寺門興隆を読む/第6回 2011年3月号「感動葬儀のススメ」
今月号の見出し一覧は、
戒名正当論/宗派の窮乏寺院対策/特集・気になる事件のその後/文化財指定異変/故人に語りかける感動葬儀/本堂の椅子/ネパール仏典を守る/韓国民間信仰の読経
なんといっても気になるのが「宗派の窮乏寺院対策」であろう。曹洞宗の調査によると、年収300万円に満たない寺院が半数を超えるとのこと。しかも過疎地域の曹洞宗寺院では年収100万円以下が30%弱。「非過疎地域との格差が問題だ」と記事では提起しているが、非過疎地域のデータを見ても年収100万円以下は25%弱とある。世帯の年間収入と考えると、平成20年の総務省調査では全国平均世帯年収が637万円なので、そこにも格差の問題が潜んでいるとはいえ、あまりにも寂しい。
小松も過疎地域の出身だし、仕事で寂れた寺を山ほど見てきた。檀家数が少なく、一年に一度しか葬儀のない寺もザラで、この数値にはうなずけるところがある。社会教師などを兼務している住職もおり、葬儀発生の電話をかけたところ「3時半まで授業なのでそのあとでないと来れない」といわれるのはしょっちゅうだった。
この事態に住職たちはどんな対策をうちたてているのか。これも調査結果が出ている。日蓮宗が852カ寺を対象に調査した「過疎地域寺院活性化実態調査」だ。「寺院の活性化に取り組んでいますか」という質問に対しては、130カ寺が「取り組んでいる」と回答。実際にどんな取り組みをしたかというと、「「日常法務の充実・活性化」が六十二カ寺と最も多く、「まさに当たり前のことを当たり前に地道にやることが基本だということを示している」と委員会は言う」。ええと、あんまり具体的には動いてないみたいである。『寺門興隆』には、お寺で精進カフェを営む方法とか、イベントを立ち上げて人を呼ぶ方法が毎号のように特集されているので、参考にしたらいいと思う。そもそも人がいない過疎地域じゃ、それも難しいか。
「葬式仏教」と揶揄されるのは問題でも、お寺のメインの仕事はやはり葬儀。「故人に語りかける感動葬儀」という記事では、葬儀の中ほどで読まれる故人の人生をあらわした文章を工夫することで感動を呼ぼう、とすすめている。これは小松も全くの賛成だ。難解なお経の中で、唯一わかりやすい日本語が出てくるところだから。司会をやっていると、その部分だけが毎回違う文章であることがよく分かる。いつもオリジナルな文章を作ってくるご住職の時には、「今日はこの人のこと、なんて浄土に紹介するんだろう?」と楽しみですらあった。残念なのは、お客さま方がその部分をあんまりよく聞いていないことだ。「お経の中身についてはよく分からない」という先入観があるからか。
葬儀の式次第は宗派によって異なるが、特に禅宗系統では「剃髪して戒律を授けて仏弟子になってもらって、故人の代わりにお経を読んで、あの世への送り火をつけて故人がどういう人だったかを述べ、引導を渡す」という一連の流れがある。式の要所要所でそういう説明が少しでもあれば、「葬儀が形式的に過ぎる」とか言われなくても済むのになあと、葬儀社勤務時代からいつも思っていたのだ。
しかしこの文章、漢詩の知識がないと正式には作りがたいらしい。曹洞宗では、故人の人となりや業績について触れる部分は「引導法語」という。その構成は、「まず七言絶句で故人の人柄などを表した後、字数を合わせた対句にして故人の来歴を述べたり、仏の教えを織り込んだ腹の部分が続き、最後に主に先人の句を引用した脚句でまとめるのが一般的」という。さらに漢詩なら韻を踏むなど決まりごとが多く、常人のなせる業ではなさそうだ。
しかし取材に答えていた静岡県のご住職は「法要や和尚の本葬儀などではできるだけ正式に作るようにしますが、引導法語は韻等はあまり気にせず、意味を重視しています」という。正式なものも作れるからこそ、必要に応じて崩すことができる。常識を打ち破っていくのは、つねに基本を知っている常識者である。改めて思い知らされた。(小松)
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