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2011年5月 9日 (月)

書店の風格/TENDO八文字屋

 天童に大きい書店ができた。そう聞いてから何年が経過しただろう。今度故郷に帰った時に寄ってみよう、そう思いながらも、結局出かけることが出来たのが今回のゴールデンウィーク。遅咲きの桜を楽しみながら、車で向かった。

まず注目すべきはその外観である。奥行きがほとんどないくの字型をした店舗にもかかわらず、900坪と面積が広い。ドトールが隣接していてちょっとした軽食を楽しめるのは、カフェのある本店にならったのだろうか。同じ敷地内には道の駅天童温泉があり、ゆったりとした駐車場には宮城や福島など、隣県ナンバーの車が多かった。被災した方々だろうか。被害の少なかった山形で、桜を見ながらくつろいでいってほしい、と願った。玉こんにゃくをほおばる男の子の笑顔がまぶしい。

書店内に入ると、さすがに広い。入り口付近にはやはり、地震・原発本コーナー。弊社の『原発暴走列島』も、積んでいただいている。そして新刊コーナー、話題書コーナーと、入り口正面のレイアウトは一般的な書店と一緒だが、フロアを贅沢に使ったそのつくりはさすが。本棚が、まるでスポットライトを浴びた女優のようにひとつ、またひとつとゆとりを持って配置されている。背中合わせに本を選んでいてもけっしてぶつかることはない、その豊かさに感動した。

 棚構成も大胆で、入り口から見て左は一般書、右は児童書、とざっくりとしたつくり。これならどっちに進んでいったらいいのか一目瞭然だ。一般書のほうは奥に進むにつれ、小説、ビジネス、文系専門書、理系専門書と知識のグラデーションが濃くなってくる。壁際には文庫と新書がずらっと並び、ここにも本店の方針が引き継がれているのだろうと感じた。八文字屋本店も、壁際にぎっしりと並ぶ文庫・新書が見事で、いつも圧倒されるのだ。

 奥山の故郷には今、書店が一つもない。20年前は一店だけあったのだが、それがつぶれてから、何年も出店されない。閉店間際は本当に棚を見ているだけでも辛かった。店の半分が、成人向けビデオコーナーになり、子どもが寄りつかなくなってしまっていた。何となく自分も近寄りがたくなって、どうしても読みたい雑誌などは、近所のクリーニング店に予約をして買っていた。発売日の一週間後を目安に、買いに走ったものだ。店の奥の棚にそっと取り置きされてある漫画雑誌を見つけると、飛び上がるほど嬉しかった。そんなに昔の話ではない。平成の話だ。

 久々に家に帰ると、隣のガソリンスタンドも、真向かいの魚屋も、閉店して誰も住んでいなかった。2件隣の和菓子屋も閉店していた。家の庭には山菜が群生するようになったらしい。散歩に出ようとすると、熊が出るからと止められた。無理矢理出かけてみると、数年前まではなかった沢ができていた。そんな田舎で良かったら、誰か本屋を作ってほしい。ネット喫茶も。(奥山)

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