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2010年11月 5日 (金)

OL財布事情の近年史/第7回 「旅」は消費の免罪符?

連載「OL財布事情の近年史」は、2013年12月に単行本『女と金~OL財布事情の近年史~』として発売されます。

各年代のOL像を、イラストを交えて解説する辛酸なめ子さんのプチ時評つき。辛酸さんには、カバーイラストも描いていただきました。

エピローグには最新の女性誌お財布事情が書き下ろされ、女性誌創刊号の画像50数点を掲載。30年ぶんの「OLの財布の中身」が一気に見える本となりました。

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 所得のほとんどをきれいさっぱり使い切っていた、80年代初頭OLである。
 ただし、この「全国消費実態調査」は単身世帯のみのデータなので、実家に暮らしている人は対象になっていない。なので、特に「女性は自宅通勤」が採用の条件になっていたような80年代前半頃までの、一般的なOLの消費性向そのものではないかもしれない。一人暮らしでも十分羽振りがいいように見えるが、親元で気楽に暮らしていれば、なおさら加速がついているのでは。

 再び当時の財布記事に戻るべく、80年代前半の女性誌をいくつか眺めているうち、当時のOLに共通の、大きなモチベーションの素を見つけた。
 それは、「旅」です。
 すでに女性誌の代名詞となっていた『non・no』『an・an』はじめ、先端的な『モア』も、コンサバな『ヴァンサンカン』(80年創刊)も、旅の特集がもれなく毎号載っていた。 
 旅、女性誌といえば、「アンノン族」。清里や軽井沢などの高原や、萩、津和野、金沢といった古都への旅の特集が載った『an・an』や『non・no』を手に観光地に押し寄せる女性たちが、アンノン族と称されていた。
 最近出た新書『希望難民ご一行様』(古市憲寿著)は、「ピースボート」に乗る若者について考察しているが、過去の「若者と旅」についても言及しており、アンノン族についても当然ふれている。「1970年、大阪万博後の旅客需要の掘り起こしのため、電通と国鉄が「ディスカバー・ジャパン」というキャンペーンを始め」大成功をおさめたが、それに寄与したのがこの頃創刊した『non・no』と『an・an』だったという。「1972年以降、両誌は相次いで旅特集を組み、それをガイドブック代わりにした女性たちが日本全国に現れた」というわけだ。

 80年代に入りアンノン的な旅は下火になったとされているが、それでも雑誌を見ると「小海線 ことしの話題」(『an・an』81年)『Mini Trip~朝霧の里:由布院~』(『モア』81年)『ウインター・トラベル:白い北海道・大満足旅行 』(『non・no』82年)と根強い。そして好景気とともに、スキーやダイビング目的のレジャー旅行、海外への長期旅行もOL消費のデフォルトとなってゆく。当時のお財布事情記事も、旅行についての高揚感がみなぎっている。
「趣味の美術館めぐり。全国どこへでもとんでいって、いい絵にめぐり会うためには費用を惜しみません」(25歳・オペレーター・月収11万2千円) (『モア』80年4月号)
「年に1回、海外旅行に出かけるために、私は働いているようなものです」(28歳・営業事務・月収12万7千円)(『モア』80年4月号)
「仲間と作ったのが“よいしょの会”。すでに京都や沖縄に行ったこの会の、今年の目的地は、ハワイ。月に1万円の積立て、(略)ボーナスの1回分(30万円)から旅費を」(23歳・会社員・月収11万円)(『non・no』80年8/5号)
「7月からアメリカへ旅行。社内預金とボーナスはすべてアメリカ行きにつぎこむ予定」(25歳・会社員・月収10万6千円)(『ヴァンサンカン』81年8月号)

  日本の姿を再発見、また個人旅行、自分探し、といった概念は、当時のOLにちょうどいい「消費の動機」だったのではないか。
 30年前、女性は「学校を卒業したら就職して、しばらく社会勉強したりOL生活を楽しんでから、結婚して家に入る」というのがまだまだ一般的だった。そんな「期間限定で働き、稼いだお金は自分のためだけに使える」状況の中で、旅行は単なる遊びじゃなく、教養にも自己啓発にもなる、非常にナイスなお金の使い道だったのでは、と思うわけである。ファッションや夜遊びばかりに使うのは気が引けるし、習いごとや勉強もいいけど消費の楽しさはない、貯金もそんなにしなくても困らない(親や将来の夫がいるし)。そんな OLマーケットは、ドバドバと旅に向かっていった。
 このような消費のパッション、今あったらすばらしいですね。いや、彼女たちはそのまま40代超えして、『STORY』や『GLOW』で新しいお金の使い道を探しているのか。情熱はないが、感覚はわかる、同世代の筆者でした。むむむ。(神谷巻尾)

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