神谷巻尾の震災日記【4】
「がんばれ東北、がんばろう日本」と、国民みんなが復興支援に目を向け始めたと思ったら、強い余震が頻発、福島原発事故レベル7、と事態が一向に収まらない。原発被害は本当に大丈夫なのか、日本経済が崩壊してしまうのでは、といった恐怖が被災地以外にもじわじわと広がってきたように感じる。今までの生活を脅かされつつあることへの不安が、東京でも様々な形で現れてきた。
東京都知事選投票日の4月10日、高円寺では1万人を超える反原発デモが行われた。参加者の大半が20~30代の若者。当初は原発事故復旧に立ち向かう自衛隊や東電職員、不眠不休の枝野官房長官への礼賛が多く、原発自体を否定する意見は少数だったと思うが、ここに来て一挙にアンチの声が高まった。もしかしてその一因では、と思うのが、俳優のいしだ壱成が地震直前の3月4日に書いたブログ。話題になっていたので読んでみて驚いたが、彼は熱心な脱原子力論者で、子どもの頃母親と原発実験中止を訴える運動に四国まで行った体験をはじめ、日本の原子力発電の現状を長文で綴っていた。おそらくこの記事に共感したのは、彼と同世代の20~30代だろう。お金もなく義援金や積極的な支援はできない、だけど何かしなければと悶々としていた世代が、このような情報に触れて一気に「反原発」「デモ」に向かったのではないか。
しかしながら、都知事選ではあっさり現職石原氏が4選を果たした。石原氏は主要候補者の中では唯一原発推進を明言していたが、そこは争点にはならなかったらしい。朝日新聞の出口調査によると、70歳以上の59%、「防災・危機管理」を重視した人の55%、「石原都政3期12年を評価する」人の56%が石原氏へ投票した。「震災も原発もかんべんしてくれ」「これまでと変わらず豊かに」「安全を守れ」というのが、高齢者の怒りの現れなのかもしれない。
あまりに状況が日々変化するため、1週間前に書こうと思ったことも、昨日用意した資料も、すでに古くなっているこの頃。せめてその変化から退避せずにいたい。1点だけ、書こうと思っていたことについて。4月1日、新聞で雑誌『STORY』の全面広告を見た。定価を1割値上げして、その分を寄付として被災地支援に役立てるという。同誌はかの『JJ』の姉、というか4代上の姉雑誌で、現40代女性向けの女性誌。20代の頃バブル全盛期、ずっと消費意欲旺盛なまま年だけとってきた世代が対象だ。上昇志向で新しいことが大好物のこの層とチャリティというのが実にマッチしている。そして、数日後の皇太子夫妻が東京の避難所を訪問、という報道。適応障害の雅子妃の、約半年ぶりの公務復帰が避難所への訪問というのが印象深い。そこに意義を見いだし、行動されたということなのではないか。そして彼女も40代。変化を前向きに受け止められるのはこの世代の特権、ということで、そろそろ本筋の『OL財布事情の近年史』に戻りましょう。時代はそのバブル世代の、ちょうどバブル全盛期の頃。恐いもの見たさで、乞うご期待。(神谷巻尾)
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