冠婚葬祭ビジネスへの視線/フューネラルビジネスフェア2011に行ってきた!(後編)
今年のフューネラルビジネスフェア、裏テーマは「カジュアル」と「老舗の底力」ではないか。そんな視点からレポートしている。前回の「カジュアル」に引きつづき、「老舗の底力」。いくら新規参入業者が多かろうと、老舗が本気を見せたらやっぱりかなわないのかも、と思わずため息が出たのが、つぎの2点だ。
まずは日本香堂の新製品「香散華」。棺用の匂い袋だ。「散華」とは、法要のさいに僧侶が撒く花片であり、多くは蓮の花片をかたどった色紙が使われている。メンコ並に固いものから薄紙系、色とりどりの仏教画が描かれているものからシンプルな単色系まで、素材も色も様々なのだが、手のひらよりもひと回りほど小さいサイズはほぼ一定している。その「散華」をかたどった匂い袋は、色とりどりで美しい。故人へのメッセージを書くこともでき、納棺の儀式で親族が一枚ずつ持ち、最後に棺に納めるのにふさわしい華やかさがある。
納棺の儀式では、最後に花で故人を囲むことも多いのだが、火葬は次の日。最後のお別れのときに棺を開けると、そこには一日たって萎れてしまったランや百合、菊があり、少し残念な気持ちにさせられるものだ。それに、脱臭シーツを敷いていてもやはり開けた瞬間の匂いは気になる。その二つの悩みを、この「香散華」は一気に解決してくれるのだった。色鮮やかでも紙製品なら変質しない。匂い袋を布団の上にちりばめることになるのだから、あとで棺を開けた瞬間の臭いも抑えられる。お香なら火葬になんら影響を及ぼさないというのもいい。
さらに少し高齢の方ならわりと知っているのが「散華」。法要で撒かれたものを拾って持ち帰れば御利益があるともされているから、故人にそれを持たせられるというのは、けっこう嬉しいのではないだろうか。
「いや、我々も、作ってみたら、予想以上にきれいでビックリしましたね」
とは、案内してくれた社員さんのお言葉。しかし、誰でも思いつきそうでありながらなかなか浮かばないアイディア商品、そして思いついたとしても、これだけ上品で美しい佇まいのものを作るのは至難の業だろう。まさに老舗の底力を感じさせる商品だった。
2点めは棺の老舗、共栄のニューウエーブ棺。わざわざ「撮影禁止」という札が立っているくらい斬新なかたちで、だから画像での紹介もできないのだが、一般の方々が一番群がっていたのがこのブースであった。昨年も、メッセージを書いた短冊を棺の蓋に並べることのできる「安曇野」などの意欲作を出していたが、今回は人生の船出を思わせるような、ヨットを模した流線型の真っ白な棺が印象的だった。字面だけ見ると、「?」と思われるかもしれない。しかし、実際はシンプルでありながら実に優美で、「ちょっと真似することはできないな」とため息が出そうな代物なのである。伝統品をきっちり、かっちり作るところは、新しい製品もやはり素晴らしい。こんな棺なら入ってもいいかも、と思わせるにじゅうぶんであった。
ジャンルとしては返礼品や手元供養品が目立った今回のフューネラルビジネスフェア。より、業界外の人が訪れても楽しめるものになったと言える。ブックフェアやフードショーのように、スーツ以外の人でにぎわうフェアになる日も近いかもしれない。(小松)
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