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2011年1月 7日 (金)

OL財布事情の近年史/第15回 「あと2万円」の壁は、男女格差の壁でもある。雇均法前夜

連載「OL財布事情の近年史」は、2013年12月に単行本『女と金~OL財布事情の近年史~』として発売されます。

各年代のOL像を、イラストを交えて解説する辛酸なめ子さんのプチ時評つき。辛酸さんには、カバーイラストも描いていただきました。

エピローグには最新の女性誌お財布事情が書き下ろされ、女性誌創刊号の画像50数点を掲載。30年ぶんの「OLの財布の中身」が一気に見える本となりました。

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 あけましておめでとうございます。年明けは株高・円安で始まりいよいよ景気回復? 今年こそお財布がうるおってほしいものです。
 さて新年最初の今回は、30年前の景気上昇期のOL財布を『コスモポリタン』83年7月号「私の給料・隣の給料」から読み解いてみる。この特集は、官公庁や民間の統計、独自の取材や座談会、街頭インタビューなど、OLの給料についてあらゆるアプローチでがっぷり取り組んでいる。
 まず「PART1日本全国・女の給料調べ」では、自分の給料が同世代の中でどのくらいのランクなのかがわかる労働省の調査、80年創刊の就職情報誌『とらばーゆ』の「職種別・年収ランキング」などのデータが充実。お昼休みの日比谷公園、新宿副都心、青山で20代のワーキング・ウーマン50人に聞いたというインタビューでは「今の給料で十分」と答えた人はゼロ、「〈あと2万円は欲しい〉と、ほとんどすべての人が語ったのが印象的でした」とあり、やはりプラス2万円神話は根強い。だが不満の声としてあがっている「不公平、特に男女差がある」というのは、これまでの記事ではあまり見られなかった意見。結婚までの期間限定、おこづかい稼ぎや自己啓発の一種だったOLが、仕事であり稼ぎとして認識されるようになったのがこの頃からだったのかもしれない。男女格差には不満噴出で「男性は一律2万円多いんです」(クレジット会社・24歳・大卒)、「女性社員の職能給は公募入社だと1万円なのに、縁故は2000円。(略)男性は縁故も公募も取り扱いは平等なのによ」(銀行・23歳・短大卒)と、確かにそりゃ怒るよ、てか公募縁故格差ってトンデモ規約すぎでしょう。
 次の「PART2 男と女の給料差・実態ルポ」や「PART3 短大同期生5人5年後の給料を追う」では男女差について個別のケースをじっくりとりあげている。服飾メーカーデザイナー・23歳・専門学校卒のA子さんは、手取約10万円。同期の男性は10.7万円で額面では差はないように見えるが、実は「男尊女卑もいいとこ」の格差があると「感情を激しての発言!」が続く。まず入社時の基本給の男女差は9000円だが、3年目には1万7000円。男性は30歳になると役職試験を受けられるが、女性は受験資格なし。男性にはきれいな寮があるが女性はなく、住宅手当もなし。「女性は残業すると無能者扱いされる」というくだりでは、当時の会社イメージを表す一節が。

「女性には勤務時間内にこなせるだけの仕事しか与えていないというんです。デザイナー職ならば“才能あるデザイナーなら、アイデアが次々に浮かんできて勤務時間内にはノルマはこなせるはず”という単純発想が会社にあるわけです」

 えぇ? 一見理解不能のこの理論、会社もトンデモだった。今では噴飯ものだが、当時は別に普通だったのか、続くケースもそんなエピソードが満載だ。一般職に編入しようとしたら筆記試験の前に部長に呼び出され「〈女が男と一緒に仕事をやっていくなんて、しょせん、無理だよ〉とネチネチ言われた」(商社・23歳・短大卒・手取9万4000円)、同学歴同年齢で同じ設計士として入社したが、女性はお茶汲みや雑用、男性は設計に集中して1級建築士合格、職能手当に差がついた(設計事務所・25歳・大卒・手取り11万8000円)、「残業はほとんどしません。というのも、社内のお茶、華道教室がうまく残業できない時間に始まるんですもの(笑)」(25歳・化学薬品会社・短大卒・月収12万3000円)など、再現VTRで見たいようなシーンばかりだ。
 そんな不満から、「転職」が注目され始めたのもこの頃なのだろう。先に挙げた『とらばーゆ』が創刊して、転職=「とらばる」なんてことばが流行語になった。28歳の製薬会社研究補助員C子さん、7年目で年収が男性と36万円開き、高校の化学教師に転職。「28歳にもなって親と同居。(略)お部屋も借りられないお給料っていうのは、やはり、おかしいなっていう気がします」「今まではやりがいとか勉強とかに重点をおいて働いてきたけれども(略)お金にもこだわっていくべきなんだなって思いましたね」のコメントに、おおおっ、ようやく「使うもの」からの脱することになったのか、と感無量。男女格差、働き方、会社のシステム、転職、など一挙に様々なテーマが増え、OL財布はどこに向かっていくのだろうか。わくわく。(神谷巻尾)

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