池田大作より他に神はなし/第25回 『戦艦ポチョムキン』や『羅生門』をも寄せ付けない、歴史的宗教映画の金字塔『人間革命』は、国立「フィルムセンター」で毎週1回定期上映されるのが世界的常識である。
最近流行の蜘蛛膜下出血の手術以来、酒を2年間禁じられた。つまり、60歳になり赤いちゃんちゃんこを着ないと、ビール1本飲めない(それまで命があればの話だが…)。金を遣わなくなったのは助かるが、夜が暇で暇で暇で。愛人でもいれば救いもあろうが、そんな男性的魅力も金も精力もない。頼みのバイアグラは高血圧者には、高純度ヒ素の結晶みたいなもの。結局、従来からの映画見物趣味により拍車が。今度倒れたら絶対に映画館通いは不可能だろうし。読書は命と視力さえあれば蒲団の上でも可能だが(ただ両眼失明なんて後遺症もザラと…)。
座頭市になる前に(思い込みの激しい奴)、1度だけ銀幕で鑑賞したい映画が。『人間革命』(監督・舛田利雄・'73東宝・シナノ企画)だ。勿論、1度は観ている。大学時代、明治大学内にあった創価学会系サークル、東洋思想研究会が学内で無料上映会を。監督の舛田利雄は、『錆びたナイフ』や『赤いハンカチ』、『紅の流れ星』で知られる日活アクション映画の巨匠。その関係か元日活の渡哲也も出演してるので、興味本位で出掛けた所、戸田城聖・牧口常三郎イズムに打ちのめされた。当時の明大は社青同解放派の学制組織、反帝学評が自治会を牛耳っていた。そのため日本共産党系各種サークルは、表立った活動が出来なかった(即ゲバられるので)。が、流石の赤色過激派も、創価の同志の義挙には指一本触れられなかった。あるいは内心、我らの人間主義に深く心酔していたため、見守るしかなかった可能性も。
その歴史的宗教映画の傑作が(同時に娯楽映画としても1流)、めったに映画館で上映されない。『戦艦ポチョムキン』の上映禁止以上の、映画芸術への不当な冒涜だ。DVD化はされてるが、やはり偉大な思想は広大な画面でこそ確認したい。云々言ってるうちにあっという間に40年!(少年老い易く『人間革命』再見し難し)不満が少しだけ解消される本を、古本屋で発見。『シナリオ 人間革命』(橋本忍・原作/池田大作・'73潮出版社)だ。表紙に“保存版”と記されているが、やはり上に“永久”と入れて欲しかった。神保町は「小宮山書店」のガレージセール、通称“コミガレ”で3冊500円にて。無論、遥かに高価な値段で取り引きされる名著であるのは、古本に少しでも詳しい人は誰もが承知(噂では万単位のプレミアが付くとも)。時々こういう手違いがあるから、コミガレは大人気なのだ(話がそれてすいません!)。
“序”を池田名誉会長が直々に御執筆なされている。最初の数行で、先の『戦艦ポチョムキン』の監督であり、モンタージュ理論の開祖としても知られる、ロシアのエイゼンシュテインを凌駕する、平明で前衛的映画論を展開する。“映画には、文学や映画には見られない、動く映像という空間に媒介された独自の、抒情の世界がある。人間の肉眼が決して届くことのできない視界や、およそ身をおくことのできない歴史上の歳月に、あるいは、工夫をこらしたモンタージュの世界に、映画は観客をやすやすと運んでくれるのだ”。特に“動く映像という空間に媒介された独自の、抒情の世界がある”との下りには、何度読んでも涙と戦慄を感じずにはいられない。この端的な理論的かつ文学的表現に比べれば、大昔一時入れ込んだ伊丹万作、佐藤忠男、松本俊夫、蓮實重彦などは、ひとりよがりの幼児の屁理屈だ(ポイッ!)。
更に序の前にはカラー1項を含む、豪華スチール写真が4ページも据えられ、瞬時に40年前の感動を甦えさせられる。威風堂々たる押し出しのの戸田理事長役の丹波哲郎。中でも独房で、無量義経の経文を深く思索しつつ唱題する戸田理事長の姿は、既にして現世を超越するオーラに覆われている。一気呵成に読む。名画の名脚本のパワーに圧倒させられる(原作の力ゆえなのは言を待たない)。特に以下の部分には貧乏勤労学生だったためか、当時は精神的及び胃袋的感銘を受けた。
“戸田「…たとえば君の眼の前に鰻(うなぎ)の蒲焼きと、天プラがあったとする。鰻が好きなら鰻を、天プラの方が好きなら君は天プラを喰う」会員「ぼくは両方とも好きなんです」一同どッと声をあげて笑う”(208ページ)
あっと驚かざるを得ない。ここには左右に傾斜しない、名誉会長が昔から訴え続けて来た、“人間主義”が断固として主張されている。ソ連製だから米国製だから、あるいは中国製だからではなく、要するにイデオロギーに関係なく、うまければうな丼でも(養殖モノでも)天丼でも(具が福島産でも)食べなさいとの、中道スピリッツが明確に視覚化されている。片寄った思考から逃れられない者には、永遠に人間王者の勝ちどきを高らかに挙げる事など出来ない。「恩師がいる。これに勝る希望はない。ゆえに我らは勝ち続ける!」自らの驚天同地の偉業を誇る事なく、戸田理事長他の先輩を立て続ける名誉会長の謙虚な姿勢にも、慟哭を禁じ得なかった。
「馬鹿言ってるんじゃないよ。『続・人間革命』にゃあおい輝彦が山本伸一役で登場、やりたい放題だったぜ。続編が撮りたくって1作目は嫌々制作したのさ。けどうな丼・天丼談義は面白い。うまいもんさえ喰えればどっちにも付こうっていう、学会の無節操な姿勢が良く出ている。今度のTPP問題だって、公明党は独裁政党のくせに、わざと内部に反対派と賛成派を作ってる。情勢次第で強い方に転ぼうって思惑さ。恥知らずな師弟共戦のゴロツキ集団だよ」
いつの間にやら、古い友人で例の元フリーの編集者(現警備員)が事務所に。いくら自業自得で貧乏しても、青年時代に染まった狂信的極左思想を捨てられない。結局、口汚く世の中を呪ったまま死んでいくのか?哀れではあるが、50歳を過ぎたら文字通りの自己責任だ。とはいえ私は諦めない。ある日突然、彼が恩師の主張する人間主義に目覚める可能性もあるから。それにゴシップ好きな奴らしく、雑学は豊富。『人間革命』に続編があるなんて全然知らなかった。しかも名誉会長が堂々と登場と。楽しみだ!もう1つは知りたくなかったが、戸田理事長役の丹波哲郎は同じ年に、『ポルノ時代劇 忘八武士道』(監督・石井輝男・東映)なるエログロ映画にも出演したと。あさましい役者根性ではある。
丹波哲郎は同書にも、「戸田城聖を演じて」との一文を寄せている。“地獄、餓鬼、畜生の三悪道に、修羅、人、天、声聞、緑覚、菩薩、仏…ですか。いやあ、地獄、餓鬼、畜生の三悪道を講義するシーンでは、ぼくも思わず熱が入ってしまったなあ。なんというか、ぼくらの生活そのものなんだなあ、病気にケンカにポルノ(笑い)…”。さっき夜勤だからと帰った友人は、丹波のこの文章のほうが戸田理事長や池田名誉会長のモノより感動的だなどとの暴言を。彼を同志として広宣流布・日顕一派撲滅の戦線に迎え入れるのには、まだまだ長い時間がかかりそうだ。(つづく)(塩山芳明)
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