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2010年11月12日 (金)

OL財布事情の近年史/第8回 「海外旅行」のイメージ変遷について考えてみた

連載「OL財布事情の近年史」は、2013年12月に単行本『女と金~OL財布事情の近年史~』として発売されます。

各年代のOL像を、イラストを交えて解説する辛酸なめ子さんのプチ時評つき。辛酸さんには、カバーイラストも描いていただきました。

エピローグには最新の女性誌お財布事情が書き下ろされ、女性誌創刊号の画像50数点を掲載。30年ぶんの「OLの財布の中身」が一気に見える本となりました。

全国書店から注文可能。
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 80年代OLの旅消費について「旅行は単なる遊びじゃなく、教養にも自己啓発にもなる、非常にナイスなお金の使い道だったのでは」と書いたら、担当のアラサー女子からこんな質問が来た。
「「旅」をすると自分を高めることになるのでしょうか? 自分にそういった先入観がないので、あれっと思って。もしかしたら、これもバブル期が女性に流布した宗教的な何かかも??」ですと。ええっ。
 旅とは、何か。と根源に立ち戻るような疑問である。旅、特に海外旅行は、異文化や歴史を知ったり、語学を習得したり、現地の人とふれあったりして、何か自分が成長するもの、というのが共通認識かと思っていたが、 それはバブル教の洗脳だったのだろうか。そうだろうか。不安になってきたので、遡って調べてみた。
 
 「若者と旅」についてざっと振り返ると、60年代後半にリュックを背負って北海道などへ貧乏旅行する男子の「カニ族」、70年代には日本再発見の「アンノン族」で女子旅が広まった。そして80年代、景気の上昇とともに海外旅行の急増につながるのだが、このとき若者の海外志向を押し進めたものといえば、ガイドブック『地球の歩き方』と、格安旅行の「エイチ・アイ・エス」だろう。
 1979年創刊の『地球の歩き方』は、観光名所だけではなく、街そのものや交通手段など、個人旅行のノウハウを紹介し、実際に旅をした読者の口コミ情報も掲載する、それまでとは一線を画すガイドだった。エイチ・アイ・エスは1980年インターナショナルツアーズの名で設立、格安航空券の販売で、パックツアーではない、自分でエアとホテルを手配する自由旅行のスタイルを広めた。自分で計画し、自分の足で未知の世界を歩く、それだけでも当時は冒険であり、自分を高める体験になっていたのだと思う。
 バブル期の海外旅行といえば、ハワイやアジアビーチのリゾート旅行や、パリやニューヨークでブランド品漁りなどいかにも消費意欲満々のイメージもあるけれど、まだまだ海外に行き慣れておらず、開放感の中にも緊張が漂う、初心者の旅であったはず。海外体験が占めるポジションは、現在とは比較にならない程大きなものであっただろう。そういう意味で、自己啓発であり、教養という意味合いがあったのでは、と感じる。
 また当時のOLの親たちを見てみると、戦前戦後を経験し、仕事詰めで高度成長を担った世代である。1ドル=360円時代、新婚旅行は熱海や宮﨑、海外なんて高嶺の花、である。母親たちにとっては、女性の海外旅行の代名詞といえば日曜朝のテレビ番組「兼高かおる世界の旅」であろう(おそらく)。育ちがよく教養にあふれ、颯爽と世界を歩く兼高女史は現代的な女性の象徴で、そんなイメージを海外旅行に行く娘にダブらせていたとしても不思議ではない。たとえハワイへの買い物旅行でも、海外に踏み出す娘を誇らしく、手放しで、経済的援助もしながら送り出していた、という側面があったのでは、と推察する。

 そんなおおごとだった海外旅行は、20年ほどで様変わりしたらしい。担当子いわく、
「「海外旅行」なんて言葉、知り合いからはとんと聞かなくなりましたね(笑)」
 カッコ笑い、レベルですよ。
「学生時代は貧乏旅行とか、みんな行ってましたね〜。猿岩石が出て、バックパッカーが流行った時期なので。私たちが学生の頃にはもう、海外に行っても外国語を使う必要がないので(タイに行きましたが、土産物やさんが「コレカワイイヨ!」と言っては寄ってきました。笑)お勉強という側面は、だいぶ薄れていたと思いますね〜。」
 コレカワイイヨ!と寄ってこられたら、ハイテンションになって買っちゃうか、警戒してたすきがけしたバッグを握りしめてましたね、30年前OLは。
 インターネットで世界が小さくなって、海外は憧れでも怖いものでもなくなったのだろうが、その変化の早さにあらためて驚く。お財布事情も刻々と変わっているのだろうか。次回からはお財布記事分析に戻ります。(神谷巻尾)

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