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2010年12月10日 (金)

OL財布事情の近年史/第12回 「お金というのは、使うもの」80年代OL、ガチの発言

連載「OL財布事情の近年史」は、2013年12月に単行本『女と金~OL財布事情の近年史~』として発売されます。

各年代のOL像を、イラストを交えて解説する辛酸なめ子さんのプチ時評つき。辛酸さんには、カバーイラストも描いていただきました。

エピローグには最新の女性誌お財布事情が書き下ろされ、女性誌創刊号の画像50数点を掲載。30年ぶんの「OLの財布の中身」が一気に見える本となりました。

全国書店から注文可能。
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 『モア』1981年11月号「今、あなたとお金の関係を考える」特集は、“若い女性=消費者って目でしか見られないけど、限られた収入の中からやりくりしてるんだからね!”という宣言の元に組まれたかに見える記事だった。確かに貯金もしているし、給料にもそれほど不満はなく、派手な印象はない。が、前回述べたように金銭感覚はどうにも危なっかしい。
 たとえば「あなたにとって、お金とは何ですか」という質問に対する回答。

 「生活に潤いをもたせるもの。あればあるだけ使いたいし、なければ多少つらいだろうなと思う」

 「最愛であり、最憎のもの」

 「天下の回りもの」

 「使うもの」


 えっとー、これ中二男子じゃないですよ。働いて、稼いでる大人の女性の回答なんですケド。こんなもの? 今はどうなの? わからない。けど、ファイナンシャルリテラシーが低すぎるだろういくらなんでも。
 リテラシーという意味では、個別の事例にも今となっては通用しないだろう言動がみられる。
 まずフリーのスタイリスト、24歳の例。収入に波があり社会的な信用が得にくい、というのはわかる。そこで「彼女が考えた対応策は、クレジット・カードを持つことだった」というあたりから不穏な趣が。「赤字になりそうな月は、大いにクレジット・カードを利用する」「カード・ローンも便利なシステムとしてある」「できるだけ多くの種類のカードを持ってフルに活用させるつもりでいる」。待て待て、そのカード濫用の行く末が、借金地獄、カード破産多発で、とうとう「お借入れは年収の1/3まで」*になったんだよう。
 さらに、社会的信用を得るためにアメリカン・エキスプレスのカードを取得することを目標とし「そのためには、まず貯金を始めること。定期的にできる仕事を増やしていくことを考えている」って、順番逆でしょ。まず仕事をして、定期収入ができて、貯金をして、そしたら結果的に社会的信用もつくでしょうよ。でもアメックスへの道は相当険しいと思われ。定職につくことをおすすめしたい。
 また、のっけから「私はお金の使い方がめちゃくちゃで、経済観念なんてまるでないみたい」という広告代理店勤務25歳は、手取り13万円のうち多くを占めるのが交際費の5万円。この交際費は「映画を見たりするほかは、ほとんどお酒代。少し多いのかもしれないけど、私にとっては絶対、大事な部分なんです」。つまりね、「いつか自分の番組をプロデュースしたい、という夢」に必要ってことなんですね。「お友だちとの付き合いや、旅行や本や映画、良い食事、服すべて自分を肥やして、この先もっといい仕事をする投資だと思います」ってさ。
 以前もふれたが、交際費は自分への投資、ととらえるのはこの頃の思想だった模様だ。23歳、美容院勤務、将来自分の店を持ちたい、という女性も「今、無理をしてまで貯金を増やそうとは思わない」「それよりもいろいろな職業の人たちと友だちになり、人間関係を充実させるために交際費を使う方が、より有効なお金の使い方だと思っています」という。当時は自分を肥やして、その先に仕事があったり、店を持てたりした。でもその時代というのは、崩壊してしまいましたね。その思想は、正しかったとは言えますまい。
 アンケート調査結果の分析自体も、彼女たちの金銭感覚に疑問を投げかけ、トーンダウンしている。
 「多くの女性が地道に貯金をしながら、貯める、増やす、生かす、という感覚からはかなり遠く、漠然とした金銭感覚しか持っていないことが感じられた」
 やっぱり80年代初頭OLにとってのお金、「使うもの」であった。(神谷巻尾)

* 2010年6月、改正貸金業法に総量規制が盛り込まれ、個人向け貸付けにおいて総額で年収の1/3以上は貸付禁止、1社で50万円以上借り入れる場合は年収証明の提出、などの規制ができた。

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