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2011年1月31日 (月)

鎌田慧の現代を斬る/第147回 公文書が明らかにした米国従属と管理強化の推進

 毎回、菅政権の悪口をいうのも消耗だが、彼が首相になってなにをしたいのかが、ますます見えなくなったきた。
 鳩山由紀夫前首相が、普天間飛行場の移設について「最低でも県外」と明言したことが懐かしい。鳩山前首相は実行力がまったくないまま、世論の批判を受けて沈没した。しかし彼は、日米安保を「駐留なき安保」に変え、「東アジア共同体」を掲げて、米国従属から少しでも離脱しようという姿勢をしめしていた。これがあたかも虎の尾を踏んだように、米国の批判にさらされたのだった。

 それを証明する公電が、ウィキリークスの公開した米外交文書からみつかった。ソウルを訪問したキャンベル米国務次官補は、韓国の大統領府で金星煥(キムソンファン)外交安保主席補佐官と会談。その内容を要約したものに、こんな記載があったという。
「両者(キャンベル、金)は、民主党と自民党は『全く異なる』という認識で一致。北朝鮮との交渉で民主党が米韓と協調する重要性も確認した。また、金氏が北朝鮮が『複数のチャンネル』で民主党と接触していることは明らか、と説明。キャンベル氏は、岡田克也外相と菅直人財務相と直接、話し合うことの重要性を指摘した」(『東京新聞』2011年1月20日)
 問題は、この文章の交わされた時期が、鳩山政権下だったことだ。鳩山ののち、菅か岡田を首相にしたいという米国の要望がここにあらわれている。この文章が送られた2ヶ月後、ワシントンポストは鳩山を「ルーピー」(現実離れした愚か者)と酷評して政権に打撃を加えた。
 また、東京新聞によれば、このころ渡部恒三元衆院副議長が講演で次のように語ったという。
『普天間問題を解決できずに鳩山君が責任を取ったら、おそらく菅直人くんが(首相に)なるでしょう』と発言」

 菅のライバルだった小沢一郎幹事長(当時)は、嫌疑不十分で不起訴とした東京地検特捜部の検事から検察審査会が意見を聞くなど、金銭疑惑の対応に追われ、代表なるにチャンスをつぶしかけていた。
 つまり米側の菅支持、鳩山・小沢嫌いの影響が今にいたっているわけである。もちろん小沢が米政権の期待を裏切って首相になったとしても、どれだけ日米安保と辺野古移設反対で頑張れたかはわからない。しかしこれまでも噂されてきたように、首相になる人間は宗主国・米国の信任を得ないといけないという伝説が証明される結果となった。
 菅首相になってから、普天間飛行場の辺野古移転を後押しし、日米共同統合演習を実施、思いやり予算の名称を「ホスト・ネーション・サポート(HNS)」に変更、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加も表明した。さらに原発の輸出や世論の反対でつぶれた武器輸出など、米政権と財界の操り人形のようになっている。

 ところが米依存のお粗末な政策を裏切るかのように、米国は中国に急速に接近している。1月19日、胡錦濤国家主席が訪米し、米中首脳会談がひらかれた。これは大げさにいえば、世界第2位の経済大国となった中国が世界第1位の大統領と、世界経済を牛耳ろうとする会談となった。中国側の要求を受けて、胡錦濤があわられる場には赤絨毯を敷き、国賓並みの待遇となった。ホワイトハウスでは21発の礼砲や国歌演奏をするなど最大限の待遇を整え、中国の関心をかった。

 オバマは今回の訪米を、「今後30年間の基盤をつくりうる」と評価したというから、並々ならぬ歓迎ぶりである。一方の胡首相も「前むきで協調的、かつ包括的な関係を進める」と語り、〝相思相愛〟ぶりを見せつけた。
 今回の訪米では、米ボーイング社による旅客機売却など計450億ドル(約3兆7000億円)のお土産つきで、財界を喜ばすことに必死なオバマ大統領をアシストした。一方で中国はフランスや日本などの先発国と競うために、ゼネラル・エレクトリック(GE)と共同で米国内での新幹線建設を計画している。昨年12月には中国の車両メーカーである中国南車とGEが、米国内に合弁会社を設立。新幹線のような中国の経済スピードを象徴する出来事といえる。

 菅政権がいじましく米国のご機嫌をとっている間に、米国はすでに日本よりも巨大な経済的利益の道を中国に切りひらいている。たしかにオバマ政権は中国の人権問題を批判したりしているが、これまで米国が世界でやってきた無数の虐殺行為を見れば、中国の人権問題を批判する権利などあるわけがない。そのことを知っている胡錦濤首相は、人権問題にたいする記者の質問にも、一度は回答しなかったことについて、通訳の問題で聞き取れなかっただけだと余裕をみせ、「中国国内でなすべきことはまだたくさんある」(『朝日新聞』2011年1月21日)と門前払いではなく、人権問題に正面からむき合った回答を用意した。
 これは人権問題に敏感な米国へのリップサービスだったといわれる。ただし人権より経済発展に軸足を置いている状況に変わりはない。一党独裁体制によって、国と地方の財政を総動員して10%以上の経済成長を進めている現状は、当分つづくと予想され、あたかも国家資本主義の猛走となっている。

 中国の人権は21年前の天安門事件であきらかになったように、ずっと弾圧されつづけている。しかも現在は経済成長とインフレによって、下々の生活が厳しく、一部では飢餓が発生するほどになっている。
 これは植民地解放のあと独裁政権がつづき、30数年ぶりで民主化運動がはじまったチュニジア、エジプト、ヨルダンのこれからの動きと関連づけて考えられる。昨年末、チュニジアの首都チュニスに行ったとき、そこで会った日本に留学経験のある実業家は、ベンアリ大統領一家の専横について話しつづけた。
 彼はスーパーマーケットにさしかかると「これは大統領夫人のものです」といい、ビル工事を請け負っている建設会社の名前を見ると「これは大統領の息子のものです」というし、自動車ディーラーを指さしては「これは大統領一家のものです」と語った。国内のすべての企業が大統領一家に関連あるといって笑う。
 彼の話によれば、ベアンリ大統領は軍政権を引き継いだときに教育政策だけには力を入れたという。そのため彼のように海外に留学する青年が多かった。今回のジャスミン革命の中心となっていたのは、そうしたインテリたちだったから皮肉だ。

 中国も経済成長を維持するために、米国を中心に多数の留学生がいる。近い将来、そうしたエリートが経済政策をつくっていくことになる。彼らが一党独裁に疑問を抱き、民主化運動を支えていく可能性は高い。これまでの民主化運動の中心は、北京大学などの国内育成エリートだったが、それに変わる革命分子を中国は内部に抱え込むことになる。
 経済発展しようとすれば、民主化せざるをえない。軍政から民主化にむかった韓国の歴史が、それを証明している。チュニジアの問題は北西アフリカのマグレブ諸国の問題と考えられており、中国に波及していく可能性が見落とされている。隣国の民主化に期待したい。(談)

全文は→「1102.pdf」をダウンロード

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コメント

中国の民主化の問題ですが、そう単純ではありません。アメリカや日本が「民主化」されているからです。つまり民主化とはブルジョア革命の純化となるのです。エジプトや中東は王族や軍人の独裁体制と目に見えるかたちで政治体制が形成されていますがオバマや菅は独裁体制ではありませんが、経済的な独裁をとっていることは明白です。問題はその先になにがあるか、経済的支配をどう覆せるかということにあるのです。資本制システムを採用するのであれば適度に独裁的であるほうが発展するわけでそれがアジア(日本も含めて)の発展につながったわけで、それを言わないと民主化と抽象的にいっても、アメリカの代替か?と経済覇権の争いに参入するだけの話でしからない!

投稿: | 2011年2月18日 (金) 21時45分

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