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2010年11月19日 (金)

OL財布事情の近年史/第9回 ガッツリ消費とシッカリ貯蓄を実現★80年OL

連載「OL財布事情の近年史」は、2013年12月に単行本『女と金~OL財布事情の近年史~』として発売されます。

各年代のOL像を、イラストを交えて解説する辛酸なめ子さんのプチ時評つき。辛酸さんには、カバーイラストも描いていただきました。

エピローグには最新の女性誌お財布事情が書き下ろされ、女性誌創刊号の画像50数点を掲載。30年ぶんの「OLの財布の中身」が一気に見える本となりました。

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 今回注目する記事は、『non・no』1980年8月5日号、「OLの給料の行方」である。サブタイトルに「NON・NOレポート 働く女性4人を徹底調査」とあるように、OL嬢4名の給料の使い道を詳しく取材している。
 おさらいだが80年代初頭、20代OLの給与は10〜12万円程度が平均である。この『non・no』でも、「編集部で OL500人を対象に、先日行ったアンケートによると、平均月収は約10万円」とある。この金額は、当時のOLにとってどの程度の存在感だったのだろうか。
 現在とは貨幣価値が違うとはいえ、男女格差も大きく、決して潤沢な給料ではなかったはずだ。この記事に当時の物の値段があるのだが、「お茶を飲むだけでも300円。国電でとなりの駅まで行くのにも100円。ブラウスを一枚買えば1万円が消えてゆく。単行本だって今日び1000円では買えません」と、今と物価はそれほど変わらない印象だ。
 その一方、これまで見てきたように、旅にレジャーに外食に、ぱっぱっと羽振りがいいのはなぜか。しかもこの『non・no』調査では、平均貯蓄額が約70万円と、貯金もしっかりしている結果が出ている。「華やかでありながら、堅実に貯蓄もしているという、この不思議」って、当時の誌面も不思議がっていたOL財布を、この記事から探ってみた。
 登場している4人は、20歳〜25歳、入社2年〜6年で、手取り給料は11万円〜13万円。まさに当時の平均的OLといっていいだろう。お金の使い道はそれぞれだが、羽振りのよさは存分に伝わってくる。
「とにかく欲しいものが数限りなくある(略)流行が変わるたび、新しい洋服が欲しくなるファッション人間。ぼんやりと使っていると、手取りのお給料約11万円のうち半分くらいは身につけるもので消えてゆく」(20歳・新聞社勤務)
「常に目標を定めて、お金を積み立てています。今年はハワイ行きを達成。次の目標は車とサイパン!!」(23歳・損害保険会社勤務)
「習い事をしたり旅行をしたり、自分の心を豊かにすることにドンドン使うのが私の主義」(25歳・航空会社)
 消費意欲の塊である反面貯蓄もしており、全員が月に2万円〜3万円を貯金に回している。さらに、貯蓄に直結している別の費目が、家への入金。3人が実家暮らしで1万5000円〜2万円を家へ入れているが、これは生活費ではなく別口の貯蓄となっている模様。
「家に入れている2万円も、お母さんが彼女のために貯蓄してくれている。『浪費癖に歯止めをかける安心料ってとこかしら?』」(20歳・新聞社)
「貯金通帳は母にしっかり管理されているようなもの。私の計算では、もう25万円くらいになっているはず」(23歳・財団法人勤務)
 なんというか、親掛かりの甘ちゃんですね。この親子関係が、どん欲な消費と着実な貯蓄を支えていたわけか。成人・就職=独立、という意味合いは、OLにはなかったといえよう。無論、当時娘を大学や短大までいかせ、企業に就職させたような家庭は、父親は終身雇用が確約され、将来になんの不安もなかったはず。たかだか2万円を生活費の足しにする必要もなく、かわいい娘の嫁入り費用に貯めておく、ということが一般的な社会通念だったのかもしれない。
 それでは経済状況が変化した今、家に入れるお金はどのように使われているのだろう。気になるデータがあったので、次回はそちらで。(神谷巻尾)

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