OL財布事情近年史/第28回 「月給」から「年収」へ 1988年、給料概念の転換?(後編)
連載「OL財布事情の近年史」は、2013年12月に単行本『女と金~OL財布事情の近年史~』として発売されます。
各年代のOL像を、イラストを交えて解説する辛酸なめ子さんのプチ時評つき。辛酸さんには、カバーイラストも描いていただきました。
エピローグには最新の女性誌お財布事情が書き下ろされ、女性誌創刊号の画像50数点を掲載。30年ぶんの「OLの財布の中身」が一気に見える本となりました。
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前編のつづき。
88年、女性誌においてはいつのまにか「50万円の月収があったら、女ひとり理想的な生活ができる」」(『Hanako』88年9月8日号)など、結婚前提ではない生活設計が、いつのまにか特別なことではなくなっていた。
この年収概念は、いつ頃からなのだろうか。思い当たるのは、外資系ブーム。「うちはガイシだから年俸制で」というのが、あの頃のステイタスだった。『とらばーゆ』86年4月25日号「あなたがイメージする外資系企業をさぐる Chance・Money・Vacationを徹底研究」は、その微妙な英語混じりが当時の雰囲気をよく伝えている。給与に関しては「High Salary 給与は自らの能力の証」として、「面接の時、希望給与額をはっきりきかれました」(J・ウォルター・トンプソンカンパニー・ジャパンに中途入社)、「年俸として、年齢に11をかけた数字がだいたいの目安だと教えられていたんです」(外資系秘書養成学校WINSを卒業してカナダ・ロイヤル・バンクにジュニア・セクレタリーとして入社)などといったエピソードを紹介。憧れの域を出ていないかもしれないが、給料も働き方も自分で決められるという選択肢をOLにも示唆した。年収という考え方も、この頃からスタンダードになってきたのではないか。
これまで女性誌を調査して「年収」が語られていたものの筆頭といえば、結婚相手の条件としてだろう。「結婚相手の収入はどれくらいが望ましいか」(『non・no』85年)の問いは、当然のように選択肢は年収で、平均が386万円。『とらばーゆ』でさえ「結婚するなら年収500万の奥田瑛二タイプじゃなくっちゃね!」(87年6月5日号・「OL100人のホンネ調査」)と、高い年収は結婚の前提条件のようである。年収は男、というか「夫」の象徴だった。自分も年収ベースで考えるようになったなら、確かに非婚が増えるのもいたしかたあるまい。
ま、それもこれも好景気の後押しもあったからこそ。80年代いろいろと手に入れたOLは、アフターバブルの世界をどう生き抜いていったのであろうか。(神谷巻尾)
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