日曜ミニコミ誌!/ヨロンのびのびミニコミ「かなしゃ」
休暇を利用して与論島に行ってきた。地図でいえば沖縄の鼻先、しかし住所は「鹿児島県大島郡与論町」。本州最南端、直径22キロという小さな島だ。
島だから当たり前といえば当たり前だが、四方八方が海。その大部分が遠浅で、エメラルドグリーンの海岸がどこまでも続く美しさは圧巻だ。
海はさておき、旅行に行くと何よりも楽しみにしているのが「その土地いちばんの書店に行くこと」。いちばん、かどうか分からないが、繁華街のど真ん中にある香文堂書店へ入り、よそ者の無遠慮さで隅から隅まで棚をじろじろ見て回った。郷土出版の棚、「与論カルタ」や鹿児島・奄美の本を多数出版している南方新社の本が並ぶ中、ありました! ヨロンにも、郷土のミニコミ誌が。雑誌名は『かなしゃ』、よろんよろん発行。「かなしゃ」は、人を慈しむなどの意味を持つ奄美地方の方言だそうで、調べてもなかなかイコールの日本語が見あたらない。得てして方言とはそういうもので、例えば山形出身の記者も、「やばつい」を説明するのに4語では収まらない(袖の中に水が伝って冷たく気持ち悪い状況をあらわす言葉です)。でも『かなしゃ』の巻頭言を読めば、語句の雰囲気は誰でも分かるはず。
1号、2号と発刊されていて、1号で大きく取り上げられているのは「島のまさい」。「まさい」は「ごはん」のことらしく、さまざまな料理とそのレシピが掲載されている。写真がプロ級の仕上がりで、ページづくりのセンスも良くびっくり。クレジットを見ればイラストレーター・もとくにこさんの写真で、料理や文章も本人の作品。そしてイラストは文庫本のカバーなどで有名な八木美穂子さんのもの。これは豪華!
料理の腕の件を棚に上げて、おいしそう、作りたい!と期待を膨らませてレシピを見ると、「シビ300グラム」「いも貝100グラム」「ドゥックイ1本」などなど、手に入りにくいものばかり…ヨロンにいる間に、珍しいもの全て制覇したかったが5日間では無理だった。ぜったいに近いうちにもう一回行く! そんな誓いをたてるに十分な魅力満載の「島のまさい」。
ほかにも島にまつわる読み物がたくさん詰まっているが、特に読み応えがあるのは「人」についてのルポやエッセイ。島に集まる人々の背景には、沢山のドラマがある。人まみれの関東に暮らしていると顧みることのない「全く知らない他人」の物語を、とっくりと見つめる気になるのは島のマジックか。(■『かなしゃ』1号、2号 各500円)
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