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2011年2月18日 (金)

OL財布事情の近年史/第21回 ヨユーなOLの向上心が向かう先!

連載「OL財布事情の近年史」は、2013年12月に単行本『女と金~OL財布事情の近年史~』として発売されます。

各年代のOL像を、イラストを交えて解説する辛酸なめ子さんのプチ時評つき。辛酸さんには、カバーイラストも描いていただきました。

エピローグには最新の女性誌お財布事情が書き下ろされ、女性誌創刊号の画像50数点を掲載。30年ぶんの「OLの財布の中身」が一気に見える本となりました。

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 OLの興味も働き方もさまざまになってきた。景気がいいからお金もあるし、世の中右肩上がりで希望にあふれている。そんな時代での、男女雇用機会均等法スタートであった。残業時間制限の大幅な緩和、男女同一賃金、昇進・配属で男女平等とする努力義務などが盛り込まれた雇均法。これによってお茶汲み・コピーとりは卒業、バリバリ働いて、みんなキャリアウーマンをめざしたか。というと、そうでもないことがこれまでの検証からも想像できる。実はわたくし、施行前夜の1985年に就職したので、リアルタイムの雇均法世代なのです。渦中にいた頃の実感もまじえながら、当時の女性誌をみていこう。

 まず雇均法に一番遠いと思われる、『non・no』。絶対価値が恋愛と結婚、というコンセプトが一貫している同誌では、キャリアの影はまったくない。85年1〜4月に「ブライダルアンケート 短期集中連載」として、読者1万9823人回答という大調査の分析を連載しているが、読者の理想は「4〜5年働いて、23.7歳で結婚」(1月5日号)、理想の結婚相手は1位が公務員、相手に求める年収は平均386万円(2月20日号)と、地道すぎる結婚願望がありあり。「結婚生活と女性の働く意欲」と題した4月20日号では、「85%が、キャリアウーマンを望まない!」と言い切っている。これは設問もどうかと思うが、「結婚せずに仕事に生きている女性を、どう思いますか?」という問いに対し、「自分もそうした生き方をしてみたいと思う」という積極肯定派はわずか5.5%。「就職と結婚に関してどのように考えていますか?」では、「結婚後も仕事ができる会社を選ぶ」は23.1%、「結婚後のことまで考えて会社選びはしない」44.0%をはじめ、就職に将来のビジョンを持っていないのが多数派だ。私も外資系コンピュータ会社に男女同一賃金の営業職で入社したが、同じ部署の同期女子4人のうち、3人が3年以内に社内結婚で辞めました。雇均法、涙目。

 実際当時のOLがどんな状況だったのかがリアルに伝わってくるのが、『コスモポリタン』86年3月から連載が始まった「ドキュメント仕事」。「今、何を考え、何に悩みどんなことしたいと思ってますか?あなたのお仕事拝見します」というリードのとおり、商社、銀行、デパート、化粧品メーカーなどごく一般的な仕事の女性に、仕事の内容や悩みなどをじっくり取材している。入社5年目、大手不動産会社勤務28歳の仕事は、いわゆる事務職。「何年勤めても仕事の内容は変わりません」とはいえ、年収300万円と決して悪くないのがこの時代。「やりがいのある仕事をもらえる可能性はゼロ」なので転職を考えており、宅地建物取引主任者資格をとり、実務翻訳の勉強をして、不動産・建築関係か、外資系を狙う。しかしもうひとつ別の夢があり「ものを書くのが好きで、シナリオ・ライターの講座にも通ってます。ゆくゆくはそちらの仕事も……」。わー、リアル80’sですね。当時の28歳女子は「結婚か、転職か、手に職(または留学)か」の三択で迷っていたのである。間違いない。

 同じシリーズの86年10月号、ワコール勤務28歳のデザイナーは、「男に頼らず自分で一生食べていく決心をしています」というが、本当にいきたかったのは「ファッション雑誌関係」。活字の世界に魅かれて、童話を書いている。86年11月号東芝情報機器の派遣社員、29歳プログラマーは、臨床検査技師の資格を取り医学部研究室に勤務していたが、いいソフトがなかったことが不満だった。人材派遣のマンパワーでコンピュータの勉強ができることがわかり、登録して1ヶ月間トレーニング(無料で)、その後製薬会社、建設省などへの派遣を経て、現職の医療情報システムに関わる。登録したら無料で勉強!派遣先は大企業に中央省庁! 同じハケンでも、昨今の年越し派遣村、派遣切りと、なんと隔世の感があることよ。「1年のうち10ヶ月仕事して2ヶ月は遊ぼう、と思ってたんですけど、それは、もう少し勉強してから、と思ってます」と、余裕あるからこその向上心が「あの頃」過ぎて、きつい。

 この頃の女性誌モノクロページを見ていると、フェローアカデミー、日本翻訳家養成センターなどの翻訳講座やら、「ef転職セミナー」やらの広告が目立つ。もっと自分を活かしたい、やりたい仕事を見つけたい、というOLのどん欲さは、雇均法という制度によってではなく、何を選んでも許される、経済状態から生まれたものだったのでは、と今になってみれば思うのであった。(神谷巻尾)

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