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2011年5月17日 (火)

鎌田慧の現代を斬る/第149回 浜岡原発停止と米国従属

 浜岡原発が全面停止した。福島第一原発での歴史的な大失態といえる4基連続暴走を受けてのことだ。このまま廃炉にする運動の継続が必要だ。
 原発は政府主導で建設操業され、政府の「行政指導下」にあることを、改めて内外にしめした。
 日本列島が地震の活動期に入ったともいわれているだけに、もっとも地震に弱い浜岡原発の危険性ははやくから叫ばれていた。事故で予想される被害の大きさに、菅直人首相もふるえあがったにちがいない。2~3年後、堤防が完成したら、再開とはいわせられない。脱原発の一里塚にしたい。

 これからの問題は、今回の全停止から廃炉にむかう道筋を世論の力でつくりだせるかである。浜岡原発はかねてからもっとも危険な原発と批判され、地域住民が移転するケースも少なくなかった。というのも駿河湾から四国沖にかけては、90年から150年間隔でマグニチュード8クラスの巨大地震が発生するいわくつきの地域だからである。

 非常識きわまりないことに、浜岡原発は東海地震震源域の真上にある。しかも東海地震は隣のプレートで起こる東南海地震の影響を受けやすい。ところが1944年の東南海地震は東海地震を誘発させることがなかったため、1854年から東海地震のエネルギーが溜まりまくっている。今後30年以内にマグニチュード8クラスの東海地震が発生する可能性が87%という切羽詰まった状況が、浜岡原発の真下でうごめいているのだ。
 今回の福島原発の被害を考えれば、浜岡原発全停止は当然といえる。しかし今回の決定は、海岸沿いの高さ10メートルほどの砂丘と原発の間に、新たに15メートルほどの防潮堤を新設し、背後の山の上にも非常電源を装置する津波対策完了までの緊急措置だ、と政府も中部電力も繰り返している。300億円もかけて整備し、2年後には再稼働するというのだから呆れる。

 原発は津波によってだけ電源が破壊され、給水できなくなるわけではない。今回の福島原発の事故でも、津波で非常電源が破壊される前に、パイプの破断によるダメージがあったという指摘がされている。原発はプラントの中を細管が何キロにもわたっている、極めて繊細な装置である。これまでも細管が腐食したり摩耗したりして、放射能汚染された水などを漏洩、事故の原因にもなってきた。つまり津波対策だけで、地震による原発被害を食い止められるわけではない。

 そもそも地震大国であり、米カリフォルニアの一州にも満たない国土の日本が、海岸線に54基もの原発が並べているのは、異常な光景である。今回、政府や電力会社は「想定外」という言葉によって責任回避をしようとしている。しかし原子核の爆発を人間がコントロールすること自体、自然からみれば「想定外」なのだ。また、なにが起こるかわからない自然界を、人間の想定内に収めようとすること自体、自然への冒涜といえる。それが今回の大地震と大津波という自然の反乱によって証明された。
 岩手県釜石市の世界一の深さを誇る堤防は大破、日本一の高さを誇る同県宮古市のスーパー堤防も津波を防げなかった。やはり自然の猛威すべてに、技術で対応しようという人間の浅知恵が間違っていたのだ。バカ高い防波堤に頼るのではなく、警報装置の設置、避難場所や避難路の確立、あるいは避難訓練など、人間の知恵と感覚のなかで警戒していくしかない。

 最近、大きな問題となっているのが原発の放射性物質による被曝だ。4月末に内閣官房参与を辞任した小佐古敏荘東大教授も、小学校の校庭の基準が20ミリシーベルトとしたのは、とんでもない、と辞任理由の1つとしてあげた。
 国の基準では、年間5.2ミリシーベルトを超える区域は放射線管理区域に設定される。それをはるかに超える基準を、放射能の影響を受けやすい子どもの運動場に当てはめるのは、非人間的な決定だ。
 そもそも被曝線量は、1ミリシーベルトでも人間にとって害悪である。放射線そのものが害であり、レントゲンや放射線治療などで使うのは、放射線被曝のマイナスを超え、健康上のプラスがあるときに限られる。被曝はするが、病気を早く発見して手当できるといったバーターで行われるものだ。
 福島の学校の基準決めた際、どのような議論があったのかはわからないが、子どもの将来が心配だ。即急に考え直す必要がある。

 被曝でもう1つの大きな問題は、原発の労働者である。
 現在、福島原発4基の安定のため、大量の労働者が働かされている。これが原発の本質である。操業中に被曝して病気になって亡くなる労働者もいれば、事故で被曝して死ぬ人もいる。被曝による死は原発内では日常的にある。
 しかも人員確保のため、事故後には被曝量の限度が年100ミリシーベルトから一気に250ミリシーベルトに引き上げられた。これまでもの基準でも、放射能によって労働者が大量に亡くなっているのに、だ。
 原発と人間が相容れないことはヒロシマ、ナガサキでもハッキリしていたはずだ。ところが、福島第一原発に深くかかわっている核産業・東芝副社長は、今回の事故にともなう「影響が出るとは思わない」と記者会見で述べた。原発を押しつける商売のためである。
 アストラ刊行の『原発暴走列島』にも詳しく書いたが、東京電力の「安全」性とは、事故があっても「事故はない」と言い抜けてきたものだ。安全・保安院も、そのウソを摘発しない。それどころか内部告発者の氏名を東電に教えてまで、「安全」の構築に励んできた(159頁)。

 原発推進の元凶、経産省幹部が天下りしている東電の情報で動いている政府にイライラした米政府はクリントン国務長官を送りこんできた。「工程表」は彼女にみせるための作文だった。「トモダチ」作戦は米軍従属の軍事演習にされ、自衛隊は米軍の指揮下に入った。「復興需要」をクリントンは狙って、全米商工会議所会頭を連れてきた。

 一方、東電は土下座こそ繰り返すが反省の色はない。
 膨大な損害賠償請求に対応するためとして、役員報酬の5割カットや従業員の2割カットを表明。しかし常務以上の役員報酬は半減しても、3600万円。厚顔無恥だ。
 通常の会社なら、これだけ大規模な事故を引き起こせば倒産してしまう。しかし東電には、賠償金の足りない分は政府に払わせようと走り回っている。損害賠償の目安をつくる原子力損害賠償紛争審議会にたいして、「原発事故と被害の因果関係あると的確に判断する基準の設定」などを、東電側は要望書にまとめて提出した。「因果関係」がないとカネを支払わないのは、電力会社の常套手段だ。被曝労働者ばかりか、被曝住民がこれからどれだけでるかわからない。

 また、この要望書には「国による援助が必要不可欠」とも書かれてある。甘い汁を吸いながら、血税を得ようという姿勢は、政府内からさえも批判が渦巻いている。
 こうした姿勢の背景には、自民党政権時代からつづいてきた電力会社と政治家の関係性がある。電力会社の役員たちは、個人献金という体裁で自民党に大量のカネを納めてきた。一方、電力会社からカネをもらった政治家は、原発を設置した地域などに税金をばらまき、民間企業である電力会社をバックアップしてきた。両者の癒着は、自民党の悪政の代表格といえる。だからこそしがらみを断ち切って、東電の措置を決める必要がある。
 チッソとおなじように、東京電力が操業している限り補償金を払いさせつづける体制をつくっていくべきだ。東京電力は補償金を支払うための存在にすればいい。株主配当や役員報酬は最低に抑えて国家管理にし、余剰金は被災者の生活にあてる。

 じつは福島第一原発は、現在も安定しているわけではない。第一原発は目下メルトダウン中、第3号機でも炉内の温度上昇が止まらず、圧力容器の一部では300度を超え厳重な警戒が続いている。4号機では使用済み燃料プールを支える壁が火災で破損して補強の耐震工事が必要になっている。が、プールから高濃度汚染水が漏れて工事に取りかかれない状態だ。建屋が崩れ、むき出しのプールから使用済み核燃料が転がりでれば、高濃度の汚染が広い地域に広まってしまう。

 原発の危険性がようやく全国的にひろまった。もう地域住民をカネで釣るのはやめて、無理な原発の新増設も完全に停止、段階的に天然ガスなど代替エネルギーにむかえ。現在、国内で14基の新増設が予定されている。東京電力東通原発一号機などの3基が建設中。福島の5、6号建設を含めた11基が着工準備中である。すべていらない。
 さらに95年のナトリウム漏洩事故から約10年ぶりに再開して、すで大規模事故を起こしたもんじゅの停止、世界的に撤退している再処理工場建設(青森県六カ所村)の中止も緊急だ。また、敦賀、美浜など30年以上たった原発の停止も必要だ。
 このような動きの先に、全原発の段階的な廃止の道筋もみえてくる。もちろん電力不足になるという批判は必ずでるだろう。しかし休止中の火力発電などを稼働させてカバーし、段階的な停止に合わせた自然エネルギーの早期開発でカバーしていけば、電力量は確保できる。
 まず原発ありき、と持続可能な自然エネルギーの研究と設置をサボってきたツケが、福島大事故だったのだ。

全文は→「1105.pdf」をダウンロード

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