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2011年2月11日 (金)

OL財布事情の近年史/第20回 お勤め先は、ニコルです。JALです。バブルの匂いがしてきました

連載「OL財布事情の近年史」は、2013年12月に単行本『女と金~OL財布事情の近年史~』として発売されます。

各年代のOL像を、イラストを交えて解説する辛酸なめ子さんのプチ時評つき。辛酸さんには、カバーイラストも描いていただきました。

エピローグには最新の女性誌お財布事情が書き下ろされ、女性誌創刊号の画像50数点を掲載。30年ぶんの「OLの財布の中身」が一気に見える本となりました。

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「月にあと2万円欲しい」と言っていたOLが、日常会話で「利回り」だの「株」だの言うようになるまで、わずか数年。激動の時代である。お金観の急激な変化は、当然ながらお金の出どころ、仕事の変化にリンクしている。女性誌を眺めていくと、そんな仕事の変遷も見て取れる。今回はOL仕事視点から、この時代をおさらいしてみようと思う。

 80年代初頭、20代女性の仕事といえばどこの会社であっても「一般事務」で、「職種」を表すものではなかった、というのは第4回でもふれた。専門職というのはまだ憧れの域で、例えば『an・an』81年11/13号から始まった「白書/女の職業」シリーズでとりあげられている職業は、スタイリスト、イラストレーター、ツアーコンダクター、レポーター、モデル、ブチック店員(ハウスマヌカンはまだなかった?)、など、いわゆるカタカナ職種ばかり。最先端でかっこいい、お洒落、といったイメージ先行で現実味は薄い。しかもこのシリーズ、後半は「テレビで働く女性」「広報で働く女性」とあまりに漠然としている。

 その後82〜83年頃からにわかに景気がよくなり、仕事の量も幅も増えてきた。女性誌がさまざまなタイプに分化したのもこの頃だ。84年創刊の『エフ』は、働く女性に特化した誌面構成。ファッションも通勤着のコーディネイトや着回し術など、いわゆるリアルクローズをとりあげている。86年2月から始まった連載「おんなの天職、その傾向と対策」では、職業がより具体的になっているのが顕著だ。第1回のタイムキーパー(「テレビで働く女性」じゃなく)から始まり、会議通訳、外資系企業秘書、ファッションメーカー企画室、レコード宣伝プロモーター、コンパニオン、メイキャップアーティスト等々、専門職が並ぶ。それらの仕事選びの背景が、とてもあの頃っぽい。「アテネ・フランセ→津田スクール・オヴ・ビズネス→モルガン銀行→モルガン・ギャランティ・リミテッド副社長秘書」とか「生命保険会社入社→ただのOLじゃつまらない→文化服装学院でニットデザインの勉強→ニコル入社」とか「上智大卒、クリエイティブな仕事目指してCBSソニー入社。英検は1級」とか。いたいた、向上心が強くて、転職や勉強に前向きな女性たちが。そしてそれらを受入れる余裕も、企業にはあったのだ。

 一方同じ84年創刊の『CLASSY』は、前向き派とは真逆。周知の通り『JJ』のお姉さん版だが、女子大生を卒業しても意識はそのまま、恵まれたお嬢さんOL生活を是としていて、これはこれで当時相当数いたのではないかと察する。85年4月「秘書課OLのワードローブ」に登場するのは「年配の方と接することが多いので流行の服はいっさい着ません」という家電メーカー役員秘書23歳に、イブ・サンローランのスーツやマギースポーツのワンピースを着る外資系医薬品会社役員秘書24歳など。某週刊誌「うちのヨメ賛」(今は「縁あって、父娘」ですね)に出てきそうな、いい家のお嫁さん候補風のスタイルである。または野暮ったい。また、当時最もステイタスだったのはCAと呼ばれる前の、スチュワーデス。85年6月号「スチュワーデスのオフスタイル」では、「香港ペニンシュラホテルアーケートでシルクのワンピースをオーダー(¥140,000)」(英国航空28歳)、「買い物は、ローマのラファエロ・サダート、ブルーノ・マリーの手袋や靴。北京ではカシミヤのセーター。香港のプラザホテルアーケードはカシミヤのコートが¥80000くらいでオーダーできるのが魅力です」(日本航空30歳)。「仕事柄、ひと月の半分以上を海外で過ごす、国際線のスチュワーデス」というのが、あの頃のセレブの記号だったようだ。

 かと思えば、主流派『non・no』は相変わらずの王道というべきか、85年4/20号「西洋占星術社内恋愛サクセススケジュール」、86年3/20号「ゼミナール・がんばれ社内恋愛!」など、会社は男GETの場、と割り切っているかのようである。

 OLといっても、仕事スタイルもモチベーションも目的も様々、もはや十把一からげにはできなくなってきた80年代中期、まさにその86年に、かの男女雇用機会均等法が施行された。これは大きなトピックスだったのでは、と思いきや当事者であるはずのOL向け女性誌で、特に話題になっているふうでもなかったのは、なぜ。考察は、次回へ。(神谷巻尾)

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