物も素晴らしかった。染五郎さんの着物は浅葱色の地に翼を広げた鳥が舞い、金糸の刺繍がなされていました。福助さんの花魁衣装も帯が見事。高麗屋三代(幸四郎、染五郎、金太郎)の親子三代がそろって登場し、会場は和やかなムードになりました。特に、幸四郎と金太郎の二人が、凧を上げる上げないでもめる場面は、やんちゃな孫とそれをなだめる祖父の姿が微笑ましかった。染五郎演じる凧と金太郎の掛け合いで舞うシーンは、貫禄ある父の舞とまだまだ可愛らしい息子の舞を同時に楽しめて、観ていてとても幸せでした。金太郎が可愛い。とにかく可愛い。これからの成長がとても楽しみです。一人三役をこなした染五郎が二役目で演じた凧では見事な宙乗りも観ることができ、とても面白く、こちらも見応えのある作品でした。時間が経つのも忘れ、見入ってしまいました。

 どちらの演目も、新春公演にはお誂え向き。幕の内弁当も美味しく頂き、大満足。できたての豆大福と、美味しい緑茶も頂きました。私のところにも福がやってきたかな?

 会場にはお着物でいらしている方が多く、次回は私もお着物を着ていきたいなと思いました。みなさんとても華やかで、帯の結い方や髪型など、細部までこだわっているようでした。

 今回は午前中からワークショップに参加し、河竹黙阿弥の来歴や演目のあらすじ、登場人物紹介やことばの解説を大方聞いた上で観ました。さらに、音声ガイドもつけていたので、お話にもきちんとついて行けたし屋号も分かって面白かった。着物の文様なども解説してもらいました。日本の慣習や言葉の来歴も一緒に勉強。例えば、「双子」は世間ではどんなふうに捉えられたのか、「土左衛門」や「目貫通り」の由来などです。日常のあちらこちらに垣間見られる日本文化を学べました。

 歌舞伎や能など、ともすると堅くてつまらないように思えてしれないし、内容や意味が分からないと面白くないかもしれないけれど、ワークショップに参加したり、講座に参加したり、本などであらかじめ勉強していけば、すごく面白いです。

 日本には洗練された文化があるにもかかわらず、それらに触れる機会が限られているのが現状。文化的後進国だと言われるのはここに起因するのではないでしょうか。門戸は開かれていても、実際にアクセスする人も少ないように思えます。私の知人からも、歌舞伎や能を観に行きたいものの、なかなか踏み出せない、機会がない、どうして良いか分からないという話を良く聞きます。せっかく素晴らしい伝統芸能があるのだから、小さい頃から本物に触れることのできるよう教育制度を整えたり、実際に触れる機会を作る必要がありそうですね。

 元々興味のあった歌舞伎ですが、とても好きになった、そんな一日でした。皆さんも歌舞伎や能の舞台にぜひ足を運んでみてください。
(雨宮)

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