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2011年3月 3日 (木)

ロシアの横暴/第54回 報じられないロシア国際空港テロの謎(下)

 ところで今回の事件にはいつもと違う点がある。静かになったところを見計らってチェチェン人の「犯行声明」が出たことだ。しかも声明を出したのはテロ予告宣言発信中のチェチェン人ドク・ウマロフである。本来チェチェン人はこうした大きな成果(?)のあがった事件のあとには真っ先に犯行声明を出す。過去の犯行声明のなかには明らかにほかの誰かが起こした事件なのにチェチェンの犯行だと主張したこともあるほどだ。それが10日以上も経ってからおずおずと犯行声明を出すのは「何か変」である。

 ドク・ウマロフならまずプーチン首相が「チェチェンは関係ない」と断言したあたりでブチ切れて(俺たちの存在を甘く見るな、と)犯行声明を出しそうなものだ 。さらに、「犯人は20才のイングーシ人」発表のときも黙っていた。チェチェン人とイングーシ人はほぼ同じ民族で、ロシア・ソ連時代を通じて同じような差別・弾圧を受けてきたから両者の仲間意識は強い。しかし、イングーシがチェチェン を「出し抜いた」となると状況は一変する。こんな「偉業」を成し遂げるのにチェチェン人をおいて誰がある、というわけだ。だからイングーシ人犯人説を堂々とうち消してチェチェン人の犯行であるという声明を出すはずである。やっぱり変だ。

 ロシア政府がチェチェンを断定するとそれに呼応するようにチェチェンの犯行声明が出されるというのがこれまでの図式だった。
 では今回はなぜ呼応しなかったのか。
 勘ぐりでしかないが、「チェチェンは関係ない」に呼応して黙っていてやったのに、約束の謝礼がなかった、あるいはずっと少なかった。次のテロが起きたときに犯行声明がどう出るかで明らかになるだろう。
 あるいは冬季五輪やワールドカップを控えてチェチェンのせいにできないプーチンをちょっともてあそんでやった。
 今やドク・ウマロフの親衛隊になって集まってくるチェチェン人青年たちの敵はロシアの傀儡「ラムザン・カディロフ」である。青年たちを殲滅するのに躍起になっているのはロシアではなく、カディロフ大統領である。チェチェン人をチェチェン人同士闘わせるロシアの作戦にうまく乗じているのがドク・ウマロフと言えそうだ。
 テロといえばチェチェン、と言われて久しいが当のチェチェン一般人の一貫した見解は「ロシア政府と一連のテロリストは裏で協力し合っている」である。
 確かに過去のチェチェンがらみ事件はどれも確実にチェチェン人が絡んでいる。だからといってチェチェンの仕業とは言い切れない。実行犯はチェチェン人だったことだけのことだ。
 
 たとえば先述のモスクワ劇場占拠事件だが、あれほどの人数分の火薬を劇場まで運ぶにはロシアの特務機関の全面協力が必要である。このことだけでも真犯人はFSB(ロシア特務機関)であることがはっきりしている。実行犯のなかで1人だけ生き残った、というより逃げ延びたチェチェン人が事件後まもなく交通事故で死んだ。ロシアFSBに協力したご褒美に口封じされた、とチェチェン人は言っている。
 劇場占拠事件に限らずテロ事件を注視していくとロシアと過激なテロ集団は裏でつながっている、というチェチェン一般市民の見方も十分頷ける。

 今回の事件もいままでの事件と同様、真相は何もわからない。わかっているのはこのままほったらかしにされることだけである。(川上なつ)

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