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2011年6月28日 (火)

鎌田慧の現代を斬る/第150回 原発事故の陰で進む「地下原発」推進派の結託

 主要国首脳会議(G8)で菅直人首相は、日本のトップとしては異例の冒頭演説を行った。ここで「2020年代の出来るだけ早い時期に、少なくとも20%を超える」(『朝日新聞』2011年5月27日)と、再生可能な自然エネルギー利用の数値目標を掲げた。
 さらにG8の前には、原発の新増設について白紙、浜岡の全面休止、電力の独占体制を揺さぶる「発電と送電の分離」という方針も打ちだしている。
 菅首相が本気で脱原発を目指しているのかそうかはよくわからない。G8の前日におこなわれた経済協力開発機構(OECD)の設立50周年記念行事で講演し、「事故を教訓に『最高度の原子力安全』を実現していく」と原発が基幹エネルギー政策の柱の1つであると主張している。

 反原発を決意したドイツのメルケル首相のような、強い意志があるわけではあるまい。おそらく原発企業との関係は薄かったため、福島原発が引き起こしている大災害から、ごく当前の政治的判断をくだしたのであろう。
 ただ、このような行動が利権に埋もれた原発推進派の反発を招いたことは間違いない。
 日本の正解と財界を牛耳る「原発絶対体制」は、政府、財界(日本経団連と電事連)、官僚、御用学者、マスコミ、裁判所などによって維持されてきた。あらゆる反対を押しつぶし、「安全」というお題目を唱えて原発に突進してきたのだ。

 原発の建設資金は1基4500~5000億円程度。135万キロワットだったら、電源三法によって20年間で1000億円ほどをばらまける。これら補助金はもちろん国民の血税だが、特別会計のため財務省のチェックも甘く、使いたい放題である。原発利権に群がっている連中は、今回の大事故が起こってもカネヅルを手放す気がない。
 こうした背景を考慮に入れて、現在の政治状況を眺めると少し違った風景が見えてくる。
 首相への内閣不信任案で国中が揺れていた5月31日、1つの議員連盟が発足した。地下式原子力発電所政策推進議連である。彼らが進める地下原発とは、岩盤の下にトンネルを掘って炉心を設置、取水や放水はパイプをトンネルに入れて行う。万が一事故が起こっても、岩盤で放射能を閉じ込められるから安心、津波の心配もないと宣伝している。
 とんだお笑い草である。万が一事故が起きれば、放射能を閉じ込めた現場に作業員が近づきにくくなり、手立てを講じることもできないまま事態を悪化させる可能性があるからだ。核廃棄物の捨て場も未解決だ。

 地下原発構想は、新しいものではない。1975年には資源エネルギー庁で研究がはじまっている。ただ安全神話が絶対だっただけに、万が一の事故を想定した地下原発は電力会社の支持を取り付けられなかったという。
 といっても議連が発足したのは、今回の事故で「安全神話」が崩壊したからではなさそうなのだ。

 まず、この議連の参加メンバーがあやしい。会長はたちあがれ日本の代表・平沼赳夫元経産相、顧問には民主党の鳩山由紀夫前首相、渡部恒三最高顧問。さらに谷垣禎一自民党総裁、安倍晋三元首相、亀井静香国民新党代表なども名前を連ねている。
 この議連については、11年6月10日の『東京新聞』は次のように解説している。
「地下原発議連は、発足のタイミングから、(菅総理の)不信任騒動との関連が取りざたされた。与野党の原発推進派が、原子力政策の見直しに傾斜した菅直人首相を引きずり降ろそうとしたのではないか。『原発推進大連立』の拠点が地下原発議連ではないか…と。
 実際、谷垣、安倍、鳩山の各氏は『菅降ろし』の急先鋒。顧問以外のメンバーを見ると、不信任賛成に動いた民主党の小沢一郎元代表に近い西岡武夫参院議長、山岡賢次副代表、松木謙公衆院議員(民主党除名)らが入っている」

 菅首相は野党はもちろん閣僚も含めた民主党議員からも辞任をうながされている。しかしいっこうに辞める気配がなく、自然エネルギーによる電力を電力会社が買い取る仕組みを定めた「再生可能エネルギー促進法案」を、自らの手で成立させると発言している。菅首相は未来を目指して、脱原発路線の具体化に全力を傾けるべきだ。それは日本および近隣アジア諸国の安全にとっての朗報である。

「原発体制」のうまみを知っている連中は、事故後も利権確保のことしか考えていない。
 たとえば日本の原子力政策のドンであり、1954年に原子力予算を初めて通した中曽根康弘元内閣総理大臣は、4月21日号の『週刊文春』で、「この危機を前にして大きくなってくれ」と無責任なことをいっている。
 また7月号の『文藝春秋』でも、「(日本の品質や技術に対する)『ブランド』の力が今回の福島原発の被災によって弱まるようなことがあってはならないと思う」などと発言している。完全な制御など不可能な原発を、核兵器の材料となるプルトニウムの獲得と利権追求のために自ら導入しておいて、事故は他人事。この無責任ぶりは、呆れるばかりだ。

 彼は2004年9月号の『Voice』でも、「とにかく『核燃料サイクル』に関して、安全性の問題は心配要らない。一方、最近出てきた経済性の問題ですが、これは、日本が大事なエネルギーの問題について外国に依存していいのか、という長期的な国策からも考えねばならない。目先の損得より国家としての長期的安定性を重視することが、政治的な判断として成立する」と語っている。
 核燃料サイクルの重要施設である「もんじゅ」は事故続きで稼働のメドは立たず、それより安全といわれてきた軽水炉でさえ、この惨状である。日本の将来性を考えるなら、事故が起これば広範囲に国土を汚染し、農作物から工業製品まで信頼を失墜させる原発など推進できるものではなかった。
 すでにドイツに続き、イタリアも脱原発にむかって歩みはじめた。国民投票では原発反対票が94.53%を占めたという。
 この結果に対して、自民党の石原伸晃幹事長は「あれだけ大きな事故があったので、集団ヒステリー状態になるのは、心情としては分かる」(『朝日新聞』2011年6月14日)と暴言を吐いた。この一家のバカさ加減には、つける薬がない。
 さらに石原幹事長は、「反原発と言うのは簡単だが、生活をどうするのかということに立ち返ったとき、国民投票で9割が原発反対だから、やめましょうという簡単な問題ではない」とも語っている。自分で考えろ!

 事故ですべての生活を奪われる恐怖や、子どもを安全に育てられなくなる苦痛、安全な食物さえ手に入らない不安をリアルに経験している人が「生活をどうするのか」を考えたら、いまなお原発利権をむさぼっている人間以外は脱原発にむかうはずだ。それは「ヒステリー」(死後だ)などではなく、正常な反応である。この期に及んで何が正常かも判断できないのは、原発利権の毒が回っているからだ。

 推進派の尻ぬぐいをさせられているのが、原発労働者だ。6月20日には、被曝限度を超えた9人目の労働者が発見された。そのなかには600ミリシーベルトを超える被曝を記録した労働者もいる。
 もともと積算で100ミリシーベルだった被曝上限を、福島原発の復旧作業に限り250ミリシーベルトに引き上げた経緯がある。一方で過去に労災認定された原発労働者の中には、累積被曝量50.63ミリシーベルで白血病を患い亡くなった人もいる。つまり250ミリという基準自体が、労働者の生命の安全を危険にさらしている基準なのだ。それすら守れないのだから、東電の労働者にたいする死の管理がわかる。
 東電の発表によれば、所在不明な労働者が69人にのぼることもあきらかになった。もともと原発労働の一部は、口入れ稼業が専門の暴力団によって支配されてきた。いまだに山谷や釜ヶ崎で危険を知らせずに日雇い労働者を集めてもいる。69人はそのような労働者なのだろう。

 また事故後は、とにかく原発を安定させるため、労働者の安全性が二の次になっている。汚染レベルが高い地区では絶対に必要となる放射線管理員が同行しないケースが増えている。総線量が防護服の内側に取り付けられているため、労働者自身は積算量がわからない。それなのに被曝量を測る専門の職員が同行しないのである。
 原発は通常運転している段階から微量放射能洩れを発生している。定期的におこなわれる原発検査でも、大量の労働者が被曝し、労災さえ認められずに大量に亡くなってきた。
 もちろんいろんな仕事の現場でも労働災害や職業病があるが、これまでの防衛対策によって防いできた。人道的な対策である。ところが原発は、稼働している限り、日常業務でさえ被曝を避けることはできない。ましていまは大量被曝である。これからの膨大な作業量は膨大な被曝者をつくりだす。殺人的現場である。自衛隊の手当てが戦場よりも高い日給4万2000円にハネ上がったのは、その証明である。そんな「職場」が許されるべきではない。

 しかも福島第一原発の労働環境は、ますます悪化してきている。すでに熱中症患者が発生。即急に処理する必要がある高濃度の汚染水による被曝も問題になってくる。
 現在、事故処理に人員を集中させており、青森県の大間や東通り村の原発建設に携わっていた労働者まで福島で働いている。総動員体制だ。それでも人が足りない。そのうえ熟練労働者の被曝も限界に近づいており、今後、簡単には育成できない貴重な人材が現場から次々と去っていくことになる。状況は悪い。
 カネと利権を原料にして運転されてきた原発は、もう止めなければならない。9月19日、内橋克人、大江健三郎、落合恵子、鎌田慧、坂本龍一、澤地久枝、瀬戸内寂聴、辻井喬、鶴見俊輔などによる「原発にさようなら集会」が開催される。準備も順調に進んでいる。脱原発の意思を、より多くの人びとで強くしめそう。さまざまな自然エネルギーへの早急な切り換えをはじめなければならない。(談)

全文は→「1107.pdf」をダウンロード

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