OL財布事情の近年史/第62回 派遣OL誕生!激動の90年代後半(後編)
連載「OL財布事情の近年史」は、2013年12月に単行本『女と金~OL財布事情の近年史~』として発売されます。
各年代のOL像を、イラストを交えて解説する辛酸なめ子さんのプチ時評つき。辛酸さんには、カバーイラストも描いていただきました。
エピローグには最新の女性誌お財布事情が書き下ろされ、女性誌創刊号の画像50数点を掲載。30年ぶんの「OLの財布の中身」が一気に見える本となりました。
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『CREA』1998年7月号の大特集「今そこにある〈転機〉」では、山一證券、北海道拓殖銀行など、会社が倒産してまさに不況を体感したOLをとりあげた記事「勤め先が経営破綻! あなたならどうする? 消えた会社のOLたち」がある。「人間関係に恵まれて居心地はとってもよかった」「人情味にあふれている社風も大好き」という山一證券OLたちは、「山一という看板のおかげで」「山一の国際部門にいたから、と正社員も派遣社員も同じ条件で」、登場する3人が都市銀行に正社員として採用されている。「いちばん心配だったのは、お給料どうなるかってこと」といいつつ、「結局、給料も退職金もキチンともらえたから良かった」って、実は山一バブル? 大企業は結局優遇されるんじゃん。ちっ。
だが大手以外はそうはいかず、21歳北海道拓銀OLは『とらばーゆ』を見て精密機器販売会社に就職。だが「女性の力を生かすとか、給料は高く休日も多いとか、いいこといっぱい書いてあったわりには(苦笑)」と微妙な模様だ。中堅ゼネコン東海興業で設計部門に所属していたがリストラにあった25歳の就職活動は「思っていたよりキツかった。(略)次も絶対にこの業界だと決めていたので」と、不況のあおりをくらって難航。あげく「会社に運命を左右されるなんてもうイヤ」と、派遣社員としてCADの技術を生かすことにした。「好きな仕事を貫きたい私に、派遣は向いているような気がします」というこの感覚、この頃の女性は普通に持っていたと思う。しかし、正社員ルートからこぼれていったあげく、会社に縛られない自由な働き方「派遣」を自分で選んだ、という構造が作られていったとはいえまいか。
実際派遣の環境は、この数年で大きく変わっていた。1996年には派遣労働法改正で、対象業種が26業種に広がった。添乗、企画立案、インテリアコーディネーター、OAインストラクション、広告デザインなど、いかにも女性が活躍できそうな職種が加わったのだ。派遣労働者数をみると、改正翌年の1997年は前年より18.3%増の約85万人、99年には約106万人と、100万人の大台を超えた。ちなみにその後上昇し続け2008年には398万人にのぼり、年越し派遣村を挟んだ09年には大幅減の267万人。たかだか10年で派遣でさえ働けない時代になっていた。そう思ってかつてを振り返るのもむなしいが、ここに至るまでの検証は大事である。次回、まだ選んで派遣をしていた当時の女性誌をみていこう。『With』97年8月号「派遣OLってそんなにアレなの?」、『女性セブン』98年1月1日号「〈派遣OL〉の極意」って、アレだの極意だの、ネタ感が否めない、この余裕さよ。(神谷巻尾)
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