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2011年11月18日 (金)

OL財布事情の近年史/第55回 ヤマイチ、セクハラ、ジハードな1997年の闘うOL(前編)

連載「OL財布事情の近年史」は、2013年12月に単行本『女と金~OL財布事情の近年史~』として発売されます。

各年代のOL像を、イラストを交えて解説する辛酸なめ子さんのプチ時評つき。辛酸さんには、カバーイラストも描いていただきました。

エピローグには最新の女性誌お財布事情が書き下ろされ、女性誌創刊号の画像50数点を掲載。30年ぶんの「OLの財布の中身」が一気に見える本となりました。

全国書店から注文可能。
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 1997年は、山一ショックで日本経済が揺らいだと同時に、OLの生活も大きく変わり始めた年であった。キャリア志向ではなく、腰掛けでもなく普通に働いている間に社会が変わっていく。まさにその状況を描いた篠田節子『女たちのジハード』がこの年第117回直木賞を受賞したのも、象徴的である。
 当時はストレートなタイトルや、身近すぎる背景に手が遠のいていたのだが、今回せっかくなので読んでみたら、なんと面白いことか。中堅保険会社に勤める5人のOLが、リストラ、DV、結婚、離婚、不動産、広報、社会貢献、留学、詐欺、起業等々当時の“あるある”テーマの中で生き抜く姿がたくましく、時代感があふれていておかしみもある。景気が悪化した男性優位社会のいやな感じも、苦笑とともに思い出されるというものだ。

 さて前回、『失楽園』ブームや風俗仕事について触れたが、『女たちのジハード』でもわりと奔放なOLの性生活が登場している。一方、上司にしつこく誘われ、タクシーの中で手を握られる場面があるのだが、「セクハラ」とは呼ばれていない。まだセクハラという概念が一般的ではなかったことがうかがえる。
 97年、男女雇用機会均等法の改正法が成立し、セクシャルハラスメント関連の規定が創設され、ようやく言葉として定着してきた。80年代の女性誌を見ていると「セクハラも受け止め方次第です」といった記事がありギョッとしたが、当時はする方もされる方も無自覚だったことがわかる。
 改正法前年、米国三菱自動車が女性従業員へのセクハラで米・雇用機会均等委員会に訴えられたことを受けた『日経ウーマン』96年8月号の「今、考えてみようセクハラのこと」では、“受け止め方次第”レベルの認識だったことがわかる。「セクハラをめぐる男女の意識調査」では、「男性(女性)が〈体のラインがきれい〉とうっとりした目つきで女性(男性)を誉める」や「仕事の話をしている途中で、男性が女性の胸元に目線をチラつかせる」では「セクハラだと思わない」「相手・場合による」が男女とも過半数を占める。
 「男性の視線が女性の胸元や足などに行くのは、生理上自然なことで、それを批判することはできないのではないかと思う」(会社員、39歳)と中年男性は言い、「女性が目つきや服装、しゃべり方などで、職場で不必要な色気をふりまくのは男性へのセクハラではないか」(保険会社、24歳)と若い女性が言い、そして結婚した女性は「ちょっと休むと〈妊娠?〉気分が悪いといえば〈つわり?〉と聞かれる。産休をとっている人のことは〈守銭奴〉と言われている。〈だんなとのセックスは?〉などと聞かれるよりこれらの言葉の方がセクハラだと感じる」(証券、27歳)とかもう、どれもこれもセクハラだよ! たった十数年前でも、なんと古色蒼然としたオフィス空間だったことか。そこで自己実現とかキャリアアップとか、所詮無理な話だったことがわかるというものだ。(つづく)(神谷巻尾)

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