『寺門興隆』を読む/第2回 2010年12月号「仁王像造立のすすめ」
第1回に引き続き、2010年12月号を読んでいこう。なんといっても目次で気になるのが「仁王像造立のすすめ」だ。
「山門でお寺をしっかり守ってくれる仁王像。いわばお寺の看板ともいえるだけに、妥協せず、納得のいく仁王様に来ていただきたいものだ。作り手や近く仁王像を迎えた住職に失敗しない造仏法を聞いた。」
なるほど、私たちが悪質な墓業者に引っかかって何百万円を損することを恐れるのと同じで、お坊さんも未熟な宮大工や彫刻師に引っかかるのを恐れているようだ。私たちとは額がひとケタもふたケタも違うでしょうからね。しかし仁王像を作ることを「来ていただく」「お迎えする」というのはまるで精巧な美少女人形を買うときに「迎えに行く」と言うのを常とするオタクと同じ感性だな、と思ったが、仁王像だって一種のフィギュアだ。合点がいった。
「仁王像は住職の夢。いつかご縁をいただきたい」という言葉から本文が始まる。1人の住職が中国製仁王像の安さから(1000万円程度)手を出しそうになるが、「国産の門に外国製の仁王像は良くない」と役員会に反対され複数箇所に見積もりを出すという話。国産だと2倍以上はかかってしまうようで、そりゃあ慎重にもなるよね……
ほかに素人が独学で彫刻し寄進した仏像、アントニオ猪木がモデルの仁王像など、門の中に閉じこもっているので素通りしがちな仁王像の魅力を伝えてくれる良記事だ。
さて次は、個人的に気になる「葬儀にかける費用は下がり、遺族の負担が上がった訳」という記事。冠婚葬祭互助会「くらしの友」が行った葬儀に関する実態調査をもとに作られている。大規模な葬儀を嫌う人が増える中、葬儀費用がどのほど変化しているのかは深刻な檀家離れに苦しむ住職なら隅まで読むべき記事だろう。見出しに対する答えは「会葬者が減り、その結果として香典が減ったので遺族の負担分が増えた」と一瞬で回答できるが、そういえばお布施の額ってどうなっているのだろうか。改めて全体を見てみたい。
●布施の平均額、20年で20万円減の怪
皆さんは決まった仕事にいただける金額が一年につき1万円ずつ減っていったとしたらどう思うか。とりあえずやってられないよね。この調査によると、1990年に75.6万円だった「お寺に費やした費用」の平均額は、2010年には52.6万円。バブル崩壊が挟まっているとはいえすごい大暴落だ。しかし本誌記者は首をかしげている。「「実感とはうんとかけ離れている。うちの寺では今でも平均四十万円にはなっておらず、六十万円、七十万円などどこから出てきた数字なのか」と訝る住職は多いだろう」確かに52.6万円という今年の平均額にも違和感が否めない。筆者は全国的にもお寺にかける費用の多い東北地方で葬儀実務をやっていたが、50万円はちょっと高めだなあと思う。お布施には相場というものがなく、払える人は庶民が失禁するくらいの額を払うことがあるから、それが平均額をかなり上げてしまっているのではないか。本誌記者は、実際はもっと少ないとしながらも「とはいえ、葬儀を供養行為とすれば、「おやじの供養のために菩提寺に納める額」として、葬儀費用の2割近辺というのはどんなものだろうか。“ちょっと低いのではないか”とつぶやいておきたい」とtwitter的な姿勢でヤンワリいなしている。パーセンテージで考えたことなんてなかったな。何割ならちょうどいいんでしょうか……
●人間性まで疑われる
続いて記事は葬儀の持ち出し費用について触れている。会葬者を多くすればするほど会葬者1人あたりの費用が減る(香典が入るから)という斬新な表は、これも「くらしの友」製ということだが…若干無理がある。動く額が多ければ多いほど小市民はびびるもんなんですよ。この表に対しての本誌記者のコメント。「しかし、たとえば会葬者百人として香典収入が百万円なら持ち出しは八十七万円。肉親を弔うのにこの費用が「高い!」などというのは、人間としてどうなのか」私、八十七万円って結構な額だと思うんですが、人間失格なんでしょうか……
仏教界に関わる人の本音がかいま見える、これも貴重な記事と言えよう。最後には「傍観していて、いいのだろうか」と危機感を明確に示しながら締めている。
日々変容する葬儀業界。今度はなんとファミリーマートが葬儀業界に参入する旨のニュースが入ってきた! 来月の『寺門興隆』はこの事態をどう斬るか。ますます目が離せない。(小松)
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