『寺門興隆』を読む/第1回 「がんに向き合い詠んだ俳句をがん句という由」
連載「冠婚葬祭ビジネスへの視線」でお目にかかっている人も、通りがかられた人もこんにちは。小松です。このたび、「『寺門興隆』を読む」という連載を始めることになりました。『寺門興隆』とは『そんな生き方じゃだめなのが分かる本』『みんなに読んでほしい本当の話―おしょうさんも泣いた25の生き方』など佛教関連書を出版している興山社発行の、寺院実務に欠かせぬ月刊誌です。
私はかねてからこの雑誌を愛読しておりますが、「やるっきゃないつっぱり和尚の骨山日記」「なんたって寺族の言い分本音の記」など興味惹かれる連載が多く、ついつい年間購読も何回めかに突入しました。中でも島田裕巳さんの連載を大変面白く拝読していたのですが、今年の6月号で終わってしまい、ちょっと喪失感。またぜひ書いていただきたいなあ。お待ちしております。
さて最新号、2010年12月号を読む。表紙には各記事の見出しが列挙されており、
仁王像の勧め/映画になった寺院復興/仏の菜園ルポ/青年層激白ライブ/寺のHP
と、非常に興味をそそられる内容。さっそく1ページ目を開いてみた。「喝ッ!生命を守るためのネット座禅」という見出しに、Macノートを前のめりで見つめる僧侶の姿が。WEB上で座禅実況をしているのだそうだ。まるでオンラインゲームのように数人の参加者が次々と座禅を組み同時実況している。参加者は自殺願望などのある方が多く、深夜に座禅を組ませるというのはなるほど良い試みだなと思う。眠れない人が多いだろうからだ。のっけから大胆かつホッコリする記事で、ますます中身に期待してしまう。
そしてひらりと舞ったのは、毎月綴じ込みの「法話特集」。いつも含蓄に富む言葉をくれる「お説教のタネほん」の見出しが「がんに向き合い詠んだ俳句をがん句という由」。がん句ですか…。「由」に記者の微妙な心持ちがあらわれているような気がしてならない。
本誌に戻ってトップ特集は「知らぬ業者の斎場で弔うより菩提寺本尊の前で行儀を」。
ごもっともです。せっかく寺に毎年少なからぬ額を寄進してるのにその金で建てた本堂を葬式の時すら使わない檀家の頭はどうかしています。でもね、会葬者は大変なの。お寺ってバリアフリーじゃないところが多いでしょ。でかい本堂って、夏暑くて冬寒いでしょ。正座できないお年寄りばかりが集まるのがお葬式でしょ。皆さんそう思われるだろうが、今は椅子完備のお寺だってあるし、冬は葬儀当日の朝からストーブを総動員して温めるなどけっこう頑張ってる。そんな寺葬儀を檀家に積極的に勧めているお寺の特集です。
葬儀専用のホールってキレイで広いところが多いしお寺より使い勝手が良くて立派、ってイメージだけど、宗教的な意味で言うとすごいショボい。ペラ紙みたいな掛け軸だってご本尊様には変わりないけど、お寺の立派な仏や如来にはあらゆる意味で負けるでしょ。ご本尊だって切なく思ってると思うよ、「何のためのオレなの」って。
と、大賛成しながら読んでいったけど、お寺だからってすごくゆるい価格で葬式してくれるわけではないみたい。特集中のお寺の葬儀基本セット価格は「80万円」というところが多く、さらに「お布施、飲食費(別会場)は別途」とのこと。葬儀社のホールでやるなら20万円はとられる施設使用料がないだけ、くらいに思っておいた方がいいかも。
と、出だしだけ紹介してみました。今回はご挨拶なのでこれくらいにして、次回はこの12月号のもっと中まで迫ります。年末には「寺門興隆見出しアワード2010」を勝手に開催し、新年からはまた一号ずつ読んでいきます。どうぞよろしくお願いします。(小松)
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