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2011年12月 8日 (木)

元・サイテイ車掌の田舎日記/ビートルズ、ビートルズ、ビートルズ

○月×日

 んだ。
 ジョン・レノンのあの声なんだよ。
 ビートルズによってカバーされた曲と、その原曲を聞き比べてみるのもまた楽しい。
 初期のビートルズは他人の曲をずいぶんと取り上げていたのだ。有名な曲からあまり知られていない曲まで、ビートルズがカバーしたことにより、もちろんビートルズもヒットさせたが、原曲の方が再びスターダムに上がったという例も実に多い。そればかりか、その曲自体がビートルズのモノのように定着してしまい、ファンの中でもビートルズの曲だと思っている人も大勢いたりする。ま、好きで聴いていればいいわけで、それはそれで構わないんだけどね。
 家にビートルズがカバーした原曲ばかりが収録されたCDがある。それは、主に50年代に活躍したアーティストのオリジナルが30曲収められている。例えば、ロックンロールの神様と絶賛されているチャック・ベリーの「ロック・アンド・ロール・ミュージック」や強烈な熱唱でロックンロールの王様といわれたリトル・リチャードの「ロング・トール・サリー」などだ。この2人は既に80歳を超えている大御所で、「あれはわしの曲じゃよ」「元祖はオレ様さ」と一笑に付され、相手になどしてもらえそうもないが、無礼承知でいわせてもらえば、軍配は断然ビートルズのカバーに上がるのだ、悪いけど。もはや、ビートルズ以上のカバーはない。それは、アレンジの上手さやサウンド面の良さもあるが、それだけでは決してない。ズバリ、ジョンのあの声によるものだと断言してよい。
 その当時、軟派少年だったジョンは「おれならもっと上手く歌えるぜ」とでもいわんばかりに、大人の色気たっぷりで、男の哀愁さえ漂わせ、うるわしいと思えるほどのあの声で、天性の実力なのか、それこそ縦横無尽に歌いまくっていたのだ。二十歳そこそこの小僧がだよ。
 おれは前にも何度か書いたが、ビートルズの魅力の殆どはジョンのあの声で占められているといっても過言ではないと思っている。「ミスター・ムーンライト」、あのやるせない声には誰だって一発でまいるさ。「ツイスト・アンド・シャウト」、あの掠れたハスキーな声はシャウトするのにぴったりだろ。「ベイビー・イッツ・ユー」、あのたたみかけるような説得力のある声にはどんな娘だってイチコロだよ。
 どの曲も挙げれば切りがない。さあ、頼むぜジョン。今日もおれをぶっ飛ばして、打ちのめしてくれ~!!

○月×日
 んだ。
 短すぎるんだ。
 「ヘルプ!」。今年も終わってしまうよ。「ジ・エンド」だなんていわせない。一日は長いが、そう、いくら「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」でも、一月が経つのはあっという間だ。一年のうちで12月ほど短かく感じる月はない。「エイト・デイズ・ア・ウィーク」ではないが、12月だけ31日以上に増やせないか。こうして12月は、ビートルズに思いを馳せる人も多いはずだ。
 そんなわけで、ビートルズを聴きながら冬のコートを着る。ビートルズを聴きながら北風に吹かれる。ビートルズを聴きながら電車に乗る。ビートルズを聴きながらプレゼンを選ぶ。ビートルズを聴きながらコーヒーを飲む。ビートルズを聴きながら本を読む。ビートルズを聴きながらイルミネーションを見る。ビートルズを聴きながら石焼き芋を買う。ビートルズを聴きながら夕暮れ時に佇む。ビートルズを聴きながらケーキを食べる。ビートルズを聴きながらワインを飲む。ビートルズを聴きながらクリスマスを祝う。ビートルズを聴きながら星空を見上げる。ビートルズを聴きながら眠りにつく。
 どうですか? これでリンゴの甘酸っぱい匂いでいっぱいになったと思うが、そう、ビートルズを聴きながらの12月は「恋する二人」には短かすぎる。NHKの紅白のスタッフにも、被災地で苦労している人たちにも、総理大臣にだって短かいと思うノダ。
 「イン・マイ・ライフ」で一年を、そして「イエスタディ」を静かに振り返るにはあまりにも短かすぎる。「レット・イット・ビー」だなんていわないでほしい。「家に帰れば」「ひとりぼっちのあいつ」に必要なのは「サムシング」?。それは「愛のことば」だ。「ア・ハード・ディズ・ナイト」はもうこりごり。「愛こそすべて」なんだから。「ヒア・カムズ・ザ・サン」で「レディ・マドンナ」と出会ったばかりなのに、どうして「ハロー・グッバイ」なのか。「涙の乗車券」などおれにはいらない。誰だって「恋に落ちたら」「抱きしめたい」。「フール・オン・ザ・ヒル」かもしれない。でももう一度「アイ・コール・ユア・ネーム」。「オー! ダーリン」、「アイ・ニード・ユー」「アイ・ウォント・ユー」。それにしても「君はいずこへ」。「アイム・ソー・タイアード」。誰かおれに「恋のアドバイス」を。「悲しみはぶっとばせ」、そして「恋を抱きしめよう」。そうさ、今日も「グッド・ディ・サンシャイン」。
 ちなみに、「」は全てビートルズの歌のタイトルです。12月分31曲あります。1日1曲、みなさんもどうぞ。それでは。

○月×日
 んだ。
 「あのヨーコ」なのだよ。
 おれは長い間、オノ・ヨーコさんのことをあのヨーコと呼んでいたんですよ。日本人女性で彼女ほど世界中に名前を知られている人はいませんよね。誰かいる? 挙げてみて下さい。ね、いないでしょ。瀬戸内寂聴だって美空ひばりだって、日本ではいくら偉大で有名でも、よその国の人に聞けば「誰それ?」といわれるでしょうよ。あのヨーコはジョン・レノンの奥さんだったからこそ知られるようになったわけです。
 で、おれにとってはまったくもって嫌な女性で仕方がなかったのでした。いや、おれに限らず、あの当時のビートルズのファンであれば世界中の殆どの人がそう思ったに違いありません。
 あの当時のおれといえば、まだ青い小僧の高校生でした。何よりも夢中になっていたビートルズの解散はそれはもうショックで堪りませんでした。おれのビートルズがあのヨーコによってぶち壊されたのだと彼女を心の底から憎んだものです。
 解散して一人になったジョンはすぐにソロアルバムを発表しました。その時のジョンは30才。その中に「ゴッド」(神)という曲があり、高校生のおれにも訳せた詩には解散以上の衝撃を受けたことを今でもはっきりと覚えています。ジョンはまるでゲームでもしているかのように世界中の著名人の名を挙げ、誰それを信じない、信じないと長々と歌い、最後に辿り着いたのは「ビートルズを信じない」とまでいい切り、おれの目の前を真っ暗にして、まっさかさまに突き落としたではありませんか。それはファンの誰もがそう感じとったと思います。そして、「ヨーコと自分だけを信じる。夢は終ったのだ」といってその歌は終わるのでした。
 もうね、それからというもの、ジョンとヨーコのいくら仲睦まじい写真やフィルムを見せられてもあのヨーコへの憎しみは増すばかりで、その怒りは沸騰点のまま冷めることは決してないのでした。
 解散の原因はもちろんあのヨーコだったわけですが、結局はジョンがヨーコとの恋に落ちてしまったからです。今思えばよくあることなんですよ。例えば、思春期の頃を思い出してみて下さい。何人でもいいから男女仲良しのグループがあったとします。その中で誰かが誰かを好きになってしまって二人は恋に落ちてしまったとします。どうなりますか。
 それまではなんの気兼ねもなくつき合えていた者同士だったのが、二人に気を遣ったり、何かしっくりいかなくなる。いつの間にかこのグループは空中分解していく。気がついた時には自然消滅していた。これですよ。これが拡大した全世界版がビートルズの解散だったのです。ただこれだけのことなんですよね。
 今ではあのヨーコのことを許せるようになって、オノ・ヨーコさんと呼んでいます。なぜ許せるようになったかといえば、もうそんなゴタゴタはどうでもよくなったから、ではありません。ジョンとヨーコの二人が本当に愛し合っていたのだと理解できるようになったからです。時間はかかりましたが、ただこれだけのことなんですよね。
 さぁ、ジョンとヨーコが世界中を暖かく包んでくれる曲。皆をやさしくしてくれる曲。そう、クリスマスの曲、「ハッピー・クリスマス」でも聴くとしましょう。きっといいことがあると思いますよ。そんな予感がします、文体まで変わってしまったのですから。お~しまい。(斎藤典雄)

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